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『その男ヴァン・ダム』 結局、映画を観ることは孤独な行為なのだから、その孤独が自分にとってどんな意味があるのかだけが重要だ

『その男ヴァン・ダム』(2008年/マブルク・エル・メクリ)

【あらすじ】
ヴァン・ダムが酷い目に遭ってメソメソする

確か公開当時、シネコンが一軒しかない田舎(実家)に住んでいた僕は、ヴァン・ダムのメタ映画!俺の住む街ではやらない!でも観るっきゃない!と、この映画を観るためだけにユナイテッド・シネマ豊洲まで片道2時間掛けて上京したのだった。

豊洲のロビーには007の『慰めの報酬』のバカでかいポスターが吊るされていて、やっぱり東京はスゲーと胸躍らせながら客席へと向かった。
豊洲の映画館はガラガラで、というか自分と脂汗かいたオッサンの二人しかいなかったと記憶しているけれど、終了後にそのオッサンと「ヴァン・ダム最高!」と固く握手したくなるくらいには感動した(脂汗をかいていたので握手しなかった)。

そういったノスタルジーと共に、本作は僕の人生に刻み込まれている。
あまりにも個人的な感情だけれど、この世の映画なんて、結局は自分にとってどれだけ意味があるか、そんなもんだ。
映画を観るという行為は孤独なのだから。
だから、孤独な意味を一つでも見つけていきたい。

久々に本作を見返してみた際、脳内にひろがる景色は、映画の即物的な映像ではなくて、当時の映画館の暗闇の懐かしさだ。
映画館へ行くということは、鑑賞ではなく体験だ。小さな旅のような楽しさがある。
鑑賞した映像は徐々に忘れてしまっても、体験したことは生涯心に残る。
それが、僕が映画館で映画を観る理由だ。帰り道に食べた東京チカラめしの味、マジで未だに憶えている。

ところで作品の内容は、端的に言えば『狼たちの午後』をヴァン・ダム本人役でリメイク、プラス自虐ネタ満載、みたいなものでそれなりに楽しい。
ラストもハートフルというか、人間を信じている着地でほっこりする。
白眉であるヴァン・ダムのマジ独白シーン(映画のセットから文字通りクレーンが上昇していき、映画の外側でヴァン・ダムがメソメソしながら長回しワンカットで延々とボヤく)で涙を流せないヤツは、『キックボクサー』100回観て出直して来い!

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