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カンボジアで教えるということ

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カンボジアでの美術教育やデザイナーを育てる仕事で得た知見を元にした教育論(?)
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#教育

Digicon 6 カンボジア大会で審査をした

Digicon 6 カンボジア大会で審査をした

8月の終わりに、日本のTBSが主催する 21th DigiCon のカンボジア大会である DigiCon 6 の審査に行ってきた。
ヘッダーの写真は、TVK(カンボジア国営放送)のスタジオでの番組収録の様子(FBから拝借 https://www.facebook.com/cambodiadigicon/

7月に行われたワークショップの様子は、こちら

各作品については前述のFBのページをみてい

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Phare Ponleu Selpakの卒業制作に行ってきた話

Phare Ponleu Selpakの卒業制作に行ってきた話

去る七月末にカンボジアの地方都市であるバッタンバンに行ってきた。
当地にはフランスのNGOが設立した総合的な学校で、特にアート系の専門学校も併設しており、この学校を母体としたサーカスはカンボジア国内外で有名だ。

https://phareps.org/

美術にも力を入れており、特にアニメーションコースはカンボジア国内で屈指の授業内容を誇り、毎年レベルの高いアニメーターを輩出している。
自分はS

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アニメーションのワークショップ

アニメーションのワークショップ

カンボジアのデジコンとは?
カンボジアの国営テレビTVKでは、毎年学生たちを集めてアニメーションのワークショップを行なっている。
最初は、NHKのデジスタという番組とのタイアップだったが、番組がなくなってしまったため、2年くらい前からTBSのデジコンとタイアップしている。

タイアップ番組が変わってやっている内容は変わらず、毎年下記のコース分けをして、ワークショップを行っている。

・3DCGアニ

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今日の授業

今日の授業

IT STEP ACADEMYでの今日の授業はココナッツの着彩。

最初の頃と比べて、どうだろう?

最初の頃の授業(リンゴ)

四ヶ月後の授業(ココナッツ)

たった週一回3時間*四ヶ月なので、そうそう上手にはならんけど、前よりも随分見れた感じになっていると思う。

ちなみに、ココナッツの方はオレが30分で描いたのも混じってます。どれでしょう?

(最初は19人もいた生徒が、ついにたった2人…ト

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Developing Creative Thinking 1

Developing Creative Thinking 1

自分にとって初めてのワークショップ「Developping Creative Thinking 1」をプノンペンの哲学カフェで行なった。

今までは、アート系の学生たちを相手にしてたので、アートを離れてこういうことをするのは、全くの未経験。

告知は、哲学カフェのFBポストのみでひっそりと行なったので、学生さんが数名くれば良いかな?という感じだったのだが、実際に来てくれたのは、大学で哲学を専攻し、

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授業に役立つもの

カンボジア人向けの授業では、VTSや実技の他に、とても役に立っているものがある。

それは「デザインあ」のDVD。

こちら、本当に素晴らしい内容で、中途半端な実技よりも数倍良い。

日本人の大人からみても、みているだけで面白いし、カンボジア人たちから見れば全てが見たことがなく新鮮なようで、面白がってみてくれている。

各コーナーでは、今まで何気なく見ていたものでも、視点を変えるだけで、デザインの

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(余談)カンボジアについて2

前回はカンボジアの人の一般的なものの見方を紹介したけど、最後にちょっと触れたように都市部では変わりつつある。
やはり、理由としては外国人と触れる機会が多いためだろう。

都市部では、外国人と接しない職業はない。
閉鎖的な工場であろうとも、上司は外国人であることがほとんど。
そのため、外国人がどのような考え方をするのかを知っている人も多く、それに合わせようとすれば、おのずと自分自身を変える必要がある

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(余談)カンボジアについて1

最初に
ここで書かれていることは自分がカンボジアに7年間住んで、スラムの最貧民層から裕福層まで幅広く付き合った経験を基にしてます。文化が違うということを言いたいのが趣旨なので、カンボジアに住む人たちをバカにする意図はありません。

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まずは、カンボジアの民話を読んでほしい。
「アー・コホック・シー (嘘つきの子供)」
http://www.geocities.jp/sabaikumae/fo

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カンボジアでデザイン・アート系の学校をつくる

カンボジアでデザイン・アート系の学校をつくる

カンボジアでデザイン・アート系の学校をつくりたい、という人がちょいちょいいる。

確かに、カンボジアはまだ未発展でそういったまだ学校も少ないように見えるし、将来的にはまちがいなく必要になってくるのモノではある。
なので、今のうちに作っておけば、先行者優位のポジションが取れるのでは?と思ってしまうのも無理はない。

自分の本心も、今、頑張って良い学校をつくれれば、長い将来を見たときにかなりの確率で成

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3原色を理解するように

2018/9/7 追記

授業では理論的なことも少しやるが、まずは自分で色を作ることに慣れることに注力する。習うより慣れろ!だ。

ルソーの「エミール」などでも書かれている教育の基本なのだが、体験がなければ知識は身につかないのだ。体験があって初めて原理への興味が生まれ、知ることで体験の意味を理解する。

カンボジアの教育では、この体験が圧倒的に少ない。これを成人した人たちにどうやって効率良く教えな

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カンボジア人に色を教えるための最初に知っておくこと

まず、前提として一般的なカンボジア人は、

・公立では小学校から大学まで、美術の授業はない
・ので、今までの人生の中で色を塗ったことがない
・水彩どころか、クレヨンも触ったことがない

カンボジア人がどれくらい、色のことを知らないかというと、美術大学の新入生なのに、赤と白を混ぜてピンクになることを知らない。

そして重要なのが「デザイナーになりたいからといって、絵やデザインが好きなわけではない」と

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色を教える

色を教える

前回までは、観察力をつけることを重点として教えていることを書いたが、今回からは色を教えることについて書いてみたいと思う。

カンボジアの人たちは、美術の時間がないので絵を描いた経験がある人が、一般的な国に比べ極端に少ない。
なので、日本人なら小学生でも誰しもができることができない。

もちろん、たまに他国からのボランティアが来て教えてもらうという、ラッキーな経験のある人もいなくはない。

ただ、そ

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観察力があるとどうなる?

繰り返しになるが、良い思考は良い情報から生まれる。良い情報を見つけるには観察力(見る力と理解力)が必要になる。

では、具体的に観察力があるとどうなるか?というのを見てみたいと思う。「手をデッサンした後、それを元に迷路を作る」という課題だ。

これは下記の手順を踏まえることで、取得した情報を理解するという訓練の一環になる。
・手の特徴を捉えるために、まずはデッサンを描いて手の情報を取得する。
・描

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観察力と思考力

自分の考えでは、思考力を身につけるには、まず観察力を鍛えるのが大前提。

なぜなら、思考するには情報が必要だ。思考とは、必要と思われる情報を手に入れ、取捨選択し、残った情報を別の形に再構築する作業のことだからだ。
そしてそれは、最初にどれだけ質の良い情報を手に入れれるかが、良い思考ができるかどうかにかかっている。

そこで、VTSの目的としては、まずは情報の見つけ方を鍛えるわけだ。

例えばマンゴ

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