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【くらしの東洋医学 鍼灸で元気に】便秘の鍼灸治療と食養生

千葉市内、千葉駅すぐ、女性と子ども専門鍼灸院『鍼灸 あやかざり』です。いつも【くらしの東洋医学 鍼灸で元気に】の記事をお読みいただき、ありがとうございます。

人にはなかなか言いづらい悩みとして、「便秘」を抱えている女性は少なくありません。
インターネットに公開されている各種調査においても、「便秘」は女性の体調の悩みの上位にあがっています。
ひとことで「便秘」といっても、腹の張りが強いタイプ、腹は張らないが便が出ないタイプ、便意はあるが排便量が少なくすっきりしないタイプ、精神的なストレス負荷で便意が消えてしまう、など実にさまざまです。

そこで、今回は、「便秘」についての症状や原因、治療方法、食養生について、西洋医学・東洋医学の両面からみていくことにしましょう。
本文中では、東洋医学における「便秘」についての考え方、鍼灸治療によるアプローチについても取り上げます。

では、どうぞ最後までお付き合いください。


1.「便秘」とは

一般的には、便秘とは、なんらかの原因で排便が障害されてしまい、排便回数が減ったり十分に排泄しきれない状態のことをいいます。
便通は、人によって回数も量もまちまちのため、たとえば週に2回程度でも残便感がなく排便後にすっきりとした満足感があり、その人にとってふつうであれば便秘とは呼びません。
便秘になると、食べた物が腸内に長期間とどまってしまうため、水分が吸収されてよりいっそう排便が困難になります。
2~3日に1回程度、ひどくなると週に1回も便通がないこともあります。
このような状態で不快感を伴うようなら、なんらかの治療が必要とされています。
便秘がつづくと心にもストレスを与え、QOL(クオリティ・オブ・ライフ:生活の質)を低下させると言われています。
食欲不振になったり倦怠感に悩まされたりすることが増え、集中力の低下やイライラがつのり、精神的に不安定になることもあります。
さらに重症化した場合には、腸閉塞などの重い病気をひき起こすこともあります。
また、腸内環境が悪くなるため、肌荒れのほか、免疫力が低下して様々な病気を発症する原因にもなります。
女性にとっては、健康と美容のためにも、便秘にならない生活習慣をこころがけるとよいですね!!

2.「便秘」の原因

慢性的な便秘の原因は、大腸や直腸の働きの低下とされていますが、次のような生活習慣によって引き起こされます。

●水分不足、食物繊維不足:便が固くなる
●極端な少食:便の量が減る
●不規則な食生活、ストレス:自律神経が乱れて胃腸機能が低下
●便意の我慢:便意を感じにくくなる
●運動不足:腹筋が弱り、便を押し出す力も弱くなる
●動物性食品の摂取が多い:悪玉菌を増殖させる
●柿やお茶に含まれるタンニン:便が固くなる

女性は生理前に便秘になりやすくなります。
これは、黄体ホルモン(プロゲステロン)の影響とされており、大腸の腸壁から水分の吸収が促され腸のぜん動運動が抑制されるためです。

市販の便秘薬を使う場合には、大腸を刺激するタイプの薬を常用すると大腸が徐々に反応しなくなってしまい、かえって便秘になってしまうことがあるので注意が必要です。

慢性の便秘には、大腸がんやクローン病などの疾患が原因となっている場合もありますので、気になる症状がある場合には、一度、医療機関を受診して検査を受けておくのが安心です。

3.西洋医学によるアプローチ

便秘の症状で医療機関を受診した場合、症状によっては大腸内視鏡検査やレントゲン検査を行うことがあります。
その結果、原因となる疾患がある場合はその病気の治療が優先されます。
疾患がなければ生活習慣を改善することが一番です。

便秘の治療に有効な生活習慣には以下のようなものがあります。
●水分を意識して摂取する
●1日3食規則的な食事を心がけ、特に朝食はしっかりと食べる
●食物繊維を多く摂る
●ウォーキングなどの運動を習慣にする

生活習慣を変えても症状が改善しない場合や受診時の状態によっては、便を軟らかくする薬や腸の機能を整える薬などが処方されます。
医師によっては、漢方薬が使われる場合もあります。

便秘の薬はいろいろな種類のものが市販されていて、気軽に使うことができますが、慢性的に使用すると徐々に効かなくなってきてしまい、結果的に便秘を悪化させてしまうという、悪循環に陥ることがあります。

4.東洋医学的にみる便秘の原因

東洋医学における、便秘の病名には、「陽結」「陰結」「脾約」「風秘」「気秘」「熱秘」「寒秘」「寒秘」「湿秘」などがあります。
では次に、どのようにして、「便秘」の症状がおこるのか、東洋医学的な原因を探っていくことにしましょう。

4−1.飲食の不摂生によるもの

身体が体質的に熱傾向である場合、あるいは、油っこいもの・甘いもの・酒類・味の濃いものを長期にわたり食べ過ぎたりした場合には、胃腸に熱が蓄積されてしまい腸の潤いが不足することから、大便が乾燥して排出困難となり、便秘となります。

4−2.感情の乱れによるもの

精神的なストレスに長期間さらされることで、悩み事や心配事で感情が暢やかでなると、身体の循環停滞がおこりやすくなり、消化吸収能力が低下し、糟粕(飲食物の余分な部分)の輸送が上手く行われなくなることから、便秘を起こします。
また、感情の乱れだけでなく、長時間座ったままで運動不足であったりする場合にも同様のことがおこりやすくなります。

4−3.過労と身体的な弱りによるもの

過労や飲食の不摂生、病後・産後・高齢などで身体が弱ると、体内の気血(エネルギーと血液)が不足しがちになります。
気血の不足は、臓腑(東洋医学的な内臓)の働きの低下につながり、特に下半身を中心とする巡りが悪くなることから、便秘をおこしやすくなります。

5.便秘と臓腑の異常

東洋医学では、便秘には、五臓六腑(東洋医学的な内臓)のうち、大腸、脾胃、腎の三つの臓腑の異常が深く関係します。
次に、各臓腑の異常がどのようにしておこるのか、また便秘に対する東洋医学的治療についてみていきます。

5-1.胃腸の熱(熱秘)

東洋医学において、胃は水穀の海、大腸は伝導の官、という呼び名があるように、胃は口から摂取した食べ物を受け入れて下方向に送る働きを、大腸は糟粕(飲食物のカス)を身体の外に排出すする働きを、それぞれ主ります。
胃腸に熱が溜まると、津液が消耗されて、大便が硬く固まってしまうことから、大腸の伝導力が弱まり、便秘をひきおこします。
このタイプの場合、口が渇きやすい、口臭がする、腹が張りやすい、身体が熱い、尿が濃いなどの症状を伴いやすいです。
漢方や鍼灸では、清熱潤腸という治療方法を用いて、熱を冷まし、腸を潤すようにします。

5-2.肝脾の気欝(気秘)

東洋医学では、肝は身体の中の気をスムーズに巡らせる働きを、脾は食べ物を消化吸収して全身に行き渡らせる働きを、それぞれ主ります。
感情の不調和により肝と脾の気が鬱結(ふさがって滞る、停滞する)すると、肝と脾の上記の働きが低下して、食べ物の輸送機能が失調することから、便意はあるが排出ができなくなり、便秘をひきおこします。
このタイプの場合、腹の張り、摂食量の減少などの症状を伴いやすいです。
漢方や鍼灸では、順気行滞という治療方法を用いて、気欝を解消するようにします。

5-3.肺脾の弱り(虚秘-気虚)

気が不足した状態、つまりエネルギー不足の状態を東洋医学では気虚といいます。
東洋医学では、肺は呼吸とともに気を下方向におろす働きを主り、大腸はその肺の働きと連携して、糟粕(飲食物のカス)を身体の外に便として排出します。
肺の気が弱ると大腸の輸送力も弱まるため、便意があってもいきまないと排便することができない、気虚タイプの便秘になります。
また、脾の気が弱ると、食べ物を消化吸収して全身に行き渡らせる働きが低下するため、同様の便秘をひきおこします。
このタイプの場合、身体のエネルギー不足が背後にあることから、排便時の自汗や息切れ、および排便後の疲労感を伴いやすくなります。
漢方や鍼灸では、益気潤腸という治療方法を用いて、身体のエネルギー不足を解消して体内の輸送力を高め、大便を通じさせるようにします。

5-4.血虚(虚秘-血虚)

血が不足した状態を、東洋医学では血虚といいます。
血は身体を潤す働きをすることから、血の不足は大腸の潤い不足につながり、便秘が起こりやすくなります。
このタイプの場合、血の不足が背後にあることから、顔色につやがなく、めまいや動悸しやすい、唇の色がうすい、爪が薄いなどの症状を伴いやすいです。
漢方や鍼灸では、養血潤燥という治療方法を用いて、身体の渇きを改善させて、便を通じさせるようにします。

5-5.身体の冷え(冷秘)

東洋医学では、身体を温める作用を温煦作用といい、腎が深く関与します。この温煦作用が低下した状態を陽虚といい、冷えが身体の内部から生まれやすくなり、それにより腸の伝導力が弱まることで、便秘が起こりやすくなります。
このタイプの場合、寒がり、腹部の冷え、手足が冷えやすい、足腰がおもだるいなどの症状を伴いやすいです。
漢方では、温陽通便という治療方法を用いて、身体の冷えを改善させて、便を通じさせるようにします。

6.鍼灸によるアプローチ

ここまで、東洋医学的にみる便秘の原因、便秘と臓腑の異常についてみてきました。
次に、東洋医学の手法のひとつである、鍼灸による便秘に対するアプローチについてみていきましょう。

「便秘は鍼灸で治療できるのか?」と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、便秘対しても鍼灸によるアプローチが可能です。

一般的な投薬治療を受けている方の中には、『投薬を毎日続けることにストレスを感じる』『薬が効かなくなってきたように感じる』『薬に頼らずに根本的に便秘を解消したい』と考えていらっしゃる方も多いかもしれません。

一方、鍼灸治療の場合には、先の章でご紹介してきたような「便秘の症状を引き起こしている根本の原因」をみつけだし、それを正すことによって、様々な症状を取り除くとともに、便秘がおきにくい身体づくりをしていきます。

鍼灸で一度の施術に使うツボは1~3つで、施術時間は休憩含めて1時間程度です。
なお、鍼をする前には、予め、詳しく問診をする必要があり、その症状だけでなく、他にもある様々な身体の症状(愁訴、随伴症状といいます)、その人の体質や体格、その時の体調、施術をする時の季節、天気なども考慮する必要があります。

その上で、その人の身体全体の状態(脈、舌、顔色、身体の熱冷のかたより、身体の緊張、手足ツボの反応など)から、トータル的にみて、最も原因にふさわしいツボを選び鍼灸の施術をします。
そのため、便秘の症状や原因が同じでも、その時々で使用するツボも変えることが必要となります。

なお、便秘はWHO(世界保健機構)においても鍼灸治療が 適応可能であるとされている疾患のひとつです。

7.便秘と食事

これまでの【くらしの東洋医学 鍼灸で元気に】の記事の中でも、便秘に効果のある食材を取り上げています。

●「もも」から生まれる食欲と健康!
●真っ赤な美味しさ『イチゴ』のヒミツ!
●「落花生」で活き活き元気に!
●さつまいもで美ボディ!?

これらのまだ読んだことがない方は、ぜひ、一度お読みください。
また、このほかにも効果的な食材はたくさんあります。

すももやりんごなどのくだものは水溶性の食物繊維を豊富に含んでいますが身体を冷やす性質もあるため冷え症の方は控えめにして、ねぎやニラなどのようにからだを温める性質を持つ野菜がおすすめです。シナモンや生姜といった香辛料もからだをあたためて腸の動きをよくしてくれる味方です。
逆に、体内に熱が籠もって便が乾燥しやすい方には、バナナやヨーグルトなどのようにからだを冷やす食材が有効です。
はちみつ、ごま、長芋などは体質に関係なく、便秘の改善に有効です。

からだにいいと思って食べている食材が体質に合わずに症状を悪化させてしまうこともあるので、気になったら食材を変えてみたり、一時的に摂取しないようにしてみると、以外に気持ちのよいお通じがあるかもしれませんよ。

便秘は生活習慣も大きく影響していますので、できることから見直していきましょう。

8.まとめ

今回は便秘について、原因や対処法、予防方法について解説をしました。
東洋医学においても、便秘に対する治療が可能なことはご理解いただけたでしょうか。
鍼灸治療によって便秘を改善して、毎日を、気持ちよく楽しく過ごしませんか?

今回はここまでとなります。最後までお読みいただきまして、ありがとうございます。

それでは、鍼灸でからだも心も元気になりましょう!

鍼灸 あやかざり
千葉駅5分 完全予約制 女性と子ども専門の鍼灸治療院
千葉県 千葉市中央区新町1−6 ラポール千葉新町202
TEL:070-8525-6132


画像の出典:https://www.photo-ac.com/

参考資料:WEB版 MSD マニュアル(家庭版)、東方栄養新書、食材効能大事典、東洋医学の教科書、中医内科学

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