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『ホーム・ラン』 スティーヴン・ミルハウザー
目に映るものの表面ではなく深淵を覗きたい、簡単に言葉にはできない何かについて静かに考え込みたい、そんなあなたにおすすめの短編集だ。
「ミラクル・ポリッシュ」は、さえない訪問販売のセールスマンから、“ミラクルポリッシュ”という名の鏡磨きクリームを買う話。
好んで買ったわけではない。なんとなく情にほだされて男を家にあげてしまった自分にうっすら腹立ちながら、一刻も早く男を家から出すために出てきたものを
『波の上を駆ける女』 アレクサンドル・グリーン
1925年、日本で言うと大正時代に書かれた幻想冒険小説だ。
作者のアレクサンドル・グリーンはロシアの貧しい家庭に生まれ、船乗りや鉱夫などの職業を転々とした後、地下抵抗活動に加わって3回も流刑に処せられたという。
その人生自体がひとつの物語になりそうなそんな作家が書いたこの小説はしかし、暗さや苦しさではなく、美しく詩的な幻想とロマンスに満ちた冒険物語だ。
物語は、港町に宿を取り病後の療養をしている
『アメリカへようこそ』 マシュー・ベイカー
とてもパワフルな短編集。
着想の多彩さ、ストーリーの面白さ、文章のバイタリティ、どれを取っても燃料満タンの、エネルギーに満ちた一冊だ。
想像の斜め上をいく想定は新鮮な驚きであり、ストーリーのあまりの予想のつかなさに夢中になってしまう。
一編ごと、どんな設定が現れるのかと期待しながら読み始めるのが楽しい。
人が精神を全てデジタル・データに変換して肉体からコンピューター・サーバーへと「変転」するこ
『渚にて 人類最後の日』 ネヴィル・シュート
悲しく救いのない終末小説。しかし、ここまで救いがないにも関わらずこんなにも美しく、穏やかに凪いだ読後感を与える小説が、他にあるだろうか。
物語の舞台設定は1963年。この小説の初版は1957年なので、近未来というよりも同時代を描いたフィクションだ。
60年代初頭に起きた第三次世界大戦で核戦争が勃発し、核爆弾によって地球の北半球は壊滅状態になった。
今は南半球に位置する国だけで、かろうじて人間が生
“The Swimmer” John Cheever
カーヴァー、ブローティガン、アップダイク•・・。少し昔のアメリカの小説家が、全般的に好きである。
今回はそんな私のお気に入りのアメリカ人作家達の一人、ジョン・チーヴァーの、素晴らしい短編小説を一つ紹介したい。
『泳ぐ人』という題名で翻訳もあり、映画化もされている作品だ。
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真夏のある日曜日。昼過ぎの高級住宅街。
ネッドは友人宅のプールサイドでくつろいでいる。
もう若くはないもののまだ