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小説:風景の記憶

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オフビートな小説です。
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記事一覧

第18回 「妄想」という言葉に「きぼう」というルビを振るのはあなたの自由。

 洋介は、夜の七時近くにマリアが住んでいるアパートを訪れた。窓が暗くなっていた。五分ほど…

第17回 人はひとりで生きていくものだから、って言うわりに、モテには興味があったり…

  翌朝、洋介は五時に起きると、まず風呂に入った。  湯の中に肩まで体を沈めて目を閉じた…

第16回 正しくないことが正論になることだって、ある。

 洋介は日が暮れてからマンションに戻った。酒の匂いをぷんぷんさせていた。ふらふらしながら…

第15回 なんなんだお前は。おれの知らない世界に生きていやがって……!

 女たちは手をつないで帰っていった。  洋介は神社に残った。ベンチに腰掛けて、ぼんやりと…

第14回 坂道の記憶

 さいごの風景は身近な場所にある、と蝶が言った。  ディズニーランドや東京タワーの思い出…

第13回 幸せに……なれますか?

  土曜日の午前中に金子家を訪れた。いつものように執事が出迎えた。母屋の玄関で蝶が待って…

第12回 はじまりの風景

 本屋で立ち読みをして時間を潰し、夜の七時過ぎにマンションにたどり着いた。  キッチンで真理子が料理をしていた。  洋介は部屋着に着替えてリビングで相対性理論の続きを読んだ。  手から本が滑り落ちる感覚で目が覚めた。いつの間にか眠っていた。本を拾い上げて、照れ隠しのだらしない笑みを真理子に向けた。真理子はダイニングテーブルに料理を並べるのに集中していて、洋介のほうを見ていなかった。  ダイニングにいった。食卓には、サラダと刺身、味噌汁と冷凍食品のチャーハンが並んでいた。

第11回 マリア

 洋介は、まっすぐにマンションに帰らなかった。  あてもなく歩いていた。  やがて、中野駅…

第10回 決心

 アポなしで金子家を訪れた洋介は、執事に、蝶に会いたいと伝えた。  執事は洋介を残して母…

第9回 虚ろな真理子

  果穂から預かった風景はさいごの風景ではないから、喜びなんか見出せない。  生きてい…

第8回 沢渡果穂のさいごの風景

 洋介は断るつもりだった。  マリアの時と同じ結果になるという予感があった。でも、武はそ…

第7回 老婦人のさいごの風景

翌日、洋介が金子家を訪れると、いつものように執事が出迎えた。昨日も顔をあわせたというのに…

第6回 金子家に招かれて

 数日後の夕方に金子家を訪れた。  いつものように執事が出迎えた。  母屋に案内されると…

第5回 雷の記憶

当然だけど、洋介の仕事は海外のみというわけじゃない。むしろ国内、もっといえば都内がもっとも多い。今日もそういう仕事だった。  マンションの屋上に立っていた。すっきりと晴れていて、強い風が吹いている。そこから見える新宿方面の風景が必要なんだ。  ちなみにこのマンションは昔、依頼人が住んでいた。当時はまだ東京都庁は建っていなかった。東京は今よりもずっと背が低かった。  目の前の風景と依頼人の記憶にあった風景を重ねてみる。   厚い雲が空を覆っていた。ほとんど全体的に黒に近