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ハードボイルド書店員と「#読書の秋2022」
「読書の秋」が始まりました。
ただ世の中は相変わらず落ち着かない雰囲気です。社会情勢は不安定で寒暖差が激しく、物価も高い。ゆったり本を読もうという状況ではないかもしれません。
私の職場も同じです。慢性的な人手不足。12月から正月明けまでの繁忙期を乗り切れるのか疑問が拭えない。まあやるしかないんですけどね。
こういう現状で本に何を求めるか? 疲れや現実の煩わしさを忘れるために、ただただ没頭できるマンガやエンタメ小説を選ぶ人が多い気がします。でもあえて難解な専門書や長い古典文学を読むのもアリだし、己を磨くために未知のジャンルへ挑んでもいい。
「本は読みたい時に読みたい本を読む」これが基本だと考えています。
では私はいまどんな本を読みたいか? 読んでいるか?
その答えは↓です。
司馬遼太郎「竜馬がゆく」全8巻。読むのは約5年振り。もうすぐ6巻に取りかかります。
前半はまさに青春小説。家族との関係性、上京、剣術修業、ライバルとの出会い、そして淡い恋愛模様。中盤からは師・勝海舟の導きで覚醒し「佐幕か討幕か」「攘夷か開国か」という単純な二元論を超えた独自の改革を押し進めていきます。
平和ボケした古い体制の打破を願い、かといって天誅の旗を掲げることで暴力を正当化する輩にも与しない。公的使命としては欧米に負けぬ強い日本を築くために開国を企て、私的な夢では大好きな船に乗って自由に海を駆ける未来を望む。誰もが読みながら竜馬に少なからず我が身を重ね、応援したり共感したり背中を押されたりするはずです。
ただ、タイトルを「龍馬」ではなく「竜馬」としている点に、著者がフィクション性を仄めかしているという指摘をしばしば目にします。たしかに一理ある。もしかしたら坂本龍馬はこういう人ではなかったかもしれない。史実ではないエピソードが多く盛り込まれているかもしれない。
一方で、龍馬や勝海舟、西郷隆盛らは実在しました。関連書籍も多く出ています。本当のことを知りたかったらそういう本を読めばいい。でも関心が沸かなければ、そもそも「そういう本を読もう」という発想が浮かばない。
つまり「竜馬がゆく」は「坂本龍馬や明治維新について知るための本」ではなく「それらについて学びたくなるための本」であり、且つ「それらに触発された新たな己を見出すための本」なのです。ザックリ言えば「もっと本を読みたくなる本」でしょうか。
いまのちょっと疲れた我々にいい意味で何かの転機をもたらしてくれる。そんな可能性をひしひしと感じませんか? 私は感じました。そして間違いではなかったです。
竜馬は組織を恃まず、個で動く。幕臣とか志士という立ち位置に対して色眼鏡を用いず、双方の優れた人たちから積極的に学ぶ。物事を白か黒かで分けない。一時の情に流されず、リアリズムの冷厳なロジックにも堕さない。安易に信じない。けど信じる。
ウクライナ情勢や日本の政局に対し、私も同じような考えを抱いています。「竜馬がゆく」のおかげなのか、たまたま一致したのかはわかりません。しかし読みながら自信を持てました。少なくとも「竜馬」は俺の味方だと。
何となく日々にモヤモヤしている人。何かを変えたいけどどうしたらいいかわからない人。孤独を感じている人。本を読みたいけど何から読んだらわからない人。すべての方々へ「竜馬がゆく」全8巻を全力でオススメします。
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