【2012年映画ベスト】
【外国映画ベスト20】
1位 ペドロ・アルモドバル『私が、生きる肌』
2位 リドリー・スコット『プロメテウス』
3位 トーマス・アルフレッドソン『裏切りのサーカス』
4位 ラース・フォン・トリアー『メランコリア』
5位 トム・シックス『ムカデ人間2』
6位 ウィリアム・フリードキン『キラー・スナイパー』
7位 ナ・ホンジン『哀しき獣』
8位 デヴィッド・フィンチャー『ドラゴン・タトゥーの女』
9位 ティム・バートン『ダーク・シャドウ』
10位 マーク・ウェブ『アメイジング・スパイダーマン』
11位 モンテ・ヘルマン『果てなき路』
12位 『ジョン・カーター』アンドリュー・スタントン
13位 ニコラス・ウィンディング・レフン『ドライヴ』
14位 ピーター・バーグ『バトルシップ』
15位 ウディ・アレン『ミッドナイト・イン・パリ』
16位 アン・リー『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』
17位 マックG『Black&White/ブラック&ホワイト』
18位 ティム・バートン『フランケンウィニー』
19位 ロマン・ポランスキー『おとなのけんか』
20位 マーティン・スコセッシ『ヒューゴの不思議な発明』
【日本映画ベスト10】
1位 大林宣彦『この空の花 長岡花火物語』
2位 吉田大八『桐島、部活やめるってよ』
3位 アッバス・キアロスタミ『ライク・サムワン・イン・ラブ』
4位 北野武『アウトレイジ・ビヨンド』
5位 庵野秀明『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』
6位 三池崇史『悪の教典』
7位 黒沢清『贖罪』
8位 樋口真嗣『巨神兵東京に現る』
9位 高橋栄樹『DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on 少女たちは傷つきながら、夢を見る』
10位 西川美和『夢売るふたり』
1位の『私が、生きる肌』はオールタイムベスト級に大好き。変態映画が洗練された結果として純愛映画に、純愛映画が洗練された結果として変態映画が爆誕してしまったかのようなブラックコメディ。一切のネタバレ厳禁で見るべきです(鑑賞当時、オシャレ映画だと思って来ていたマダムたちが衝撃展開にドン引きしていた。僕は爆笑していた)。
ジョン・ル・カレの原作を抑制されきった色気で押し通し、エピローグで『裏切りのサーカス』は人生ベストエンディング映画。
『ドライヴ』は上京して一発目に横浜ブルグで観て、そういった思い出込みで忘れられない厨二病大成功ハイセンス映画。
『プロメテウス』は巨匠がリミッター解除して大暴走した悪趣味ホラー映画の大傑作。
『ドラゴン・タトゥーの女』、リスベットたん×ジェームズ・ボンドになれなかった中年のラノベ映画。
『ダーク・シャドウ』は評判がそんなに良くなかったが、ティム・バートン大復活の愛すべき大切な映画。エヴァ・グリーン演じる魔女アンジェリークのことを思い出すだけで泣けてくる。
『長岡花火物語』は大林映画ひとつの集大成的メモリアル。「まだ戦争に間に合いますか」「さようならー」「この雨、痛いな!」など、墓場まで忘れることのない台詞だらけ。
『アウトレイジ・ビヨンド』は久々にタケシ映画がちゃんとコメディとして成立していたし、自滅願望よりも生き残る活力みたいなものが画面に蘇っているのが良い。映画の始め方と終わり方も流石に分かっているというか、コントのリズム感覚が冴える編集が素晴らしかった。
AKBに全く興味はなかったが、『DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on 少女たちは傷つきながら、夢を見る』はすごかった。現代のアイドルのドキュメンタリーを撮ると「戦争映画」になってしまう、という現象に驚く。
『エヴァQ』に関しては、初日のお通夜状態を目の当たりにして「これが『シト新生』の時のお通夜感覚か!」と妙にテンションが上がった。死ぬほどエンタメだった『破』よりも、庵野がもがき苦しみながらも嘘をついていない『Q』の方が個人的には好き。
『巨神兵東京に現る』は「館長庵野秀明・特撮博物館」にて鑑賞したときの感動が忘れられない。特撮の素晴らしさもさることながら、舞城王太郎のスクリプトが一字一句クソエモい。
『悪の教典』、これこそが健全な娯楽映画だと思います。
2012年は大学進学のために上京した年で、ひとり暮らし!トウキョウ!映画館!と勝手に躁状態になりながら、日々映画館へ通っていた時期だ。
上京やひとり暮らし以上に、好きな時間に好きな映画を(ある程度の自由度を保ちつつ)見に行けることが夢のように楽しかったと記憶している。若さゆえに時間も有り余っていたし、手当たり次第になんでも観ていた。
当時はマヤ文明による「2012年人類滅亡説」が囁かれていた。とは言え、それが悲観的な影を落としていた気配はなく、終末論×新大学一年生の掛け合いは「じゃあたくさん映画観ておくしかないっしょ」と謎のアドレナリンが常に分泌されているようなランナーズハイ状態にあった。
恐らく、実人生において最も「映画」というものに対して一貫してオプティミズムなまま接して、面白い映画もつまらない映画も、鑑賞後は「映画サイコー、シアワセダナー」という多幸感に包まれ続けていた。そんな年は、もう二度とない。(当時に友人と映画を作っているときも、同様の多幸感があった)
おそれるものが何もないと錯覚していた僕は、やがて勉学とか労働とか恋愛とか人間関係とか将来とか嫉妬とか全能感とか自己嫌悪とか、当たり前に隣に潜んでいたやっかいな輩から肩を叩かれて葛藤することになる。「映画なんか観ている場合じゃない」ということが、この翌年から頻出し始める。
つまり、2012年は、自分自身が「大人」になる以前の最後の年という感覚がある。
残念ながら、もう二度とあのような、純粋無垢に映画ファンとして楽しめる時間なんかが訪れないだろうと理解している。だからこそ、そういった日々のかけがえのなさを忘却せずに、これからも映画館を訪れてさえいれば、2012年の自分自身を裏切ることはない。
【おまけのワースト】
ダークナイト・ライジング
ヘルタースケルター
アーティスト
ヒミズ
アベンジャーズ
ボーンレガシー
ジョニーイングリッシュ気休めの報酬
ワーストに関しては特に書くべきことはない。『ダークナイト・ライジング』は鑑賞当時、あまりのヘッポコ脚本に数十回ズッコけたり、「おいベイン、恋してんじゃねえ!」と厳しく評価してしまったが、後年になって時折見返した結果、可愛らしい映画だなと魅力に気づくことができた。きっとノーランは"暴動の映画ではない、映画の暴動である"を目指したかっただけなのかもしれない。そもそも、アン・ハサウェイが猫耳姿でいろいろ頑張ってくださっている映画に落胆する方がおかしいのである。『アベンジャーズ』はカメラワークの意味のなさとテレビドラマみたいな映像に萎えて、全く祭りに参加できなかった。『アーティスト』は犬だけは可愛かったが、終始「サイレント映画ナメんな」という感情。『ヒミズ』は裸の王様に、周囲の誰も裸だと言ってくれなかった映画。瓦礫の上に三脚を立てる愚行を僕は支持しません。
※旧ブログより転載