「本を読む気がしない」方へオススメの2冊
連日暑いですね。
夜中に目が覚めることが多く、おかげでボーっとしがち。せっかくの休日も無為に時間を過ごしてしまいます。
読書界隈では「こういう時こそ部屋を涼しくして、普段は読めない大作に挑もう」みたいな話が出ているようです。それこそ話題沸騰のガブリエル・ガルシア=マルケス「百年の孤独」(新潮文庫)とか。
たしかにそういう考え方もあります。ただ、私も全14巻のプルースト「失われた時を求めて」(岩波文庫)に取り掛かっているからわかるのですが、いまの状況だと集中力が持続しにくい。そもそも本を読もうという気がなかなか起きません。
むしろサラッと味わえて、なおかつ余韻が心に残る。少しの間だけでも現実の諸々を忘れられる。そんな作品こそ猛暑の夏に相応しい気がしました。
何度か紹介していますが↓はどうでしょう?
梶井基次郎「檸檬」にイラストレーター・げみさんの絵が添えられた一冊です。
角川文庫で初めて「檸檬」を知ったのは10数年前。たしか同僚に勧められたのですが、さほどの衝撃は受けませんでした。評価の確定した名作ゆえ「面白くなかった」という感想が己の未熟さを露呈するようで口に出せなかったのを覚えています。
しかし数年後にこちらの本でイラストと併せて読んだら、一気にのめり込みました。たとえとして適切かはわかりませんが、トマトと一緒に食べることで初めてモッツァレッラチーズの美味しさを認識できたような。
げみさんに感謝です。
レモンは疲労感を軽減させるクエン酸を豊富に含むことで知られています。こちらの「檸檬」にも、あるいは「読む&眺めるクエン酸」的な効果を期待できるかもしれません。
もう一冊はこちら。
芥川賞作家・中村文則さんの賞編集「惑いの森」です。
裏表紙いわく「著者史上もっともやさしい作品集」とのこと。何度か読みましたが、ここでの「やさしい」には「難解ではない」と「読んだ人の心をそっと癒す」のふたつの意味が込められていると感じました。
50の物語のなかには、ただただ笑える話もあります。中村さんの他の著作を連想させるものも。私がいちばん好きな収録作は「雨宿り」です。よろしければ、お近くの本屋で涼みながらチェックしてみてください。面白かったらぜひご購入を。
マイペースで8月を共に乗り切りましょう。