「直木賞」とは無縁の名作たち
皆さんは「無冠の帝王」と聞いたら誰を思い浮かべますか?
プロ野球だったら清原和博選手や前田智徳選手、K-1ファイターだったらマイク・ベルナルドやジェロム・レ・バンナ。プロレスラーだったら、かの「大巨人」アンドレ・ザ・ジャイアントでしょうか。
私が真っ先に連想するのはミステリィ作家・島田荘司です。
名前を知らない人も「占星術殺人事件」という題を聞けば「ああ」となるはず。本当にすごい作品でした。探偵役を務める御手洗潔(みたらい きよし)は私の中で「パーフェクト・ヒューマン」のひとり。短編集「御手洗潔の挨拶」もカッコよかったです。ぜひ。
直木賞候補には二度なりましたが受賞はしていません。私の中で島田さんは伊坂幸太郎や伊東潤と並んで「なぜこの人が獲ってない?」のひとりです。文体は純文学で通るほど緻密なのにリズムはジャズセッションみたいに軽やか。構成もかなり斬新で、その意味では「異邦の騎士」もかなり度肝を抜かれました。
いわゆる「本格ミステリィ作家」では綾辻行人(あやつじ ゆきと)や安孫子武丸(あびこ たけまる)といったレジェンドも直木賞とは無縁。やはり先週「直木賞の思い出 ACT2」で書いたように、主要文芸誌に作品を載せていないと選考対象にならないのでしょうか? 同じミステリィ系でも「小説すばる」で読んだ記憶のある東野圭吾や京極夏彦、辻村深月は獲っていますし。
綾辻さんといえば、何といっても「館」シリーズです。特に「十角館の殺人」のあの一行と結末は忘れられません。アガサ・クリスティー「そして誰もいなくなった」を併せて読むとなおいっそう世界観を楽しめます。
クリスティーは学生時代にハマりました。ミス・マープルシリーズもポワロシリーズもそれ以外も。マープルでは「予告殺人」「パディントン発4時50分」、ポワロでは「ABC殺人事件」「アクロイド殺し」「オリエント急行の殺人」などが傑作として名高いです。私のオススメは「ひらいたトランプ」。ブリッジのルールを知らなくても楽しめました。短編では「スズメバチの巣」が大好きです。
ちなみにこれらの本をググったり書評を見たりすると「ネタバレ」にぶつかる可能性が高いのでご注意くださいませ。お求めはぜひお近くの書店で。疲れたときはロジカルなミステリィに没頭して理不尽な現実を忘れましょう。