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加速主義

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2023年12月の記事一覧

八木雄二『神を哲学した中世』読んだ

八木雄二『神を哲学した中世』読んだ

中世哲学入門シリーズ。

読みやすくてよかった。

形而上学や論理学的なこと、というか悪い意味でのスコラ学的なところに深入りしないで、どうしてあのような煩瑣な理屈を必要としたのかに力点が置かれている。

したがって、中世の人々の思考に入り込むことになる。大衆がふつうに神の実在を信じていたこと、修道院や大学の学者たちの理屈の組み立て方など。

なぜ中世の人々の思考を学ぶ必要があるかというと、あの時代

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山内志朗『中世哲学入門』読んだ

山内志朗『中世哲学入門』読んだ

ぜんぜん入門書じゃない入門書。むりやり2回読んだ。

今年の初夏にラテン語の勉強を再開したとき、ちょうどよいタイミングで山内志朗先生のシラスのチャンネル『ラテン語が一瞬で身につく夢の哲学チャンネル』略して夢ラテが始まったのである。

私は山内先生はお名前しか存じ上げなかったのだが、朴訥とした語り口に一瞬で魅せられてしまい、そのときちょうど発売された『中世哲学入門』を購入したのである。

しかし日本

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井筒俊彦『イスラーム哲学の原像』読んだ

井筒俊彦『イスラーム哲学の原像』読んだ

ヨーロッパ中世について知り始めると、やはりイスラーム世界についても学ばなくてはならないような気がしてくる。

日本においてイスラーム哲学の結節点となったのは井筒俊彦先生であるらしいので、先生の著作の中でもいちばん読みやすそうなのを手に取ってみたのである。

これは講演集であるからとても読みやすい。

イスラームの哲学というか思想において非常に重要なのは、アヴィセンナでもなければ、アヴェロエスでもな

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伊東俊太郎・村上陽一郎・広重徹『思想史のなかの科学』読んだ

伊東俊太郎・村上陽一郎・広重徹『思想史のなかの科学』読んだ

科学史とか科学哲学について読んでいると、伊東俊太郎氏の著書を読んでみたくなり、これが一番とっつきやすそうだったので図書館で借りてきたのだ。

古代ギリシャから20世紀まで科学のあり方をおさらいしたとても良い本だ。自然科学は普遍性があるといっても、それは科学の法則が普遍的であるというだけのことで、その成り立ち、社会での受容や利用のされ方などには歴史的であったり、地域に固有のものであったりするわけであ

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浅田彰『歴史の終わりを超えて』読んだ、そして落合信彦大先生のこと

浅田彰『歴史の終わりを超えて』読んだ、そして落合信彦大先生のこと

積読解消シリーズ。

Amazonに購入履歴がなく、もはや何年積んでいたのかもわからない。少なくとも20年は経っていると思われる。

ときは1990年代前半、浅田彰が世界の知識人にインタビューするというSAPIOの連載企画が初出である。

フランシス・フクヤマ、サイード、ジジェク、ボードリヤール、JGバラード、リオタール、ヴィリリオ、柄谷行人など、いかにもな面子なのが微笑ましい。
今なら各方面から

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リチャード・ルーベンスタイン『中世の覚醒』はすぐれた哲学入門書であり歴史書だ

リチャード・ルーベンスタイン『中世の覚醒』はすぐれた哲学入門書であり歴史書だ

一部で絶賛されている『中世の覚醒』を読んだのだ。非常に面白かった。

原題はアリストテレスの子どもたち、みたいな感じだ。

レコンキスタの開始とともにトレドやシチリアにて、西洋人はアリストテレスを再発見する。そしてアリストテレスがいかに受容されていったかの物語であり、中世哲学の入門書として最適である。

歴史的背景を抜きにして神学論争だけ紹介されても困るのだが、本書はそのあたりも含めて解説されてい

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