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【連載】RYUKYU SOUL, HUMAN SOUL #22 民家Iさん②

こんにちは。今週も連載をお読みいただきありがとうございます。先週の投稿では沖縄県糸満市で一泊お世話になった民家さんについて、お二人のような沖縄の方々の自然や伝統を愛する気持ちが島の平和に繋がっていることや、地上戦によって一度全てを失ったからこそ、彼らが島の自然や伝統を大切に生きていることを書きました。

今週で糸満市、そして大変お世話になった民家さんについての投稿は最後となります。今回は民家さんの奥さんと地上戦や基地問題について話したことを書こうと思います。

<民家Iさん②>

米軍基地問題や地上戦の遺族の思いを深刻に捉えていた私は民泊を手配する時点から「沖縄の方々の日米関係に対する考え方に触れたい」ということを伝えてあったので、民泊の奥さんが進んでそういった話をしてくださりました。

前回の投稿で、車を走らせながら地層の断面が見えた時に沖縄南部特有の地層である石灰岩のお話を奥さんがしてくださったと書きました。あの話には続きがあり、奥さんはその石灰岩の中に沢山の戦没者の細かい遺骨が回収しきれずに残っていること、そして日本政府がその石灰岩を現在新たな米軍基地の埋め立てのために採掘・運搬しようとしていること、それに対して戦没者を悼む南部の方々が反対の声を懸命に上げ続けていることを話してくださりました。

私はこの対立については知ってはいたのですが、2日間の滞在で糸満という地の空気や静けさそのものから戦没者に対する弔いや申し訳ない気持ちを常に感じ取り、その反対の声の重みをさらに理解しました。戦没者遺族の方々は個人が特定できない程の細かい遺骨を家族の墓に戻すことはできないけど、せめてもそれがいつも見る南部の石灰岩の景色の中に混ざっていることで墓がなくても戦没者を感じられ、家族や友達としてその命を守れなかったことへの居た堪れない気持ちを晴らすことができるのです。

民家さんお二人は沖縄出身ではないものの、かつて特に戦闘の激しかった南部で暮らしていると地上戦を生き抜いた方々や戦没者の遺族のお話を聞く機会がよくあるそうです。

終戦後の米軍の収容所での生活を強いられた人たちが廃品で三線を作ったり、戦後のおばあがBEGINの『オバー自慢の爆弾鍋』の歌詞のように「大丈夫さ!」と言って不発弾で鍋を作って子どもを育てたりというように、戦後の全てを失った島で明るい気持ちを持って立ち上がった人たちが本当に存在したことも大切に話してくださりました。

そして戦没者の遺族や子孫である人たちにとっては、戦争に対する抗議や憎しみは彼らの血の一部だといえるほど根強いものであるとも教えてくださりました。

沖縄南部というのは地上戦が犠牲にしたものの重みと、それが簡単には解消できないことを肌で感じられる場所です。南部を訪れたら、世界で現在起きている武力衝突や武力侵攻の犠牲者のことを考えずにはいられません。武力によって傷ついて良い人、命を落として良い人というのは誰一人として居らず、そういうことによって生まれる憎しみや怒りは何十年もその地に残ります。けれどそのような状況下で彼らの人権や命を守れるのは家族や友達ではなく、権力を持った政治家や支配者だけなのです。

そして奥さんは米軍基地問題に関しては、基地があることによって生じる住民への被害に反対をしつつも、自分はアメリカ人の友達とは変わらず仲良くしていることを強調して話してくださりました。

私も神奈川の米軍基地に配属された米軍人の家族としてやってきた知人が多く居ましたが、日本の米軍基地で働かされている人たちやその家族は日本の文化やマナーに対してリスペクトを持っている人が大半です。更には、基地の建設や軍人の配属自体は政府や軍における支配者によって一方的に決められていることです。米軍基地の存在に反対するからといって、そこに偶然住まわされ、自分たちの社会にリスペクトを持って生活している人間の人間性や生活を否定してはいけません。それは沖縄の社会でも同じことです。

米軍基地の友達。この頃の私は中学生。

つまり、数年後を思慮に入れた考えと明日だけを思慮に入れた考えは常に区別して表現しなくてはいけません。実際、私たちは社会全体の未来を決める政治的な決断よりも、自分自身の明日を決める身近な人間関係に対してコントロールする力をより持っています。基地について考えることは沖縄の数年後を考えた時に必要ですが、今の時点で自分が身の回りの人たちと仲良く共存することができなければ、歳を取った自分や自分の子孫の身の回りのどこにも平和は存在しません。

そういう意味で沖縄の方々は明日の平和と数年後の平和を区別し両方を大切にすることで、米軍基地問題について考えると同時に多様性の中で身の回りの人たちと丁寧に関わっています。

一人旅3日目はそのようなことを考えながら民家さんと分かれ、浦添の米軍基地で地元の人たち向けに開催されるフェスティバルへ向かいました。

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