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感性が導く、無言の世界。写真集はあらゆる言語より豊かに語る|世界を読む技術
東京・吉祥寺にある写真集専門書店「book obscura」。井の頭公園のすぐ裏手に位置し、初めて写真集を手に取る若い客も多いという同店で、「写真集を知る」展と題された企画展が4月、5月と続けて開催された。
店主・黒崎由衣さんによる序文は「写真集は私にとって読み物だ」という一文から始まり、「写真を撮る参考書でもなく、イメージビジュアルでもない。小説や映画や漫画と同じように観て、捲って、その世界観
江戸戯作はミステリー。問われているのは「わからなさ」への態度だ|世界を読む技術
江戸時代の識字率は、一説によれば80%を超えて当時世界一の水準だったと言われている。そんな江戸時代後期の庶民が楽しんでいたとされるのが「戯作」と呼ばれる文学。今回お話を伺った國學院大學文学部教授の中村正明さんはこうした戯作、中でも黄表紙、滑稽本と呼ばれる、いわゆる庶民文学を研究対象にしている。
同じ本を読んでいても、そこから受け取れる情報の深さや抱く感情は人それぞれ。実り多き読書には、当然ながら
過去現在未来、美しさをめぐる旅|平安の装束|蒐集、それは研究の始まり
これは平安時代の貴族が着ていたとされる装束。映画やテレビドラマで目にすることはあっても、実物は神社などで神職の人が着ているもの以外、あまり見かけない。知らず知らずのうちに背筋が伸びた気がするのは、体を流れる日本人としてのDNAがそうさせるからだろうか。
國學院大學神道文化学部4年の岡﨑良介さんは、こうした平安装束のコレクターだ。大学進学後、アルバイトで貯めたお金のほぼすべてを投じて収集を始めた。
この世界に驚き続けるために|室外機のホース|蒐集、それは研究の始まり
連載3回目となる今回は、渋谷ストリームで不定期開催されているカルチャーイベント「SHIBUYA SLOW STREAM」のディレクター・熊井晃史さんにご登場いただく。渋谷にキャンパスを置く國學院大學と熊井さんは、いわば「ご近所さん」の関係。これまでにもいくつかの接点があった。直近では、伝承文学を研究する伊藤龍平教授と「渋谷に、ヌシは可能か?」というトークイベントを企画し、その様子をブックレットにま
もっとみるビキニパンツの「鬼」がいざなう歴史沼|元三大師のお札|蒐集、それは研究の始まり
中心に大きく描かれるのは、鬼にも悪魔にも見えるキャラクター。主に天台宗のお寺で頒布される「元三大師のお札」には、家の出入り口などに貼ることで、魔除けの効果があるという。ありがたいものでありながら、どこか親しみを感じさせるデザイン。収集したくなる気持ちもなんとなく分かる。
今回お話を聞いた比企貴之さん(國學院大學研究開発推進機構 校史・学術資産研究センター 助教)も、最初は「絵柄の面白さに惹かれて
研究と実践の往還こそ使命であり喜び|町田樹|私が学ぶ私的な理由
2014年ソチ・オリンピックに出場した日本を代表するフィギュアスケーターの一人、町田樹さん。同年12月に競技者を引退し、セカンドキャリアとして選んだのは研究者の道でした。2020年10月に國學院大學人間開発学部に着任し、2024年4月からは准教授として活動しています。
フィギュアスケートや新体操といった芸術的側面を持つスポーツを「アーティスティックスポーツ」と名付け、経済学、法学、社会学、芸術学
学問こそが一番のエンタメである|バラエティプロデューサー・角田陽一郎|私が学ぶ「私的な」理由
学問こそが一番のエンタメである——。そう言い切るのは、フリーランスの「バラエティプロデューサー」として多方面で活躍中の角田陽一郎さんです。
1994年に新卒でTBSに入社。バラエティ番組のプロデューサーとして『金スマ』『からくりTV』などの人気番組を手がけてきました。2016年の退社・独立後は、東京大学大学院に入学し、「文化資源学」という新しい学問を学んでいます。また、自身のnoteや著書など
「忘れ物」を回収し、人生を前に進める|漫画家・うえはらけいた|私が学ぶ「私的」な理由
とてつもない表現に触れると、感動を通り越して体中が「ゾワワ」と震える瞬間がある。漫画『ゾワワの神様』は、そんな「ゾワワ」な表現を作りたくて広告会社に入社した新人コピーライターの物語。さまざまな失敗や先輩クリエイターとのやりとりを経て、主人公は少しずつ成長していく——。
2021年にWeb連載を開始し、このほど単行本化された同作は、広告制作現場のリアルな描写も話題を呼びました。それもそのはず、作者
報道と幸せな職場は両立できるのか|元新聞記者・辻 和洋|私が学ぶ「私的」な理由
國學院大學経済学部の助教として組織の人材育成、マネジメントを研究する辻和洋さん。全学部の教員を対象に学生が選ぶ「ベストティーチング賞」を2度受賞するなど、指導に定評があり、NPO法人「Tansa」でジャーナリストの育成事業にも携っています。
もともとは新聞記者という異色の経歴を持ち、全国を揺るがす大きなスクープの実績も。そのまま志高く報道の道を歩むはずだった辻さんが5年で記者を辞め、再び学びの道