効率的な拷問。
「こちらが、最新のVRヘッドになります。よかったら、デモプレイをなされますか? 」
「ぜひ! 一度試してみたかったんです」
「こちら、グローブになります。ボクシングゲームをプレイしていただきます」
「楽しみですね」
若い男性は嬉々として、VRヘッドを装着しようとする。イヤホンは、ひとりでに耳の穴を覆う。
「ボクシンググローブをつけてください」
椅子に縛り付けられた女が、若い男性の前へ運ばれる。どんなに叫んでも、塞がれた耳の奥には届かない。
「相手が表示されたら、ゲームスタートです」
目の前の女性をVRヘッドが感知すると、ゲームスタート。若い男性が、仮想上の相手を殴る。確かな顔の感触は、グローブを挟むと仮想現実の域を出ない。
「シュッ、シュッ、シュッ……」
殴打される女性は、万引きをしたらしい。