設計(者)プロポーザルをリ・デザインする#011:互いに選び合うマッチングという意識
さて、ゴールデンウィークでも、いやゴールデンウィークだからこそ、時間を確保して書き進めていきたいと思います。ここからしばらくは提案書類についてふれていきますが、その前にプロポーザルとはなにであり、なにでないか、私の原点的な立場を示しておきます。
プロポーザルとは、設計者や設計チームを選ぶものであって設計案を選ぶものではありません。
プロポーザルとは、実施する自治体側が設計者や設計チームを一方的に選ぶものではなく、自治体もまた設計者や設計チームに選ばれるものです。
互いに選び合うという意味で、プロポーザルはマッチングであり、この点を心底真剣に考え、その意識を血肉に変える努力が日々必要です。
このような考えは、これまで設計・実施に関わってきた設計(者)プロポーザルの経験を通して育んできましたが、2022年度に実施した「長与町新図書館等複合施設設計業務に係る公募型プロポーザル」で初めて「マッチング」という言葉を要項に盛り込めました。
一方的に選んでいるのではない、このプロポーザルに参加するかどうかを設計者が決める段階で、実は自治体はすでに選ばれているのだ(同時に相当数の設計者に選ばれていない)という事実を正確に理解することは重要です。
ちなみに一級建築士の登録者数と建築士事務所及び建築士登録状況をご存知でしょうか。
2022年4月1日のデータでは、一級建築士の登録者数は37万5084名です。建築士事務所及び建築士登録状況は7万3036所・名です。あくまで理論値ですが、この数字は脳裏に刻んでおきましょう。自治体が公告するプロポーザルの顧客数の最大値がこの数字です(国内応募に限る場合)。
私自身、300者が参加したという案件を複数回経験してきました。こうした経験からすると、現実的にプロポーザルに参加可能な設計者は700者くらいではないかと思います。建築士事務所及び建築士として登録がある7万所・名の1%ですね。自治体の担当者はこの数字も深く意識しておきましょう。
後述するように参加者をたくさん集めるプロポーザルがいいプロポーザルとも言えません。提案者と提案に適切に向き合えるプロポーザルでなければいけません。その意味では提案者数はあくまで二桁以内、数十程度が妥当なところではあるでしょう。ですが、この選別過程は決して自治体側が優先的に選んでいるのだと勘違いしないように努めて意識しましょう。自治体は選ぶ前にすでに選ばれているのです。
そして、選ばれなかったということは、その自治体に魅力や可能性を感じないと判断されたということであり、見切られたとも言えます。自治体数は現在1765。この先、確実に選ばれない自治体は生まれます。いや、すでに生まれていることを自治体関係者であれば実感しているでしょう。だからこそ、従来の意識を根底からあらため、長与町のように「本町が(中略)一方的に評価するのではなく、提案者も本町を見定めるものであり、このような双方向的なマッチングとする」ことが重要なのです。
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