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赤痢。2024年8月、東京都の統計開始した2000年以降、初となる食中毒が発生!症状は?

こんにちは、翼祈(たすき)です。
この記事のテーマは「赤痢」ですが、まずその説明をしたいと思います。

「赤痢」(正式名は、細菌性赤痢)とは、赤痢菌によって発症する感染症です。

赤痢菌には、A群(志賀赤痢菌;Shigella dysenteriae)、B群(フレキシネル菌;S.flexneri)、C群(ボイド菌;S.boydii)、D群(ソンネ菌;S.sonnei)の4種に分類されます。

症状では、発症までの潜伏期は1~3日(1〜5日の場合も)で、軽症から重症まで色んな症状が出現します。症状は4~7日続きますが、発熱は1~2日程度続き、主に全身の倦怠感、腹痛、悪寒を伴う発熱、下痢です。

赤痢菌の種類によって症状の程度に差があり、最も病原性の強いA群では、腸内からの出血によって粘血便水っぽい血便が認められ、しぶり腹またはテネスムスという、強い便意があるがなかなか便がでない状態で、トイレに行った後でもスッキリせず、またトイレに行きたくなる状態が出現する時があります。他の3種の赤痢菌では血便が確認されることはほとんどありません。

重症になると、少量の膿粘血便(のうねんけつべん)を繰り返し起こします。症状は、一般的に大人よりも小さいお子さんの方が重いと言われています。

特にD群では症状が軽く、微熱や軟便で経過することが多いです。日本では毒性が弱く、無症状か、症状も軽度のD群が70~80%を占めています。

名前の由来にもなった血液混じりの下痢は、口から侵入した赤痢菌が大腸の上皮細胞に侵入し、これらの細胞が壊死、脱落することで出現します。

赤痢菌に汚染された氷・水・食品などを摂取することで感染しますが、非常に少ない菌量でも感染するので、箸や食器などを介して感染する時もあります。

推定感染国はインド、東南アジア、中南米、アフリカなどであって、日本では国外感染例が全体の70%から80%を占めます。

かつて赤痢は日本でも流行していた感染症で、戦後には年間5-10万人以上の患者発生が報告されていましたが、衛生環境の改善などによって1960年代半ばから患者数が減少し始め、感染症法で2類感染症に指定された2000年以降は年間500-1,000人程度の発生となりました。

その後の法改正により3類感染症に変更されてからは、さらに年間報告数が減少しています。

今回は2024年8月に東京で起きた赤痢の食中毒、また赤痢自体の原因や感染経路など、多角的に発信します。

2024年8月、

2024年8月16日、東京都は、港区赤坂にある飲食店を利用した3組の男女トータル5人(28~34歳)が赤痢菌による食中毒を発症したと明らかにしました。

その中で1人が一時入院しましたが、現在は全員快方に向かっているといいます。

東京都とみなと保健所によれば、5人の中の4人が2024年7月31日、残る1人が2024年8月1日に飲食店で調理された料理をそれぞれ食べた後、下痢や発熱、腹痛などの症状を訴えました。みなと保健所の調査で、その中の2人の便から赤痢菌が検出されました。5人に共通する行動は飲食店での食事だけだったため、みなと保健所が赤痢菌による食中毒と断定しました。

赤痢菌が食品に付いた原因は調査中です。

港区は、この飲食店を2024年8月16日から7日間の営業停止処分としました。

参考:港区の飲食店で赤痢菌による食中毒、2000年以降で東京都内初…7日間の営業停止処分 読売新聞(2024年)

赤痢菌は感染力が極めて強く、東京都内では2024年、9人が感染しているものの、食中毒が発生したと断定されるのは統計を取り始めた2000年以降初めてでした。

飲食店の運営会社は、
「保健所からは食中毒の発生源に関して色んな可能性があって、特定が出来ていないと聞いています。体調不良のスタッフがおらず、他の利用客から体調不良の報告はありません。赤痢菌の発生源の特定に向けて保健所の調査に協力します」
と述べました。

ここからは、「赤痢」の基礎知識をお知らせします。

▽原因

既に発症した患者さんや菌を保有している人の便、汚染された食品、手指、ハエ、水などです。具体的には、汚染された手で調理したものを食べること、汚染されたプールで水泳すること、排泄物によって汚染された水を飲むこと、という行動で感染します。

赤痢に感染した人の汚染されたトイレのタオルやドアノブを介しての感染のケースもあります。

少量の菌量で人に感染させる力を持っていて、家族内、保育園や幼稚園、長期療養施設、部活のキャンプ、福祉施設、学校、宿泊施設などでは、人と人の接触が多いことから集団発生になる時があります。

▽感染経路

赤痢菌はヒトやサルが保菌しますが、主な感染源はヒトです。潜伏期間は12時間から1週間程度で、通常は3日以内です。

保菌者や感染者の便や便に汚染された飲食物を食べたことで経口感染(糞便感染)しますが、日本での感染源に関してはほとんど原因不明です。

▽診断基準

赤痢菌に感染すると糞便中に赤痢菌が排出されることから、便を採取して培養検査を実施することで確定診断をします。

▽治療法

治療は、小さいお子さんの例ではホスホマイシン、大人の例ではニューキノロン剤を使います。

症状が軽度の時には、整腸剤や水分補給などの対症療法のみで自然に治癒することが期待できます。症状が重度の時には、血便がある場合や、元々免疫低下がある場合には抗菌薬による治療を実施します。下痢止め(止痢剤)を使うと、かえって病状を悪化させる危険性があります。

症状に応じた対症療法として、下痢には下痢止めは使わず、ビフィズス菌や乳酸菌などの生菌整腸薬の服用、脱水にはスポーツ飲料や経口補水液(ORS)を摂ることを実施します。飲水が困難だったり、脱水症状が強い時には早めの病院の受診が必要です。

未治療でも4~7日程度で症状は軽快しますが、治療を受けることで完治するまでの期間を短縮できます。

赤痢菌はごく少量でも感染を引き起こすので、家庭内での二次感染は40%も認められる時もあることから、公衆衛生的な面からも全例で治療を実施します。

▽予防策

赤痢に予防接種のワクチンはありません。トイレの後や食事の前には流水や石けんで十分に手を洗いましょう。

赤痢は世界中どこでも確認できる感染症で、海外からの帰国者に発症する輸入症例が多いことで、特に衛生環境の悪い国に多く確認されています。その地域に滞在する際は、氷、生水、生野菜、生もの、カットフルーツなどは避けることが、重要な予防方法と言えます。

屋台の氷やヨーグルト飲料で赤痢に感染した例も報告されていて、不衛生な飲食店、屋台などでの飲食も避けましょう。

また赤痢は感染力が強いため、家庭内感染などの二次感染を防ぐために手洗いに加え、感染した人のおむつ交換や排泄介助時にはビニールエプロンや手袋を使うなど、接触予防策を徹底する必要があります。

▽手洗いの方法

・指輪や時計を外す
・石けんをよく泡立て、手首や指の間までしっかりともみ洗いする
・流水でよく洗い流す
・乾いた清潔なタオルで十分に水けを拭き取る

画像引用・参考:細菌性赤痢について 堺市(2018年)

▽塩素系消毒液の作り方

(1)500mlのペットボトルに、水を半分ほど入れる。
(2)家庭用 塩素系漂白剤を(1)に入れる。
 0.1% → ペットボトルのキャップ 2杯
0.02% → ペットボトルのキャップ 半分弱
(3)(1)に水を加えて、500mlにする。

▽菌陰性化の確認

抗菌剤終了後48時間以上経過した時点と、その後24時間以上経過した連続2回の検便の結果が陰性であれば、赤痢菌がなくなったものとみなされます。

▽海外旅行の際の注意点

・アイスコーヒー、ジュース、ウイスキーなどに入っている氷は、生水と同じ様に危険なので氷なしで注文しましょう。
・生水は、絶対に飲まない様にしましょう。
・調理の前、動物を触った後、食事の前、排泄後などは丁寧に手を洗いましょう。
・野菜サラダなどの生野菜や生もの、生の魚介類なども、十分注意を払いましょう。
・事前に切り分けられている果物(カットフルーツ)にも注意が必要です。

▽届け出

赤痢は、便を採取して、病原体分離・同定することで確定診断をします。

感染症法では、三類感染症(全数把握対象)に指定されていて、感染者(患者・無症状保菌者)が発生した時には、診断した医師は速やかに最寄りの保健所へ届け出ることが義務付けられています。

▽登園・登校の目安

治癒(病原体を保有しなくなるまで)は、出席停止することが望ましいと言われています。

▽腹痛、下痢などの症状がある時には

・簡単に下痢止めなどを飲まず、早めに病院を受診し、医師の指示を仰ぎましょう。
・症状のある人のお風呂に入るのは、最後に入るか、シャワーを利用するだけに留めましょう。
・食品を扱う人は、調理業務への従事を見合わせ、病院を受診して下さい。

参考サイト

細菌性赤痢(Bacillary Dysentery) 厚生労働省 検疫所 FORTH

赤痢(せきり)  社会福祉法人 恩賜財団 済生会(2018年)

細菌性赤痢 Shigellosis 東京都感染症情報センター(2023年)

細菌性赤痢 日本感染症学会(2019年)

細菌性赤痢 大津市(2023年)

細菌性赤痢|神奈川県衛生研究所

赤痢菌 新宿区

細菌性赤痢 メディカルノート(2023年)

細菌性赤痢 仙台市(2016年)

私の母の身近にあった赤痢

母が中学1年生と2年生の時、6月末〜7月初旬頃、中学校の他のクラスで赤痢患者が出ました。

中学校は教科担任ごとの移動教室制で、授業のごとに自分の教室以外の教室に行って、授業を受けていました。

他のクラスで赤痢患者が出た日、その生徒が行った音楽室など教室全てを消毒していました。何の薬か不明でしたが、外から見ると室内が真っ白に連なっていて、中が見えない状態でした。

その赤痢患者の出たクラスの生徒たちは、白い煙が引いた後で、昼の給食を食べていました。給食終了後、学年全員、グラウンドに集合させられ、いつもより早く帰宅させられました。

母はとにかく、教室が真っ白になる光景が怖かったといい、帰宅しても、夕ご飯が喉を通らず、夜寝るのも怖かったと言いました。

翌日の朝ご飯もあまり食べれず、登校しましたが、午前中の給食前に、体育の授業があって、外でソフトボールをしていると、空腹でひっくり返りそうになって、その日の給食は全部食べました。

その後、赤痢は落ち着きました。

という、話を聞いていたので、私の中で赤痢は身近な感染症でした。

今でも赤痢は、衛生環境の悪い国などでは存在する感染症です。本文にも書きましたが、行かれる際は、食事や水などに気を付けて頂きたいです。


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