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腹痛。

 ひどい腹痛で何もする気が起きない。数年に一回、このようなことがある。病院にいっても原因は分からないと言われるだけだから、このように耐え忍ぶしかない。気まぐれに来る腹痛は、何とも厄介な存在だ。

 しかし、この腹痛は痛みだけをもたらすならず者では決してない。痛みに結びつけられた記憶は、実際に痛みを被らないとなかなか思い出せないものだ。僕は感受性が過敏で、よくストレスに晒されていた。腹痛は僕からありとあらゆる行動を奪い、様々な思考を強いた。当時の心象を、鮮やかに思い出すことができるのは、皮肉ながらこの悪魔のような腹痛の時だけだ。

 僕はぼんやりと白い天井を眺めている。これは、必要悪なのかも知れない。そう思えるのは腹痛がすっかり良くなってからであり、僕は魘される自分を笑った。

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