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記事一覧
評論 アニー・エルノー「若い男」 熟年の女性が好きなのに、若い女性の身体の誘惑には勝てない彼は美学をわかってないし、そこを結婚の問題として攻める彼女はセクシーすぎる
1. イントロデュース
ダンテはフィレンツェ追放にあった後、ベアトリーチェのような女性と会うことができたのだろうか。ボッカチオの『デカメロン』の映画を見ると、なんとなくだけど、会えたんじゃないかって感じがする。理由は読んでいて、子どもの頃、会った女性を描いてるだけには思えないからだ。
彼女は本作の最後で、書くことによって現実を引き寄せたと書いている。
2、3週間のズレはあったけど、
評論 石原慎太郎「死者との対話」 公として、アルターエゴとしての石原慎太郎の死生観、天国からだれか派遣して、悪党・石破を政界から追放してくれ
1.イントロデュース
僕は石原慎太郎という作家が好きで、政治家としても、天才的な人だったと思うんだけど、それは僕にない要素を多く持っていたからなのかもしれないと、この頃思う。
石原慎太郎の暴力的なまでの力強さ、歯に衣着せぬ大胆な姿勢、遊びも上手な大人のジェントルマンとしての生き様、今でも憧れるけど、どこか近代的なところ、現代的なところではない近代的なところがあって、リアリスティッ
評論 オルガ・トカルチュク 『優しい語り手』 女神には永遠に恋愛感情の源泉であってほしい、女性にとっては当たり前のポストモダンの乗り越え方
オルガ・トカルチュクはポストモダンの旗手と呼ばれているそうだが、村上春樹、保坂和志、オルハン・パムク、オルガ・トカルチュクが、なぜポストモダンの先にいけないかという問題の答えとその共通点が、『優しい語り手』を読んでわかった。
村上春樹、オルガ・トカルチュクは、罪業の否認、主に、古今東西普遍の法則に照らし合わせての罪業の否認、保坂和志、オルハン・パムクは女性らしさというものを受け入れないという女
評論 アニー・エルノー 「嫉妬」 女性学者が好きというだけで、天上界への生活について真剣な彼女と別れるのは、確かにひどすぎると僕も思う
1.本論
「嫉妬」には、主人公が、なぜ男と別れたのかは書かれていなかったけど、理由はわかる気がする。
男はインテリジェンスのある学者肌の女性で、かつ理想の女性と結婚したかったのだろう。
ヒロインも文学などの学問に親しみが深かったけど、街の教会である男が、旧約聖書の詩篇の一編を読みながら、十字になって仰向けになって寝ているのを見て、私の辛さもこの男のものほどじゃないだろうと感じるシーン
評論 保坂和志 第75回 「鉄の胡蝶は記憶を夢は歳月を掘るか」 保坂さんは最高だけど、女性は嫌いすぎるくらい嫌いだし、やっぱり女性は神なんだろうと思い至った秋の夕べ
保坂和志がずいぶん前から、『群像』でエッセイのような小説を書いてるということは、Instagramの情報とかで知ってたけど、積ん読が多いと、なかなか文芸雑誌までは手が伸びないもんで、実際、仕事を真剣にしてると文芸雑誌を読むなんていう時間は明らかにない。
僕はリベラル思想とかはまるで興味ないし、資本主義の反対に位置してると言われている共産主義思想なんかもっと興味がないから、そこに関して、保坂さん
評論 オルガ・トカルチュク 『優しい語り手』 No.1――個性と伝統の大通りの真ん中を行く人、「n個の性」についても――
1.イントロデュース
湘南T-SITEっていう本屋で偶然手に取った、ポーランドのノーベル賞作家、オルガ・トカルチュクが、これまでほとんど読んだことがないくらい素晴らしい作品を書いていたので、うれしかった。
それは『優しい語り手』という本で、彼女が講演会で話したことをエッセイにしたものだけど、ダンテ、スペインの作家イレーネ・バリェッホと同じくらい優れた作家だと感じる。
第1章「優しい語