どんな本よりも…珠玉の3冊となりました。難病と向き合った父さんの闘病日記。
4月21日、父が他界しました。
数年前、難病指定されている間質性肺炎を患いました。治療法が見つかっておらず、少しずつ少しずつ悪くなっていく病です。
母を中心に、兄や家族も支えましたが、なかなか難しく、お別れとなってしまいました。
コロナ禍で、満足に会えず、直接励ませられず、駆けつけられず、悲しい限りです。
3冊のノートがありました。
父は恥ずかしいから棺桶に入れてくれ、と言っていたらしいが、家族で話し合って、これは家宝にせないかん。となりまして、また、母が「私がお父さんのところに行くときに持っていく。」ということにもなりました。
2冊目のノートこそ闘病日記というタイトルでしたが、
読み進めていくと、父が病気と闘おうとしていたわけではないことがわかりました。
ー 病気さん、仲良くしてください。 ー
ー 間質性肺炎さま、よろしくお願いいたします! ー
と3冊目のノートには記されていました。涙が止まりません。
1日でも長く、家族のために。
少しでも長く、生きたい。
仲良く付き合っていきましょう
そう記されていました。
自らの状態を受け入れて、憎むべき相手であるはずの難病に“さま“までつけて。
元々私は父を心から尊敬していますが、3冊のノートを隅々まで読み、父への尊敬の念は巨木すぎて言葉になりません。どんな言葉や表現が当てはまるのでしょうか。
自らの体の状態や状況、1時間おきに目が覚める睡眠、食事のビフォーアフター、リハビリ、先生の話、酸素濃度の数値、血中酸素の数値
(1ヶ月ぶりに立ちションベン!やったぜ!)
毎日、ノートに記しながら、自らを俯瞰して病気と向き合っていました。まだまだ生きるため、生きたいため。
そして時には、調子が良い日なのでしょう。そんな日のノートの脇には必ず、みかんのこと、畑のこと、仕事のことが書き記してありました。
いつも畑仕事をしていた父らしいです。涙が止まりません。
3冊のノートには一才の不満、憤り、悲しみ、辛さ、愚痴などの言葉はありませんでした。唯一、あったとすれば病院のWi-Fi環境への不満を書き記したところがありましたが、そのまま「不満を言うな。すいません、ありがたやありがたや」と続けて書いてありました。
父の3冊の闘病日誌に毎日記されていたのは、
母への感謝
家族への感謝
病院への感謝
そして、生きようとする意志でした。
妻にありがとう、長男にありがとう、次男(わたし)にありがとう、三男にありがとう、家族皆にありがとう、ご先祖さまにありがとう
私はまだくたばるわけには参りません
ありがたやありがたやありがたやありがたや
よくなるよくなるよくなるよくなるよくなる
乗り越えられない壁はない
苦しみを楽しみに変える挑戦ありがたや
辛さを楽しみにありがたや
困難を乗り越える楽しみありがたや
そして冒頭にも紹介した
ー 病気さん、仲良くしてください。 ー
ー 間質性肺炎さま、よろしくお願いいたします! ー
そういった言葉に溢れていました
生きたいよう
助けてください
辛いよ
苦しいよ
痛いよ
寂しいよ
一言もないのです。
だんだんと、だんだんだんだんと、できることが無くなり、悪くなっていく中で、死が近づいてくる中で、十分に睡眠も取れない中で、
病院でたったひとりで
信じられません。父は一体、何者なのでしょうか。
生きようと、生きたいとする父
反して、無情にも命を奪っていく病
どうして父がこのような目に遭わなければならないのか
何にも悪いことはしていません
色んな人に元気や勇気をあたえつづけて、人気者の父が
どうしてこの父が、こんな目に遭わなければならないのか
どうかまだまだまだ生きさせてください
僕たちや、母から、父を奪わないでください
虚しく、悔しく、病気が憎く、行き場のない感情が私を否応無しに襲います。
三兄弟の中でもとりわけ、私は父に顔も性格も似ていて、よく本を読みます。父には遠く及びませんが、いろいろな本を読んできました。
父のようには できません
父のようには なれません
でも、真似することはできる。
どんな本よりも、この3冊のノートは私の生きる指針となり、どんな自己啓発本や経営本よりも、私の心を強く支える書物となりました。父に、ありがとう。
目に、胸に、脳裏に焼き付けようと、何度も何度も何度も読み返していたら、父が「いつまで読みよるがな。」と声がした気がしました。はい、心に刻みます。
父には申し訳ないのですが、最後に父は数年にわたって、大事なことを教え、残してくれました。
私はあなたの息子です!乗り越えられない壁はない。
乗り越えた先の楽しみ、ありがたや!
父さん、ありがとう
生きたかったよね
どがいなっちょるがぜよ
母さんが父さんがおらんとつまらん、とわんわん嘆いて心配でしょう。
父さんには及ばないけれど、僕たちで母さんが楽しく過ごせるように頑張るから。
ゆっくり、ゆっくり休んだら
どうか見守っていてね。
そして、もういいかなって時は、優しく笑顔でお調子交りで、母さんを迎えにきてあげてね。
生まれ変わっても、父さんの子供になりたいです。
生まれ変わっても、父さんい会いたいです。
また、会いましょう。