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「ABC w/」への期待と「発酵する日本」の思い出

4年前、表参道にある青山ブックセンターさんが作った写真集「発酵する日本」を購入しました。

装丁がカッコいいので、定期的に眺めています。再読時に読書メーターへ書いたレビューを紹介させてください。

再読。全国で活躍する微生物の命の沸騰とその助けを借りて各地の食文化を守る方々の笑顔を収めた写真集。かつての日本には手軽に栄養を摂取できる肉食文化がなかった。それが結果的に穀物の堅さ及び植物の毒や繊維質を微生物の力で分解し、栄養源に変える知恵を育んだ。ある時期にしか入手できぬ食材を年中食べられるようにするための保存にも発酵は役立った。肉食も冷蔵&冷凍庫も当たり前になった現代では、ここで紹介されている文化は生活における必要性に留まらぬ何かを我々に投げ掛ける。日本人が迷った時に立ち戻る「基本姿勢」のような何か。

クールなBGMを楽しめるスタイリッシュな空間に良書を置いてくれるだけで素晴らしい。しかしそこに留まらず、自ら本を企画し、出版する。歌い手が理想の音楽を追い求め、作詞作曲やプロデュース業へ進出していくように。

一見「新しい本屋の形」と映りますが、元々この国の書店はそういうものでした。来年の大河ドラマの主人公・蔦屋重三郎がオープンさせた「耕書堂」も本の企画、制作、販売をおこなっています。原点回帰。ここに本屋が生き残るヒントの一端を感じました。

版元が作った本を仕入れて売るだけではなく、自分たちで宿願の一冊を生み出し、お客さんへお届けする。本を出版している書店チェーンはあります。名著がないわけでもない。しかし「発酵する日本」ほどのスペシャル感を纏い、かつ所有する喜びに浸らせてくれるものには出会えていません。だから期待しかない。

今回の新出版プロジェクト「ABC w/」では、企画段階から印刷会社やデザイナーに入ってもらい、横並びで制作しているとのこと。

楽しみにしています。

作家として面白い本や文章を書くことでお返し致します。大切に使わせていただきます。感謝!!!