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プロポーザルのリ・デザイン

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#公共建築

設計(者)プロポーザルをリ・デザインする<番外編06>平川市 尾上分庁舎改修工事設計業者選定プロポーザル

設計(者)プロポーザルをリ・デザインする<番外編06>平川市 尾上分庁舎改修工事設計業者選定プロポーザル

私が選定委員を務める設計者プロポーザルが始まっています。

・平川市 尾上分庁舎改修工事設計業者選定プロポーザル
https://www.city.hirakawa.lg.jp/shigoto/keiyaku/2023-0511-1140-13.html

選定委員会の委員長は北原啓司さん(弘前大学)です。北原さんはこれまでも数多くのプロポーザルを手掛けており、私がプロポーザルのリ・デザインを試み

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設計(者)プロポーザルをリ・デザインする#015:参照したい国のガイドライン等と地方自治の原則

設計(者)プロポーザルをリ・デザインする#015:参照したい国のガイドライン等と地方自治の原則

ここから設計(者)プロポーザルの各種書類の書き方に入っていきますが、その前に参照しておきたい国のガイドライン等を紹介します。

・国土交通省 - 入札・契約手法
https://www.mlit.go.jp/gobuild/gobuild_tk6_000085.html

関係書類はおおむねここに揃っています。特に見ておきたいのは、以下の5点です。

この5点は非常に参考になります。プロポーザルの

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設計(者)プロポーザルをリ・デザインする#014:提案者は匿名か顕名か

設計(者)プロポーザルをリ・デザインする#014:提案者は匿名か顕名か

前回は審査委員会の匿名・顕名を話題にしましたが、今回は提案者の匿名・顕名を論じましょう。

これも先に結論を述べると、提案者名は絶対に顕名であるべきで、公平性の観点からも匿名にするのは避けるべきでしょう。これは審査委員も複数回務めた経験からも言い切れます。よく提案者名が明かされていると情実が働いてしまうという懸念を耳にします。ですが、本当にそうなるでしょうか。

審査委員経験者として言えば、他の審

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設計(者)プロポーザルをリ・デザインする#013:審査委員会は匿名か顕名か

設計(者)プロポーザルをリ・デザインする#013:審査委員会は匿名か顕名か

自分が提案する側のプロポーザルの準備があったり、審査委員を務めるプロポーザルがあったりと少し余裕がなく、前回から日が空いてしまいました。

さて、人選等を述べた審査委員会ですが、委員を匿名とするか、顕名とするかについて述べていませんでした。結論から言うと、プロポーザルをリ・デザインする場合は当然顕名にします。これは絶対です。

そもそも従前のプロポーザルで顕名にせず匿名にする理由がわかりません。よ

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設計(者)プロポーザルをリ・デザインする#012:行政の無謬性から脱却する

設計(者)プロポーザルをリ・デザインする#012:行政の無謬性から脱却する

プロポーザルとは行政が一方的に設計者を選ぶのではなく、実はそのプロポーザルに参加するかという時点で行政も選ばれているのだと前回、書きました。だから、互いに選び合うマッチングという意識が重要なのですが、もう1つ、大事にしたいことがあります。

それはプロポーザルを実施中に規定や解釈に不確かさや誤りがあった場合、勇気を出して誤りを詫びて行いを正すことです。行政としては誤りを認めるのは非常に難しいことで

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設計(者)プロポーザルをリ・デザインする#011:互いに選び合うマッチングという意識

設計(者)プロポーザルをリ・デザインする#011:互いに選び合うマッチングという意識

さて、ゴールデンウィークでも、いやゴールデンウィークだからこそ、時間を確保して書き進めていきたいと思います。ここからしばらくは提案書類についてふれていきますが、その前にプロポーザルとはなにであり、なにでないか、私の原点的な立場を示しておきます。

プロポーザルとは、設計者や設計チームを選ぶものであって設計案を選ぶものではありません。

プロポーザルとは、実施する自治体側が設計者や設計チームを一方的

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設計(者)プロポーザルをリ・デザインする<番外編05>2023年日本建築学会文化賞に新井久敏さん(元 群馬県庁)

設計(者)プロポーザルをリ・デザインする<番外編05>2023年日本建築学会文化賞に新井久敏さん(元 群馬県庁)

番外編をもう1本、公開します。2023年日本建築学会文化賞が発表されました。

・日本建築学会 - 2023 年大賞・学会賞・教育賞・著作賞・作品選奨・奨励賞・作品選集新人賞・文化賞
https://www.aij.or.jp/2023/2023prize.html

新井久敏さん(元 群馬県庁)が「設計者選定方式の改善・革新の先導・実践を通じた魅力的な公共建築・まちの創造に資する貢献」で受賞して

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設計(者)プロポーザルをリ・デザインする#010:選定・審査委員会を組織する(誰が委員長を務めるか)

設計(者)プロポーザルをリ・デザインする#010:選定・審査委員会を組織する(誰が委員長を務めるか)

委員会を組織するうえで最後に考えたいのは、誰が委員長を務めるかです。ここまで考えてきた委員会の構成は、図書館のような文教施設・文化施設であれば、1)副市町村長、2)教育長、3)建築士(「つくる」専門家)、4)図書館等に知見を有する方(「使う」専門家)、5)「つくる」「使う」の専門家(その事業の性格・方向性次第)です。この5名のなかから委員長、ついで副委員長を決めていきます。

なお、一般的には最終

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設計(者)プロポーザルをリ・デザインする#009:選定・審査委員会を組織する(専門委員の選出)

設計(者)プロポーザルをリ・デザインする#009:選定・審査委員会を組織する(専門委員の選出)

5名で設計(者)プロポーザルの選定・審査委員会を構成する場合、2名はプロポーザルの実施者である自治体職員から選出しますが、残りの3名はどういう方々に委嘱するのがよいでしょうか。

私がこれまで委員やアドバイザーとして関わってきたプロポーザルは、図書館メインのものでしたので、その経験に基づいて話しましょう。仮に図書館の設計プロポーザルであるなら、1名は図書館に関する知見がある方とすべきです。図書館で

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設計(者)プロポーザルをリ・デザインする#008:選定・審査委員会を組織する(人数と自治体からの委員選出)

設計(者)プロポーザルをリ・デザインする#008:選定・審査委員会を組織する(人数と自治体からの委員選出)

プロポーザルで設計者を選定する場合、その選定・審査の任を負う委員会を組織することが一般的です。その考え方・進め方を整理します。

まず、人数は絶対に奇数にします。偶数にすると、委員間で意見が割れた場合に収拾がつかなくなります。偶数で票が割れたら委員長の判断で決するというのも手段ではありますが、委員長の任を負う方の負担が大きいですし、なんのための委員会かということにもなります。これまでも委員長一任で

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設計(者)プロポーザルをリ・デザインする#007:実績をどう証明するのか

設計(者)プロポーザルをリ・デザインする#007:実績をどう証明するのか

そもそも私は設計実績を求めることに、さほど肯定的ではないのはすでにおわかりいただけたでしょう。若い方々にとって、ただの参入障壁でしかないですし、誰にだって初めてがあります。それに建築士の場合、国家資格であるわけでその認可を受けている以上、もう信頼するしかないという気もします。一級建築士の合格率、ご存知でしょうか。10%に満たないのですよ。ぜひ、以下で詳細を確かめてください。

・国土交通省 - 令

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設計(者)プロポーザルをリ・デザインする#006:誰の実績までを含むのか

設計(者)プロポーザルをリ・デザインする#006:誰の実績までを含むのか

設計者の過去実績を評価するうえで考えておきたいのが、誰の実績までを評価対象に含むのか、です。

特に設計者はJV等のチームと考えると、意匠、構造、設備(電気、機械)、さらにはランドスケープの専門家が集います。提案者の実績を問うわけですから、これらの専門家が経験してきた実績を持ち寄ること自体は歓迎すべきでしょう。ですが、気をつけないと実績の名義貸しのような状態にもなってしまいます。さて、どう考えるべ

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設計(者)プロポーザルをリ・デザインする<番外編03>:長与町新図書館等複合施設設計業務公募型プロポーザル二次審査(プレゼンテーションおよび対話審査)の公開

設計(者)プロポーザルをリ・デザインする<番外編03>:長与町新図書館等複合施設設計業務公募型プロポーザル二次審査(プレゼンテーションおよび対話審査)の公開

番外編は書きやすいと言いますか、筆が進みます。

・長与町新図書館等複合施設設計業務公募型プロポーザル二次審査(プレゼンテーションおよび対話審査)の公開について
https://webtown.nagayo.jp/kiji0034338/

先日行われた二次審査の資料が公開されました。特に動画は大事なアーカイブです。このような公開を実現するべく奮闘してくださった長与町の方々に心から感謝と敬意を捧げ

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設計(者)プロポーザルをリ・デザインする#005:実績はどこまで遡るべきか

設計(者)プロポーザルをリ・デザインする#005:実績はどこまで遡るべきか

#004 では従来の「公共建築」実績を「公共的建築」実績と明示的に読み替えることを述べましたが、ではその実績はいつの実績まで含むのがいいのでしょうか。これもよく問われることです。

これも絶対的なルールがあるわけではないと思いますが、遡っても竣工から25年程度までが妥当と私は考えています。理由は明確で、公益社団法人日本建築家協会(JIA)による

・JIA25年賞・JIA25年建築選
http:/

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