観察力があるとどうなる?
繰り返しになるが、良い思考は良い情報から生まれる。良い情報を見つけるには観察力(見る力と理解力)が必要になる。
では、具体的に観察力があるとどうなるか?というのを見てみたいと思う。「手をデッサンした後、それを元に迷路を作る」という課題だ。
これは下記の手順を踏まえることで、取得した情報を理解するという訓練の一環になる。
・手の特徴を捉えるために、まずはデッサンを描いて手の情報を取得する。
・描かれた情報のなかから、手を構成するのに必要な情報を探して理解する。
・それを迷路という形に変形させて落とし込む。
下記は、一般的な(自分の授業を受けるまで絵を描いたことがない)生徒の、なかでもちょっといいデッサンの例(カンボジア人20代前半)。
自分の授業では、そんなにデッサンの回数をしていないので(私がちょっと手伝った上で)だいたいこんな感じになる。基本的な骨格はあってるし、細部もよくみている方だと思う。
しかし、「手」というものの理解はまだまだ。特に筋肉のつきかたはまるで見れていない。見ることはある程度できるのだが、そこからまだ理解が生まれていない。
これを迷路に仕立てるとこうなる。
なんとなく手っぽいが、自分のデッサンで描かれていること(自分のデッサンのいいところ)もわかっていないため、迷路の仕切りが行き当たりばったりのごちゃごちゃなイメージになる。
下記はそこそこデッサンが描けている生徒の例。(カンボジア人20代前半)
縦に長い印象はあるが、光の方向を適切に捉えて、しっかりと描けている。特に筋肉の流れと、そこから派生するシワをよくみている。
このデッサンを元にした迷路がこちら。
シンプルで美しく、手の特徴を丁寧に捉えている。
特に、指紋と爪は同じパターンを使用しているのだが、しっかり指紋と爪に分けて見えるのはレベルの高さを感じる。
迷路としての難易度は低いが、そのようなことは後でいくらでも調整できる。もちろん、それもデザインの高さがあってのこと。
このように、見る力があると必要な情報を拾いやすくなり、理解力によってその情報の取捨選択を行うことが可能になる。
デザイナーには素晴らしいデッサンを描ける必要はない。しかし、絵が描けるということは情報をたくさん得ることができ、さらにその情報を適切に視覚化することができるということだ。
それを観察力と呼ぶ。