マガジンのカバー画像

門司港ヤネウラで考え中

12
しぇあはうすの日常の記録
運営しているクリエイター

記事一覧

門司港ららばいは続く。

門司港ららばいは続く。

北九州から東京行きのスターフライヤーの機内で「門司港ららばい」を久しぶりに観た。関門海峡に面した古き良き港町、門司港を舞台にした短編映画だ。私はいまその街で暮らしている。

小さな画面の向こうにはコロナ前の私達の日常があった。休業補償なんかじゃ補いきれない門司港の日常。それが映画というかたちで残っていることを心強く思う。フィクションとは純度の高いノンフィクションだ。

いま正直、心が色々折れていて

もっとみる
夢は忘れた頃に叶う

夢は忘れた頃に叶う

2008年、当時18歳だった私は地球の裏側のアルゼンチンの愛に溢れた家庭で多感な時期を過ごした。

いつまでもラブラブな両親と三つ子のように仲良しな兄弟(上から女17・男16・男15)、それから大きな黒いラブラドールと小さい三毛猫というのが、その家族の構成だった。それに日本からやってきたスペイン語も喋れない私。

それだけでも充分賑やかなのに、家の扉はいつでも開け放たれていて、夕方になると親戚やら

もっとみる
風邪と永続可能な関係性

風邪と永続可能な関係性

風邪をひくと世界でひとりだけ取り残されたような気分になる。

体調を崩したその日、私は車いすのおいちゃんの受診同行をしていてた。病院の入り口で検温があって、おいちゃんは何ともなかったけれども、私は37℃以上あったので隔離されてしまった。診察だけ同行して、おいちゃんの健康に何も問題ないことだけ確認した。診察室の去り際に「職員さんも頑張ってくださいね」と看護師さんから声をかけられた。帰りの車中でおいち

もっとみる
30歳になった私が『街の上で』をみて感じたこと。

30歳になった私が『街の上で』をみて感じたこと。

街の上で今泉力哉監督の『街の上で』を見て、下北沢にはもう私の帰る場所はないと改めて悟った。今泉監督作品ならではの独特のテンポの群像劇が面白かったのはもちろんだが、何よりやられたのはあまりにもリアルすぎる下北沢のあの空気感だった。

画面では20代の役者さん達が焦燥不満絶望葛藤根拠のない自信を持て余しながらも、眩いほどにきらきらと輝いていた。全員あの街のどこかで会ったことがあるような気がして何だか懐

もっとみる
愛とは「見えてるよ」と伝えること

愛とは「見えてるよ」と伝えること

結局このところのもやもや病の正体は自分が必要だと信じてやってること(ホームレス支援&シェアハウス運営)が、資本主義的価値観のなかでその価値が可視化されににくく、また現場での自分が使い捨て要員のように感じること。そして、そのことによって、漠然とした将来の不安に侵されたり、なぜかやってることへの自信まで奪われてしまっていたことだと気がついた。要は自分が心身削って取り組んでいることが、尊重されていないと

もっとみる
食欲、睡眠欲、それから会話

食欲、睡眠欲、それから会話

朝起きるのが苦手。6:30から5〜6分ごとにアラームとスヌーズが交互に鳴って、それでもどうしても起きられないみたいな毎日を送ってる。

でも、今日はシェアメイトの布教で最近ハマりつつあるBTSのMVを重い頭でぼーっとみた。そしたら、彼らのあまりの美しさと尊さに、ある瞬間でぱっと目が覚めた。イケメンの力は偉大である。

洗面所に行くと、ちょうどシェアメイトが歯を磨いているところだった。泡を口に溜めて

もっとみる
シェアハウスってバンドみたいだ

シェアハウスってバンドみたいだ

バンドという集合体はとてつもなく不自由で思い通りにはいかない。

シェアハウスってバンドみたいだよなぁ。 GEZANのマヒトの新メンバー募集のステートメントを読んで、ふとそう思った。

他人だった別の人生同士が交差して、衝突し、それでも同じ夢をみる。わたしはバンドのこの一点に焦がれている。起こし続ける当たり前という名の奇跡。テクニックの寄せ集めじゃない。もう一度バンドという存在と必然を信じてみたい

もっとみる
落ち込むこともあるけれど、私、この町が好きです

落ち込むこともあるけれど、私、この町が好きです

光の方へ久々に朝からひどい落ち込みの波に引きずられて目の前が真っ暗になった。けれども、かわいいシェアメイトが「苺食べる〜?」といつものように朗らかに聞いてくれたので、はっと気持ちが光の方へと向いた。舌から苺の甘酸っぱさが染みわたり、重い身体にかすかな電流が走った。

先日、門司港にアジールをつくりたいという主旨の記事を投稿したが、結局のところアジールをいちばん必要としているのは他でもない私自身なの

もっとみる
不良になれなかった私のアルゼンチン門司港逃避行日記

不良になれなかった私のアルゼンチン門司港逃避行日記

不良になれなかった私物心ついたころから、何故だかはわからないが日本の教育や社会に馴染めなかった。都心にある中高一貫の私立の女子校。校則とか時間割とか部活とか意味わかんなかったし、学校にいると自分がどんどんロボットになっていく感じがした。

通学中に満員電車に乗っている大人とか観察してたら、何のために生きてるのかよくわからなくなった。MDのイヤホンでブルーハーツの1985年の『僕たちを縛り付けて一人

もっとみる
そろそろシェアハウスについての誤解を解きたい

そろそろシェアハウスについての誤解を解きたい

根暗とシェアハウスの親和性シェアハウスの運営をしているとかいうと、コミュ力おばけだと勘違いされがちだけど、たぶんその逆。

表面的なコミュニケーションは卒なくできるけど、実は人見知りだし、心を開くまでにだいぶ時間がかかる。飲み会とかイベントで知り合った人と会話を続けるのはどちらかというと苦手だ。

だから、ちょっとした時間の何気ない会話の積み重ねから、少しずつ相手を知っていけるシェアハウスという環

もっとみる
家が美術館になった話。

家が美術館になった話。

はじめまして。門司港ヤネウラの管理人のみくるです。北九州の古き良き港町のおんぼろビルの屋根裏で6人のシェアメイト達とこっそり楽しく暮らしています。

※この記事はブログリレー「 #新型コロナ時代のシェアハウス 」の10日目の記事です。

港町の門司港には色んな人が来ては去っていく。なかには、ふらっと立ち寄ったつもりが、気が付けば長く居ついてしまった人達もちらほら。門司港在住のアーティスト黒田征太郎さ

もっとみる
原風景と郷愁-映画『門司港ららばい』レビュー

原風景と郷愁-映画『門司港ららばい』レビュー

映画『門司港ららばい』を観たら何だか胸がいっぱいになってしまって、この余韻を忘れぬうちにと思って、こうして急いで筆を走らせているわけです。

冒頭の門司港へと近づく車窓のシーンから、胸の奥をぎゅっと掴まれて疼いた。線路ごしにみえる海峡。行き来するコンテナ船。汽笛の音。潮の匂い。東京からやってきた主人公の弥生が門司港に降り立ったときの感覚とこれからはじまる物語を私は知っている、と思った。

少しだけ

もっとみる