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もし「一冊の本だけを売る」ならどれにする?

少し前に↓が発売されました。

小学館文庫の「銀座で一番小さな書店」です。

著者の森岡督行(もりおか よしゆき)さんは、神保町の古書店で修業を積み、茅場町に自身の本屋を開いた方です。2015年5月に「一冊の本だけを売る」を新たなテーマに掲げ、銀座の鈴木ビルへ移転しました。

お店の広さは五坪。一冊の本を一週間だけ販売するのが基本コンセプトのようです。つまり翌週に来たら違う書籍と出会える。さらに、そこから派生した展示も楽しめるとのこと。

刺激的なアイデアです。

もし自分が「一冊の本だけを売る」なら、どれにするだろう? 考えてみました。

真っ先に浮かんだのは二冊。まずは何度か紹介させていただいている↓です。

2011年の出版で版元は飛鳥新社。著者は翻訳家の頭木弘樹(かしらぎ ひろき)さんです。

2014年に新潮文庫のラインナップへ加わりました。大抵の新刊書店で入手できるはず。それでもOKです。ただできれば単行本で読んでほしい。

理由はふたつ。ひとつは装丁がカフカ文学の持つ不穏な雰囲気、暗さ、人生への絶望度をダイレクトに体現していること。そしてだからこそ、より栄養価や言葉の純度が高いと感じられる。これがふたつめの理由です。

職場では、こちらを自分の担当する哲学書のコーナーへ置いています。海外文学ではなく。矢尽き刀折れ、救いを求めて本屋へ辿り着いた人の目に留まりやすい棚だと思ったからです。かくいう私自身、カフカの挫折を繰り返す生き方やネガティブな思考に触れ、逆説的に助けられた経験が何度もあります。

最初はまったく売れませんでした。いまでは定期的に手に取っていただいています。ありがたき幸せ。書店員冥利に尽きます。

もう一冊はこちら。

2009年の出版で版元は汐文社(ちょうぶんしゃ)。著者は2015年に亡くなったジャーナリスト・後藤健二さんです。

舞台は2001~2002年のアフガニスタン。米軍の誤爆で住む家を壊され、兄を失った少女ミリアムの物語が軸に据えられています。

長く続いたタリバン政権は、女性が学校で学ぶことを禁じていました。連中の支配は終わったにもかかわらず、その考え方に囚われている人たちが少なからず存在したようです。

通学中の女の子たちが襲われたり、学校が爆破されたりする事件が増えてきています。
女の子が学校に通うことを、いまだに認めない人たちのしわざです。彼らは、女性は家にいるべきだ、女の子が学校に行くのはイスラム教の教えに反していると言うのです。(でも、そんなことはイスラム教の教えが記してあるコーランという本には、どこにも書いていません。)

「もしも学校に行けたら」 後藤健二 汐文社 121P

文字サイズが大きく、難しめの漢字にはルビが添えられています。ジャンルとしては児童書。しかし老若男女すべての人に知ってほしいエピソードが詰まった一冊です。

どちらの本も普遍的というか、いつの時代にも読んで胸を打たれる方がたくさんいらっしゃるはず。そして購入したら、きっと何度でも開きたくなる。そんな「縦糸の思考を促す座右の書」になり得る名著を見出し、noteで紹介していきたいと考えています。

お求めは(なかなか置いていないかもしれませんが)ぜひお近くのリアル書店にて。皆さまの「一冊の本だけを売る」場合のチョイスも教えていただけると嬉しいです。

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