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記事一覧
評論 アニー・エルノー 「嫉妬」 女性学者が好きというだけで、天上界への生活について真剣な彼女と別れるのは、確かにひどすぎると僕も思う
1.本論
「嫉妬」には、主人公が、なぜ男と別れたのかは書かれていなかったけど、理由はわかる気がする。
男はインテリジェンスのある学者肌の女性で、かつ理想の女性と結婚したかったのだろう。
ヒロインも文学などの学問に親しみが深かったけど、街の教会である男が、旧約聖書の詩篇の一編を読みながら、十字になって仰向けになって寝ているのを見て、私の辛さもこの男のものほどじゃないだろうと感じるシーン
評論 保坂和志 第75回 「鉄の胡蝶は記憶を夢は歳月を掘るか」 保坂さんは最高だけど、女性は嫌いすぎるくらい嫌いだし、やっぱり女性は神なんだろうと思い至った秋の夕べ
保坂和志がずいぶん前から、『群像』でエッセイのような小説を書いてるということは、Instagramの情報とかで知ってたけど、積ん読が多いと、なかなか文芸雑誌までは手が伸びないもんで、実際、仕事を真剣にしてると文芸雑誌を読むなんていう時間は明らかにない。
僕はリベラル思想とかはまるで興味ないし、資本主義の反対に位置してると言われている共産主義思想なんかもっと興味がないから、そこに関して、保坂さん
評論 オルガ・トカルチュク 『優しい語り手』 No.1――個性と伝統の大通りの真ん中を行く人、「n個の性」についても――
1.イントロデュース
湘南T-SITEっていう本屋で偶然手に取った、ポーランドのノーベル賞作家、オルガ・トカルチュクが、これまでほとんど読んだことがないくらい素晴らしい作品を書いていたので、うれしかった。
それは『優しい語り手』という本で、彼女が講演会で話したことをエッセイにしたものだけど、ダンテ、スペインの作家イレーネ・バリェッホと同じくらい優れた作家だと感じる。
第1章「優しい語
評論 アントニオ・タブッキ「ルキウス・アプレイウスの夢」――悲劇と喜劇の裏表、話をしてて楽しい淑女、一緒にいてしあわせな明るい女性--
0.イントロデュース
イタリアの作家・アントニオ・タブッキには、名作が多く、僕も彼の作品を須賀敦子が翻訳した文体のマネをしたことがあった。
結果として、たいした好評を得ることもなかったから、石原慎太郎のエッセイの文体のマネをして、日本語で書くんだったら、日本語の妙味を追求しようってことで文体を切り替えたけど、今、イタリアにいて、やっぱりタブッキの文体マネてた頃の方が雰囲気良かっ