シェア
余地 死んだら、溶けて消えちゃうんやって。 雪じゃん。ほとんど。 私もそうなりたいな…
LIKE A FULL MOON 重い木の扉を押すと、頭上から涼しげな鈴の音がした。レジの奥はキッ…
それが世界の果てだと思っていたから、あの夜の痛みのことを、僕は未だに忘れられずにいる。…
湿った部屋の隅で、私は決心する。ベッドの下には酒缶が転がっていて、それから流れ出た甘っ…
ざく、ざく、とスイカの種をほじくっている夏海に、ふと、思いつきで僕は問いかけた。 「こ…
それが落ちたら、と佑真は切り出した。風もないのに「それ」はゆらゆら揺れている。心臓から…
ふたりで城をつくった公園、帰り道に寄ったコンビニ、何度も砂を蹴ったグラウンド。どうして人は、失わないとその大切さに気付けないのだろう。 私は今日、この町を出て行く。 保育園からの幼馴染である中谷航は、小学生からずっと野球に打ち込んできた。クリスマスプレゼントで、野球ファンの伯父からボールとグローブをもらったことがきっかけらしい。航と航のお父さんと私の三人で、グラウンドがある近所の公園に行っては、毎日のようにキャッチボールをしていた夏を覚えている。 中学生になって、
どうして人は、失わないとその大切さに気付けないのだろう。 「梨々香、久しぶり」 「………
「速報です」 リモコンに触れてすらいないのに、バラエティ番組がニュースに切り替わった。…
私の苗字が変わるかもしれない。 それは好きな人からの将来の約束でもなんでもなく、なん…
明日、私は、退部届を出す。 去年の春、高校に入学して間もない頃、家が隣の幼馴染である…
暗い。 切れかかっている電球の真下が、この部屋でのわたしの定位置だ。灰色の敷き布団の…
私たちは忘れることを知っている。忘れられることも知っている。忘却は罪であり、救いでもあ…