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日記

78
創作じゃない
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#エッセイ

『アンリアルライフ』クリアしたのでメモ

『アンリアルライフ』をクリアした。

1.
 ドット絵(ピクセルアート)は、ハードウェアの発色数や、解像度、容量などの制約があったおかげで生まれた。
 この制約は短歌や俳句などの定型詩に似ている。
 ドット絵の風景画では、同じような景色(たとえばビル群)が絶えず生みだされているけど、そのどれもが不思議と魅力をもっている。
 ノスタルジーという言葉はまだドット絵を捉えきれていないような気がする。たぶ

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2020.5.14(尾花仙朔にくらった)

 ツイッターに疲れてしまって主戦場をnoteにしようかといい感じのひとらをフォローしたり、頭がおかしくなって現代詩文庫などを60冊ほど馬鹿買いしてしまったのをときおりぱらぱらめくっている。そのうちに目がとまったのが尾花仙朔だった。やばいでこりゃ。
 とくに『春靈』はくらった。個人的な死とその虚しさと、歴史的にくり返されてきた(記録的な)死の虚しさが重ね合わされ、最終的に溶け合い、詩的・神的な地点に

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鈴と鐘のはなし

 僕は猫を飼ったことがないけど、鈴が居場所を教えたりするものであると知っている。
 僕の街に鐘が鳴ることはないけど、鐘が時刻などを告げるものであると知っている。
 なにかを教えたり告げたりすることに言葉は必要なく、金属が可愛らしく鳴るだけで僕はそれをわかるのだ。
 誰かが死ぬ。鐘が鳴る。僕はそれが弔いだとわかる。
 恋人に鈴をつける。縛りつけておきたい気持ちの表示だ。
 これは結構不思議なことで、

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洗いたての枕カバー・外に出なくても暑い・夜の塩漬け

 暑い。日中は30度を越した。vtuberの配信を裏で流しながらか、気温のせいかわからないけど仕事のやる気がない。ウイルスのおかげでテレワークに移行できたひとは多いだろうけど、僕はそもそも在宅の仕事をしている。家で仕事なんてできぬぇというひとが多いのがおもしろかった。慣れだよ。
 起きたとき自分でも驚くほどの量の涎を繰っていたので洗っておいた枕カバーに交換した。いまからその枕で眠ることになる。窓を

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SENTIMENTALISM

 萩原朔太郎の「SENTIMENTALISM」を読んでくれ。
 朔太郎はここで神秘主義的なことを書いている。

 神とは詩である。多くの場合、感傷には理性がともなう。哲学者はその思想において、ときに詩のようなものを書くが、形骸ばかりで死んでいる。ここには生命も感動もない。理性が理性として在る場合、それは哲学であって、詩ではない。詩は感傷の涅槃においてのみ生まれる。そこには観念も、思想も、概念も、象

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黙っておく

窓硝子の曇りに言いたいことを書きつけて、隣にいるあなたの肩を寄せながら「これを読んでくれ」と言うとして、声を使って言うこととの違い、あるだろうか。勇気の問題だ。たとえばこうやって読まれもしない言葉を書き連ねるのはほとんど勇気のいらないことだ。遠いところから遠いところへ書くことは負荷がすくない。宛先のない詩も負荷がないはずだ。けど詩人は苦しむ。それはいちばん近い自分へ宛てたからだろうし、また、世界そ

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KMNZがつくるREALITY――KMNZ 1st Album『KMNVERSE』

 笑い声はノイズだ。
 電車に乗り込んだ僕はイヤホンを耳にはめて、誰かと誰かの話し声をシャットアウトした。Spotifyのアイコンをタップして『KMNVERSE』を流した。一曲目「OPENING」。LITAの声が左chから流れてくる。こそばゆい。続いてLIZの声が右chから。そしてこの曲は、スタッフらしき男と、LITAの笑い声で終わる。
 どうして、この笑い声は不快ではないのだろう?
 見知らぬ誰

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変奏

 小沢健二の「流動体について」という曲がある。めちゃくちゃメロディックでキャッチーなんだけど、メロディと展開が凝っていて、一発で憶えられるような曲ではない。メロディ自体は『Life』や『刹那』時代の曲を彷彿させるようなもので、詳しくは聞いてないけど、自曲から引用しているような気がする(勘違いかもしれないけど)。
 キャリアのあるミュージシャンが、全盛期の曲の雰囲気をテクニカルに変奏するという試みは

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関西/関東

 七月だ。数字の「なな」はアラビア数字(7)でも漢数字(七)でもうつくしい形をしているから好きだし、「なな」とか「ひち」という音も好きだ。ところが、この「7」は「1」と混同することがあって、けっこう紛らわしい字だ。アラビア数字の見た目も似ているし、「ひち」という音も「いち」と似ている。だから時間を言うときはわざわざ「ななじ」と言わなくてはならなくて、その配慮が必要な数字という点でも、やはり「7」は

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語りかけてくるゲーム

 Steamのセールで買った『OneShot』がかなりおもしろい。インタラクティヴなメタフィクション・ゲームだということで宣伝されていたので、絶対おもしろいだろうなと思ったが、やっぱりかなりおもしろい。でもこれがメタフィクションじゃなかったとしても、こういう探索系謎解きゲームは好物なので、おもしろくプレイしただろう。
 ゲームという媒体のすばらしいところは、こちらの世界からあちらの世界のなにかを操

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物語る

 自分の書いた小説を読み返すと、よくこんなもの書けたなと思うことがある。ふだんの自分はこんなにも世界を物語(ストーリー)として理解していないからだ。
 物語として理解するというのは、たとえば自分がなにか失敗したり、他人にお前はこうこうこうだろと言われたり、他人のことを深く知ったりして、人生のことを考え「ああ、こういうことがあったから、自分はこうなのだ」とか「こういうことがあったから、あいつはこうな

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世界中に降りそそいだ雨が降りそそぐ



 どれだけ歳を重ねても眠ろうとするとき死を感じて怖くなって眠れなくなる。まだなにもなし得ていないまま死んでしまうのだろうか? いやいや、そもそもなにかをなし得ることこそ生きることだと思っていることのほうがおかしいのではないか。大局的にみれば世界は終わりに向かっているのであって、だれかがなにかをなし得るということはない。じゃあだからといってなにもせず、ただ己の欲望にしたがって、ひとが殺したければ

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