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自分の肉体に虚ろな何かを感じるようになった。まるで自分自身の存在が虚構であるかのような、…
僕はPCの画面の前で項垂れる。この仮想空間には、数億円もの資産が眠っているのだ。しかし、た…
煙草が不味くなるくらい人が来ない。経営のノウハウはおさえていたつもりだし、事実十分に暮ら…
「この奇妙な生き物はいったい何…?」 「これは、鵺だよ。」 「…?」 「ぬ、え。」 「こ…
「ブダペスト・ギャンビットだなんて、随分お洒落じゃあないか。」 「…これでもまめに勉強し…
夜道。勤勉な信号ですらその役割を放棄する、街全体が静まりかえる時間。俺はこの時間にいつも…
激しいクラクションが僕を現実へと引き戻す。僕はぼんやりとした頭で必死に状況を整理する。クラクション。酩酊。徒歩。そうか、僕は車道を歩いていたのか。 やがて、自分の記憶がすっぱりと断絶していることに気付く。どこまでを覚えている?自分に問いかけ、茂みに刹那的な嘔吐をしたことに多い当たる。そこから、記憶をなくしたまま歩いていたとは俄に信じがたい。距離にしては数キロあるし、それなりに分岐点もある。なにより、大きな橋を渡らなくてはならない。冬空の冷たく強い風を受けて、記憶を飛ばし
ひどい腹痛で何もする気が起きない。数年に一回、このようなことがある。病院にいっても原因…
眠る瞬間にどうしても立ち会いたかった。それは、純粋な好奇心だった。僕はありとあらゆる好奇…
千切りが得意になった。あれほどとらわれていた庖丁への恐怖心も、すっかりなくなった。コン…
「…As times goes by。」 「お兄さん、粋な曲好きなんだね。」 「小説に出てくるんです。」…
「あれが台風の目ってやつか!」 隣のアメリカ人は片言の日本語で沸き立っている。今時日…
霧が唐突に立ち込める。世界は瞬時に、まるでパレットを白の絵の具で敷き詰めるように真っ白に…
ゴロゴロと稲妻が耳を劈く。 「うわぁー綺麗。」 息子は稲妻に見とれていた。 「あんた、よく怖くないねぇ。」 「綺麗なんだもん。…うたれてしまう訳もないのにさ。」 「あんた、雷に打たれて死ぬ人だって少なからずいるんだよ。」 「…宝くじに当たるような確率でしょ?」 「子供なのに、随分冷めているのねぇ。」 「なんで当たるのがいいことみたいになってるのさ。」 「そうじゃなくて、子供ってのは普通確率の小さいことが好きでしょう。プロ野球選手になりたい