大人園。
「早く、スーツに着替えなさい」
「はぁい」
寝癖の頭髪に、無精髭。お父さんは、いつも準備が遅くて、お母さんに怒られている。
「ネコ電に、遅れるよ! 」
ネコバスのテーマが流れるのは、午前8時15分。
「もー、行きたくないなー。今日は休もうかな」
「何言ってんの。美味しいご飯作ってあげるから、頑張ってきなさい」
「はぁい」
雑に結ばれたネクタイに、ぱつぱつの背広。お父さんは、いつものように大人園へ向かっていった。
「お母さん、僕も将来は大人園に行くの? 」
「そうね、少しでも良い大人園に入れるといいわね」
僕は大人になりたくない。大人園へ向かうネコ電は、俯いて顔の見えない大人ばかりだから。