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その後のカラスとの戦い(たぶん、今も一人相撲)。

 カラスは、いつも人の生活のそばにいる。

 だから、普段は日常的な光景として、あまり気にならない。

 夕暮れになって、カーという鳴き声が響くと、カラスが鳴くから帰ろー、と誰に伝えるでもなく、自分の気持ちの中で、言葉が反射的に出てくるくらいだった。


カラスとの戦い

 近所にもカラスはいて、空を飛んでいるから、人との距離感は、カラス次第で、近くもなり、遠くにもなる。

 急にカラスのことへの意識が強くなったのは、ごみ収集の時刻が変わってからだ。以前は、遅くとも午前中にはゴミ収集車がきて、ゴミを回収してくれていたのだけど、ある時期から、午後2時前くらいに変更になった。

 うちの窓から見える道路に、このあたりのゴミを集める場所がある。そこに青い網をかけているのは、カラスから守るためだ。すごく古くなり、穴が目立つようになると、ゴミ関係の公共の施設に電話をして、新しいのを持ってきてもらったり、取りにきてください、といったことを言われ、それでも今は、まだそれほど古くない網を使えている。

 だけど、朝にはゴミが集まり、それから午後2時近くまで、そこにあると、カラスに狙われやすくなる。そう思っていたら、実際に、気がついたら、カラスに一部のゴミ袋が引き裂かれ、道路いっぱいにゴミが散って、だから、そのゴミをもう一度まとめたり、破られた袋をガムテープで補強したりもした。

 そんなことがあったので、カラスの視力はすごいこと、さらに賢いことを信じて、狭い道路を本気でダッシュをして威嚇をした。そのときには飛び去ったのだけど、またやってきので、それを、また威嚇することを繰り返した。

 それは、本当に絵に描いたような一人相撲だったのかもしれないけれど、それ以降は、少なくとも、家の道路のごみ収集所がハデに荒らされることは、あまりなかったと思う。

その後のカラスとの戦い

 それでも、ごみ収集の時間は、だいたい家にいる時は、食器を洗っているような時刻なのだけど、変に敏感になり、外から、カーという鳴き声、それも、やや低い声がするときは、一応、外へ出て、ごみ収集場所が無事かどうかを確かめた。

 もし、カラスが目にみえる範囲、例えば電線や、近くのマンションの屋根の上に止まっていたりしたら、そこまでダッシュをして、手を挙げて、にらんだ。

 そうすると、大体は飛び去ってくれた。

 だけど、夏が過ぎ、そろそろ秋になり、これだけ季節が進んだら、もう大丈夫かも、と思うくらい気温も低くなってきた頃、久しぶりにカラスにゴミ袋をやられた。

 そのときは、特にカラスの鳴き声が響くことがなかったけれど、なんとなく、食器を洗っている途中に、外の道路を見に行ったら、見事にゴミ袋に穴があき、中身が道路の幅いっぱいだけではなく、あんなところにまで、というところにまで散乱していたのが、すぐにわかったが、私が道路に出た時も、まだカラスは、3羽ほど、道路にいた。

 こちらがダッシュすると初めて、飛んだ。

 だけど、すぐそばの電線の上に止まっていて、こちらの様子を見ているようだった。

 さらに、カラスは3羽ほどいて、合計6羽ほどのチームのようで、冷静で、お互いのコミュニケーションも、無駄に鳴き声を繰り返さなくても、通じているようだった。

 それは、その後、また威嚇するようにダッシュしたら、視界から消えるほどの遠くではなく、いつでもごみ収集場に、上空から一飛びすれば、すぐに来られる場所に止まっているようだ。

 だから、今度は、道路の隅に落ちている、本当に小石を拾って、一応、迷惑にならないように気をつけながら、それでも敵意だけは十分に込めて、投げた。

 そのためかカラスたちは飛び去って、一応、視界からは消えたのだけど、そのカラスの飛び方は、必要以上に高く飛ばず、こちらが届くわけもないのだから、というような微妙な軽蔑があるように、低く飛んで行った。

 ただ、さらにその方向に行ってみると、うちのそばの7階建てのマンションで死角になっていたけれど、角を曲がったところにあるコンビニの上の電線には、10羽ほどのカラスがいたと思う。

 そのマンションのごみ収集場のゴミ袋もすでにやられている。

 カラスたちの、その止まり方の配置が、なんとなく余裕があるようなたたずまいにさえ見えた。

 クールで悪い集まりだったし、手強い、というイメージだった。

 うちの前の道路に戻って、散ったゴミを集めて、違う袋に入れ、破かれたゴミ袋はテープで止めた。

 外から、ゴミ収集車が来た音が響き、ゴミを持っていってくれたときは、ほっとした。

それからのカラスとの戦い

 次のゴミの収集日にも、気がついたら、ゴミ袋が破かれていた。

 それも、ちょっと見たらわからないくらい、ゴミの散らばりが少なかった。

 なんだか学習しているようだ。

 まだ少し遠くにカラスがいた。カラスの飛び方は、低く、こちらの様子を見ているようだった。

 とにかく、またダッシュして威嚇した。

 右手を振りかざし、何かを持っているように振り下ろししても、電線の上のカラスはびくとも動かない。

 家に戻って、ホウキを持ってきて、それを投げるふりをするようにしたら、飛び去った。

 このところのカラスはチームになっていて、それも、このあたりがよく見える高さの絶妙な場所にとまっているようだった。そして、同じ町内でもごみ収集の時刻は違っていて、それに合わせて移動して、最後の方に、うちの近くに来ているようだ。

 頭がよく、冷静だと思った。

 それからしばらく、カラスの鳴き声が聞こえなくても、午前中に洗濯物を干す前、干すとき、午後の食器を洗う前、ごみ収集の日は、道路に出て、周囲を見て、カラスがいるときは威嚇する。

 それを繰り返して、やっとゴミ袋が破かれることはなくなった。

 今は、自分がゴミ当番でもないのだから、そんなことをやる必要もないのだけど、何しろ、自分の家の目の前にごみ収集場があるから、気になるのだった。

 そんな、一人で、ジタバタして、バカみたいにも見える行為を繰り返して、しばらく経ってから、カラスのチームをあまり見なくなった。

 別の場所に行ったのか、季節が進んで、もうあまり活動的でなくなったのか、どちらか分からないけれど、今のところは、一時期の緊張感は、和らいでいる。

 時々、自分が、ゴミの収集日に、何やっているんだろう、と思う。

 ただ、鳴き声は、まだよく聞こえてくる。






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おちまこと
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