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『メリー・ポピンズ』 スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャスな映画と、カウンター・カルチャーとしてのメリー・ポピンズ
『メリー・ポピンズ』(1964年/ロバート・スティーヴンソン) 【あらすじ】 空からメリー・ポピンズが降りて来る 星10。いつ何度観ても圧倒的に素晴らしすぎる、愛すべき大切な一本。 とにかく「映画が喜んでいる」という楽しさでみなぎっている。ほとんどドラッグ的な幸福感の連べ打ち。ジュリー・アンドリュースは生きて歌って踊る「幸福」そのもの。ウルトラナイスガイの我らがディック・ヴァン・ダイクは、彼が楽しそうに思い切り踊っているだけで、涙が出るような感動が湧き上がる。本作が名作
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『劇場版 シルバニアファミリー フレアからのおくりもの』 モノは買うな!作れ!そして家族も作れ!という超過激クリエイト主義の怪作
『劇場版 シルバニアファミリー フレアからのおくりもの』(2023年/小中和哉) 【あらすじ】 ミッドサマーみたいな村で娘がお母さんへのプレゼントを熟考する 激DIY創作推奨映画かつ反資本主義映画。でありながら、ほとんど宗教的とも揶揄できるファミリー大賛美映画でもある。クライマックスなんか統一教会かよと感じた(褒めています)。結婚最高、夫婦最高、家庭最高、親最高、子は親を崇めよ、そんな思想で埋め尽くされたシルバニア村は必ず「二人身」以上のコミュニティとして機能していて、夫
『Cloud』 映画の中だけに存在する「映画内世界」というリアルで、ひたすらに「面白いこと」だけをやってみた映画が面白くないはずがない
『Cloud』(2024年/黒沢清) 【あらすじ】 転売ヤーなのでめっちゃ恨まれていた テーマとかメッセージとかドラマとかを語ることのすべてを葬り去って、「面白いこと」だけを羅列して「面白いこと」で数珠繋ぎしただけの果てしなく「面白い」映画。ゆえに、黒沢清のフィルモグラフィ、特に『クリーピー』以降だと間違いなくダントツで「面白い」。言葉通りの意味で「ずっとめっちゃ面白くて楽しい楽しい映画」。 黒沢清の映画でこんなにも笑える日が来るとは。いや、いつだって黒沢清の映画には笑
『Chime』 ディスコミュニケーションの作劇が、映画と観客のディスコミュニケーションにまで侵食する、ただ一本の新しい恐怖映画
『Chime』(2024年/黒沢清) 【あらすじ】 誰も気がついていないが、わたしもあなたも全員狂っている 自分がホラー映画を撮るタイミングで絶対に観ない方がいいと思って暫くスルーしつつ、座組のほとんどが本作の話ばかりするので、折れてやっと観て、あまりにも創作意欲の糧となり励みとなった。 怖いよりも前提に、「まだこんな表現があるのか」「こんなことでいいんだ」「ホラーはやっぱり最高に面白いな」と勇気をもらえた。 好きなものを撮っていいよと言われてコレを撮ってしまう、黒沢清