自己調整しながら学ぶ子どもたち〜算数「かけ算」の授業実践❷〜
おはようございます。“学びで人生を楽しく”と掲げて日々勉強を続けている小学校教員です。
以前、低学年からできる自己調整学習のはじめかたと題して、「かけ算」の授業実践について記事にしました。今回はその実践の続きを書いていきます。
第5時 子どもたちが対話で深める
最初に前時のノート紹介をし、問題提示後35分間を子どもたちに任せる授業構成とした。
今回は[1つ分の数×いくつ分=全部の数]の思考を可視化していた子、アレイ図と式を結び付けていた子、大きく成長している子のノートを紹介しながら前時の学習を振り返った。導入のノート紹介には、以下の3つの効果が期待できると考えている。
(1)最初に考え方や学び方を共有できるため、本時の学習に活かしやすい。私の学級では、ここで紹介した考え方や学び方を自分の学びに取り入れる子が多く、良い影響が広がっている。
(2)子どもたちから出る誤答や疑問、迷いを取り上げると、再考のきっかけや学びに向かう勢いを生み出しやすい。
(3)チューニング機能がある。ねらいからそれてしまったり明らかに違う方向へと向かっている場合に、ここで軌道修正を図ることができる。
問題[子どもが6人います。あめを1人に4こずつくばります。ぜんぶであめを何こくばるでしょうか。]を提示。問題文に出てきた順で式を書くと、[1つ分の数]と[いくつ分]が逆になる。6×4と4×6のどちらが正しいか、乗法の意味から考えて立式する課題とした。
学習の進め方【A:めあてをつくる、B:自分なりの考えを書く、C:話し合いをする、D:振り返りをする】を掲示して、いつも通り子どもたちが自ら学習を展開できるように促した。
めあては、持ち時間の中で自分がどう学ぶかを計画して書く子が増えてきた。TODOリストのようにチェックを入れて進捗を確かめられる計画表を作っている子も多い。
また、学習マスター表をもとに、式・アレイ図・言葉(文章・ナンバリング・吹き出し)から考え方を選択してめあてに書き入れいている。このうように、自分のめあてをつくることで、見通しをもって自分の考えを書き出すことができている。
ある児童Aのめあては以下の通り。このように、どの子も自分なりのめあてをつくって学びに向かっていく。
ここから35分間、子どもたちは自分で学習を展開していく。式とアレイ図は基本的に全員が書けるようになっていて、プラスαで言葉を付け加えたり確かめ(交換法則)の式やアレイ図を書いたりしている。中には、筆算で表したりわり算で確かめたりしている子もいる。
子どもたちは自分なりの方法で考え、表現しているため、とても夢中になって自分の考えを書いている。自分なりの考えをもてた子は対話に向かう。
最近は何分から対話に行くと決めている子が多いため、その時間までじっくり自分の考えを書いている。最初の段階では、絵やアレイ図では4こずつ配ることを理解しているのに、6×4と立式している子が多かった。
児童Bは、絵とアレイ図を組み合わせたもの・かけ算の式・たし算の式・たしかめ(交換法則)の式とアレイ図で自分の考えを書きあげていた。このように一人ひとりが多様な表現方法で自分の考えを表出していく場になっている。
多様な表現方法が表出するため、対話も主体的になっていく。1人、2人と立ち始めると、徐々に対話の時間にシフトしていく。「考える⇄対話する」の行き来が自由であるため、学びがダイナミックになっている。
対話の視点【①増やす②減らす③変化④パワーアップ】を意識して対話に向かうことが定着してきた。ただ意見を言い合うだけではなく、2人の考えを比較・検討し、ときには新たな考えを創造する姿も見られる。
特に、対話を通して考えを増やしたり、似ている考えを見つけて自信をもったり(パワーアップ)は頻繁に起こる。今回は6×4と立式する子が多いことを想定していたため、間違いに気づいて減らしたり、よりよい考えに変化させたりする対話に期待していた。
発信力の高いAの働きかけにより6×4という式では説明できないことに子どもたちが気づき始めた。面白かったのは、気づいた子がまた別の子へと連鎖していくように広がっていったこと。
全体共有での話し合いでは他人事になりやすいが、ペア対話による気づきにはパワーがある。「たしかに」「そういうことか」と心から出た納得の声が多く聞こえてきた。
また、対話での気づきをメモする「話し合いスペース」を取り上げてからは、多くの子が真似してメモを取っている。聞いて終わりにせず、自分の考えや感じたことと結び付けようとしている。そして、そのメモが振り返りにも活かされている子もいる。
残り時間が5分に近づくと多くの子が振り返りにシフトしている。中には、考え続ける子や対話し続けるペアもいる。私の学級では、振り返りの視点【+できた・わかった、ーできなかった・わからなかった、→次は、!発見、?はてな】を提示している。めあてに沿って学習を展開してみてどうだったかを振り返り、次の学習につながるように促している。
最初は6×4だと考えていたが対話を通して4×6だと気づいたと書いていた子が多かった。6×4か4×6かどっち?や6×4か4×6で迷っていると書いている子もいた。次回の導入で再考の場をつくり、かけ算の式の意味をもう一度考え直せるようにする。また、今後は振り返りをさらに充実させ、学習間につながりが生まれ、より学びが深まっていくようにしていきたい。
児童Cの振り返りは以下の通り。このように、今日の自分の学びを振り返って次につなげられるように促している。
第6時 子どもが学びをつなぐ
最初に前時のノート紹介をし、問題提示後30分間を子どもたちに任せる授業構成とした。前回の35分という長さは、少しまだ早かったように感じたので修正した。
今回は6×4か4×6かどっち?と迷っている子のノートを紹介し、再考の場をつくった。別の子の絵とアレイ図を組み合わせたものを提示し、4つずつのあめを6人に配るイメージをつかませた。これにより、4+4+4+4+4+4というたし算の式が明確になり4が6回繰り返し足されるので4×6が成立すると多くの子が頷いていた。
問題[ひろとさんの小学校には、どの学年も3クラスずつあります。学校全体では何クラスあるでしょうか。]を提示。[いくつ分]の情報が隠された問題である。前回の学習を活かして[1つ分の数]と[いくつ分]を見極めて立式できるかに注目した。
児童Aのめあては以下の通り。
ここから30分間、子どもたちは自分で学習を展開していく。今回は最初の段階から、ほとんどの子が3クラスのまとまりが6学年分あると読み取り、3×6を立式できていた。絵とアレイ図を組み合わせたものを書いている子が多く、たし算の式→かけ算の式という流れでうまく結び付けられていた。
先ほどのめあてをつくった児童Aは、絵とアレイ図を組み合わせたもの・かけ算の式・たし算の式・筆算・文章で自分の考えを書きあげていた。文章での説明は以下の通り。
いつも通り、徐々に対話の時間にシフトしていった。ほとんど誤答が見られなかったため、考えを増やしたり、似ている考えを見つけて自信をもったり(パワーアップ)するための対話となっていた。
残り時間が5分に近づくと多くの子が振り返りにシフト。めあてに沿って学習を展開してみてどうだったかを振り返り、次の学習につながるように促した。
児童Aは以下のように振り返った。
参考文献
※対話の視点、振り返りの視点は葛原先生のVoicy参考