本を貸す。
貸す本には、念を込める。貸したい本というものは、その人を見てると自然と浮かんでくるものだ。僕はそれとなく本の話をして、貴方にぴったりの本の話しをする。そうすれば、自然に本を貸す流れになる。人は、どこか本の貸し借りというものに憧れている節があるから、きっかけさえ与えれば滑らかにことが進むのだ。
貸す本には、念を込める。本は、僕の心の目になる。僕は貴方に本を貸す前に、意識を集中する。この本を読む貴方の姿を非現実的なくらい現実的に想像する。そして、貴方が栞を挟む三箇所が分かると、僕の念は本に宿る。そして本は目になり、僕を癒す。
貸した本というものはそのほとんどが返ってこないが、僕としてはそれでいいと思う。僕が貸した本は、目となって貴方を捉える。もっとも、本棚の片隅に置かれると貴方がよく見えないのだけれども。そうならないために、僕はより貴方に合った本を選ぶのだ。