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療育士に求められる本当の役割とは?効果的な支援と指導のポイント
療育士の仕事は、単に「できないことを教える」「ルールを説明する」「勉強を教える」といった指導にとどまりません。また、療育士の人数が多ければプログラムが成り立つわけではなく、個別にフォローしないと全体の流れが崩れるという考えも正しくありません。療育は、人生のプログラム全体の中で進められるものだからです。
療育士は、子ども一人ひとりの今の課題だけを見るのではなく、将来全体の状態を把握しながら、適切な支援方法を見つける役割を担います。これは、名医が患者の体全体を診断しながら治療法を決めるのと同じ考え方です。例えば、がん治療では、腫瘍を取り除くだけでなく、心臓や呼吸器に問題がないかを確認しなければなりません。もし基礎的な健康状態が整っていなければ、手術をしても他の部分が悪化し、命に関わる可能性があるからです。療育も同様に、子どもの特定の課題だけを改善するのではなく、全体のバランスを見ながら適切な支援を行うことが重要です。
また、古い車に新しいエンジンを載せても他とのバランスがとれなくて、正常に動かないように、子どもの発達も一部分だけを強化しても効果的ではありません。全体の成長を考えながら支援を行うことで、本来の力を最大限に引き出すことができます。
これは、個別の支援だけでなく、集団での療育にも同じことが言えます。複数の子どもを支援する場合、それぞれの特性にこだわりすぎると、全体の方向性を揃えることが難しくなります。むしろ、個々をバラバラに考えるのではなく、一つのまとまりとして捉え、統一感を持たせることで、よりスムーズな療育が可能になります。療育士は、全体のバランスを考えながら、一人ひとりに最適なサポートを提供することが求められます。
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療育における力の使い方と指導のポイント
療育の現場では、力の使い方や相手への接し方が重要になります。例えば、児童の力に合わせて少し負けるように力を使うと、力を出している児童はバランスを崩し、結果的に受けている指導員(療育士)が優位に立つことができます。これは、継志館での療育の指導において、重要な指導のポイントのひとつです。
また、「何をしなければならないのか」という信念をしっかり持つことで、子どもたちは自然と指導に従いやすくなります。ただし、これには条件があります。考える力が十分に発達していない子どもには、早い段階から適切な指導が必要になります。この指導は「しつけ」ではなく、習慣づけるという考え方が適切です。
言葉の理解度に応じたアプローチ
子どもが話せる場合は、相手の意図を見抜くためには、集団の行動を10としたときに、3割程度を受け入れながら児童に合わせていくことが大切です。そして、適切に児童にフィードバックをすることで、療育の指導がよりスムーズに進みます。
一方で、言葉でのやり取りが難しい子どもには、より基本的な支援が必要になります。トイレやおむつ交換、身の回りのケアなどは、指導員がサポートしながら、自立を促す形で進めていくことが重要です。
療育士に求められるスキル
療育士が関わる子どもたちは、目で見て学ぶことが多いため、指導員自身が「教え方」を学ぶだけでなく、自ら実践できるスキルを持つことが求められます。例えば、算数や国語、体育、自転車の乗り方、鉄棒、会話、箸の持ち方など、日常生活や学習に必要なことを療育士自らできるようにならなければなりません。
さらに、こうした指導行為そのものが、子どもたちのコミュニケーション能力を育てる機会になっていることに気づくことも大切です。療育士は単に理論を知るだけでなく、子どもたちの成長を支える「表現者」としての役割を果たす必要があります。
児童を自然に導く方法
話せる子どもに対しては、気づかれずに誘導する技術が必要です。この技術は、「引っ張る」のではなく「押す」ことを意識すると効果的です。具体的には、子どもが「やりたい」と言ったときにすぐに手を引くのではなく、少し待ち、実際に体が動いたときに背中をそっと押してあげることが大切です。逆に、すぐに引っ張ると、子どもが警戒して後ずさりしてしまうことがあります。
自然な指導を身につける
療育の理論や言葉を学ぶことは大切ですが、それ以上に、子どもたちが自然に行動できる環境を作ることが重要です。「○○までにこれをやらなければならない」と焦ると、子どもはその意図を察知し、逆にうまく伝わらなくなることがあります。自然な流れの中で、無理なく指導を進めることが、より効果的な療育につながります。
児童への支援方法
療育士は、児童の行動や発言に適切に対応し、成長を促す役割を果たします。たとえば、以下のような具体的な指導が有効です。
自立を促す指導
例:「先生、ハサミを取って」→「自分で取って片付けてください。」
自分でできることは自分で行わせ、依存を防ぎます。もし守れなかった場合には、一時的に道具の使用を制限することで、行動の変化を促します。態度で示す指導
知的発達に課題がある児童には、言葉よりも態度で伝えることが効果的です。指示を減らし、具体的な動作で手本を示すことで、児童は自然に行動を学びます。児童の自主性を大切にする
何かをやりたいと言った時にすぐに手を引いて導くのではなく、児童自身が行動を起こすのを待ち、適切なタイミングで背中を押すことが重要です。過度に指導者が介入すると、児童は指示待ちの姿勢になってしまうため、適度な距離感を保つことが求められます。行動を止めるのではなく、経験させる
療育では、児童が経験を通して学ぶことが重要です。悪いことをする前に止めるのではなく、あえて経験させたうえで適切に指導を行うことで、児童自身が行動を振り返る機会を持つことができます。
療育士に求められるのは、理論を学ぶだけでなく、実際に子どもたちと接しながら、自然な形で指導を行うスキルです。子どもたちの行動をよく観察し、適切なアプローチを選択することで、より効果的な療育が可能になります。
まとめ
療育士の役割は、単なる指導にとどまらず、子どもの人生の将来に及ぶ全体的な発達を支えることにあります。療育士は、子どもの個別の課題だけでなく、全体のバランスを見ながら適切な支援を行うことが求められます。力の使い方や言葉のかけ方を工夫し、自然に子どもを導くことが大切です。また、職員間の連携や具体的な指示を通じて、より効果的な療育を実現します。療育士は、理論を超えた「表現者」として、子どもたちの成長を支援する役割を果たします。