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また読み返したいnoteを集めた私のブックマーク的マガジン
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#磨け感情解像度

波よせる場所

波よせる場所

海へ向かう道を車で走らせる。窓を開ける。7月終わりの晴れた午後。乾いた風が髪を揺らす。フィアット500というこの車は可愛らしい姿だけど気持ちよい走りをする。
パパに買ってもらった。お父さんではないパパに。
街から郊外、田園地帯を抜ける。助手席には叔母さんの為に選んだシングルモルトとウイスキーグラスの包み、そして紅花を中心とした花束が座る。海に近付くと潮の香りが強くなる。叔母さんに会うのは五年振りぐ

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時間を贈るということ

時間を贈るということ

noteの自主企画、盛り上がっていますよね。

企画をしたことがない人の素朴な疑問として、「なぜ企画を立ち上げるのだろう?」と思うことがあるはずです。企画を立ち上げた人は、その理由を知ってるかもしれません。もしかしたら「なんでだろ? 分からないな、やりたかったからやっただけ」と言う人もいるかもしれませんね。

ぼくは企画の旗持ちになったことがないので、その理由は分かりません。
けど、企画のサポート

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今月のイチオシnoteクリエーターズ(2020年8月)

今月のイチオシnoteクリエーターズ(2020年8月)

ヤマシタマサトシさんが2020年4月まで続けていた「月末恒例、勝手にオススメのnoteクリエーターを表彰して褒め称えて1000円サポートするコーナー!!!」をご存知ですか?

コロナ禍の深刻化とともにnote/twitterとも停止されているヤマシタ兄貴の復帰を心待ちにしつつ、「留守の間にこんなに素敵な人いたよ」というメッセージを込めて、《候補出し》までしておこうと思います。

・note内で初め

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やがて、ひかりが照らすもの( #磨け感情解像度 によせて)

やがて、ひかりが照らすもの( #磨け感情解像度 によせて)

#磨け感情解像度 のコンテストが先日の結果発表をもって閉幕した。寄せられた作品は215本。主催のillyさんが、「選べない」と言っていたのがうなずけるほど、どこを見ても光るものに出会う時間だった。

運営パートナーとして関わり、即興劇のようにコンテストが形作られていく様子を見ていた1か月。せっかくなので、ちょっとだけ振り返ってみようかな。

***

私は告知文を書き、投稿される作品をマガジンに

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一度しかない人生、真剣にやりたい事をやって楽しみたい。【#磨け感情解像度 × #おびコレ _Vol.9】

一度しかない人生、真剣にやりたい事をやって楽しみたい。【#磨け感情解像度 × #おびコレ _Vol.9】

私設賞・note非公式コンテスト「#磨け感情解像度」まとめ隊・新入りのMica(ひらいみか)です。サトウカエデさんとカラエ智春さんの中に入るという立ち位置に内心ビビりまくっておりますが、何とぞよろしくお願いいたします。

おびコレ形式で投稿作品をご紹介するまとめ、Vol.9です。

【おびコレとは?】
「twitterシェア時につけるツイート主独自のコメント」を、書籍カバーの帯になぞらえてnote

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愛と呼びたい君のいる僕の人生はラッキーでハッピーなんだ。【#磨け感情解像度 × #おびコレ _Vol.5】

愛と呼びたい君のいる僕の人生はラッキーでハッピーなんだ。【#磨け感情解像度 × #おびコレ _Vol.5】

私設賞・note非公式コンテスト「#磨け感情解像度」の運営パートナーのサトウカエデです。

おびコレ形式で投稿作品をご紹介するまとめ、やっとこさVol.5まで来ました!

【おびコレとは?】
「twitterシェア時につけるツイート主独自のコメント」を、書籍カバーの帯になぞらえてnoteの帯と呼び、帯の世界と可能性を探究してみようという、2019年10月に開催されたillyさんによる【自主お題企画

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母が死んだとき、祖母は母を平手打ちした

母が死んだとき、祖母は母を平手打ちした

「加藤さんですか?」
 震えたスマホから親父の声がする。普段メールもよこさないのに電話なんて珍しい。しかも加藤同士で何を言っているんだ。お前も加藤だし、俺も加藤だ。そうだけど、と生返事をする。
「ママが倒れて、救急車で運ばれた。心肺停止。今荷物とか準備して向かうとこ。すぐ戻ってきて。もしかしたらもしかするかもしれないから」
 結局は親父相手に「失礼します」なんて礼儀正しく切るくらい俺も慌てて、会社

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無言の音

無言の音

 “さようなら” って美しい言葉だよね

彼女はときどき変わったことを言う。なんで? と聞いたら、除夜の鐘みたいだから、と季節が歪んだ答えが返ってきた。雨あがりの紫陽花が夕日の下で光る、今は6月だ。

--*--

初めて彼女と話したのは1年生の2学期で、席が隣になったから。赤い目をして、よろしく… と呟く彼女に「眠そうだね」と話しかけた。

「しんかいさん読みだしたら止まらなくて」

「君の名は

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あの夜、ずっと真新しいままのNew Balanceのスニーカーを見て思ったこと

あの夜、ずっと真新しいままのNew Balanceのスニーカーを見て思ったこと

彼が歩けますように

丁寧に文字を書いた。

息子が2歳の誕生日を迎える頃、とある神社で手渡された絵馬。
「願い事を一つ書くとなんでも叶う」と言葉を添えられたそれに何を書くか、一晩悩んだ。

絵馬はひんやりとしていた。

子どもへの愛情なんて、いつどこで習うのだろう。
親になったらわかるものなのか、親になる前から知ってるものなのか、どんな形が正解なのか、どんな感情が当たり前なのか。

比較的若くし

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この悔しいって感情は紛れもなくホンモノだろ。【#磨け感情解像度 × #おびコレ _Vol.3】

この悔しいって感情は紛れもなくホンモノだろ。【#磨け感情解像度 × #おびコレ _Vol.3】

私設賞・note非公式コンテスト「#磨け感情解像度」の運営パートナーを務めるサトウカエデです。

おびコレ形式で投稿作品をご紹介するまとめ、Vol.3です。

【おびコレとは?】
「twitterシェア時につけるツイート主独自のコメント」を、書籍カバーの帯になぞらえてnoteの帯と呼び、帯の世界と可能性を探究してみようという、2019年10月に開催されたillyさんによる【自主お題企画】「わたしの

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ピアス

ピアス

ベッドルームに落ちていたピアスを拾った。濃い紫と淡い紫が混じりあった小さな宝石がシャラシャラと揺れるピアス。

指でつまんで陽にかざしたら、キラキラ光った。

私のピアスじゃないピアス。

見たことのないピアス。

そっと口にふくんだ。

優しく舌で転がすと、舌触りが悪かった。

口から出して、手の上に乗せたら、私の唾液でもっとキラキラ光った。

綺麗だ。

キッチンからガラスのグラスをとってきて

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あじさい

 枯れたあじさいたちの前で、女が一人、しゃがんでいた。丸い背中。カーキ色のシャツや藍色のスカートは、しわだらけで。顔をのぞけば、女の青い手が目についた。やせた十本の指が、花弁を包み込んでいる。

 ねっとりとした風が、広場を這って。シャツの襟元でたゆたう黒髪が、陽光で真白に濡れている。女の正面で、朽ちかけたあじさいたちが、さらさら鳴って。紫、水色、白、ピンク。澄んだ色など、一つもなくて。あるのはた

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なんでこんなに特別なんだろう。【#磨け感情解像度 × #おびコレ _Vol.1】

なんでこんなに特別なんだろう。【#磨け感情解像度 × #おびコレ _Vol.1】

私設賞・note非公式コンテスト「#磨け感情解像度」の運営パートナーを務めるサトウカエデです。

6月1日からはじまった当コンテスト、1週間で22作の応募をいただきました!ありがとうございます。

「感情」という多彩な、でも形もなく目にも見えないものを、ひたすらに文章で表現しようというのがコンテストのテーマ。見事に色とりどりの表情豊かな作品が集まっています。

投稿作品はマガジンにまとまっています

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「言葉は、必要ですか?①〈side.S〉」

「雨、降ってきたね」

 誰だったかは忘れてしまったけれど、部屋にいた誰かの言ったその言葉で、窓の向こうの細かに降る雨の音に気付いた。

 その部屋にいるのは男女合わせて七人。女性は私を含めて三人だ。全員がかつて同じ小学校に通っていた同級生で、揃うのは卒業以来はじめてのことだった。

 久し振りに昔馴染みで集まりたい、と有紀から連絡を受けて、私はいま彼女の住むマンションにいた。上司の冷たいまなざし

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