本は食べれる、知識食だ。
本はやっぱイイ。
ドキドキ感が湧いた本を紹介する。
そしてこんなワクワクした本を置いてくれた「ツンドクブックス」さんにも感謝。
一カ月に一回の巡礼。
十和田市にあるツンドクブックスに給料が入る前日に僕は行く。
次の日の給料を当てにして、
今月分頑張って給料をうかした分だけ、目一杯この日に本を買う。
一カ月に一回の僕の楽しみだ。
50歳を目前にどうした?
知識欲が半端ない。
この日は¥12,000分の本を購入。
それでもまだ欲しい本がある。それら数冊はツンドクに置いてきた。
来月分のチェックマークとしよう
満足たっぷりの選書。
仕事帰りに我慢できず車を1時間走らせツンドクへGO。
1時間かけてほぼ店内の6割分?の本を手を取りペラペラと選書。
そしてゲットした数冊をご案内する。
そのうち紹介したくてたまらない②冊。
まじ痺れる。
現実にあった出来事。
こんな夢のような本屋があったファンタジー。
それではGO。
1冊目:「奇跡の本屋をつくりたい」久住邦晴
タイトル通り本屋の話。
くすみ書房という名前の本屋。場所は札幌。
僕は本屋を目指している。…じゃなく、
たまたま今回の選書が本屋という、一本筋でタイトルが通っているだけ。
僕の興味は、”本屋”というひとつの空間=”箱”の中でアイディア次第でメルヘンになる。という発想だ。
これは会社や家庭やクラブチームにも空間を置き換えれば同じ。
実にアイディアや思いつき次第で、それら”空間”はメルヘンになる。
そんな現実例からの僕にとって参考書だ。
売れない本屋だった”くすみ書房”は「これはまずいぞ」と、次々と斬新なアイディアを打ち出す。それが面白い。
そしてアイディアにまんまとハマった観衆が、マスコミやメディアを呼び込むまでになる。
”くすみ書房”が考えた書店での読書会は、話し手が続出する。
「私も皆んなの前で朗読したい」
本に囲まれ
その本たちは朗読者の口を借りて物語を発す。
まるで自分を買ってもらう為の自己PRのように。
店主のアイディアは止まらない。
若者が店客に少ないことに気づくと、今度は若者向けの企画を打ち出す。
中学生向けの本のリストを500冊選書。
500冊!だ。
なかなか選べないよ。普通は。
後日、この時の選書リストが評判を呼び全国各地に広がっていく。
ブックレットになり、販売もされた。
///ひとつの進化///
「カフェを併設してほしい」
「古本も置いてほしい」
という”理想の本屋”への躍進。。
当時はどこにもこれといった見本はなく、手探りでカタチにする。そして、くすみ書房併設の
「ソクラテスのカフェ」ができた。
”箱”を作ると吸い寄せられるように人がやってくる。
人は人を呼び、作家までも呼びせる。
作家は常連客になり、
作家はブックカフェの店内で文学談義をし、
より人を呼びこみ、
文学談義は専門書の売り上げを伸ばし、著者繋がりで学者、作家、編集者、様々な人達が講演をするようになった。
仕舞いには市民との触れ合いの場「大学カフェ」がスタート。
大学カフェは棚本の知識を飛び越え、生声の知識が飛び交う文化色が強い憩いの場となる。
これだけの能力者が集まる”箱”だ。
集まる能力者が多ければ多いほど特別なアイディアも絡み合う。
街づくりだ。
能力者達は理想の場所から更に”箱”から飛び出た場所まで”理想の地”へ創りかえるアイディアを夢想する。
それはそれは素敵なアイディアであり、素敵な時間だ。
ブックカフェ「ソクラテスのカフェ」の店内はそんな”素敵”で溢れている。
そんな数日後…。
よくあるよな。コンビニエンスストア。
なんで目の前に?
「またコンビニエンスストアができるってさ」って言う話。
大型書店が”くすみ書房”のすぐ目の前に出店。
”くすみ書房”の長年培ってきた、養ってきた客を総取りしようって魂胆か?それでも
人の心は素直に単純に、大型店に引き寄せられる。そんなもんかよ。”箱”があれば吸い寄せられる知識人。
63年続いた
くすみ書房が移転する。今ある場所から20キロ離れた場所へ。
移転は再生
常連客も変わる。また新しい”くすみ書房”となる。
今までの常連客はさぞ残念だったろう。
閉店する日は客足が途絶えない
皆それぞれの思い出を語ってくれた。
レジ前で泣く人も。
63年間はそれだけの思い出が詰まった年月なのだ。本の中にはドラマがあるように、この店の中にも、ここに来店するお客様にもドラマがあった。
その日、閉店時間。
100人をこえる人達から最後のフィナーレ。
こんな感動的な場面なんて映画だけの世界だと思っていた。
物売り冥利に尽きる。素晴らしいじゃないか。
移転後の”くすみ書房”
集客はまずまず。しかし、「人が集まる」だけじゃダメらしい。
そんな中、以前企画した”中学生はこれを読め”の企画を知っている人達から、高校生もやって欲しい。との声が多数あがる。
店主は「高校生は自分たちで本を選べるはずですから」と断ると、実はそうでもない。
スマートフォンの普及で今の高校生は本を読まないから、と言う。時代は変わった。
何を読んだらいいのか分からないのだ。
そして”高校生はこれを読め!”の企画が実現する。
今回の選書は色んな人達を巻き込んだ選書にすると決めこみ、
その中で、高文連(全国高等学校文化連盟)図書専門部に協力してもらい北海道内325校に「高校生に読んで欲しい本」のアンケートを、更に同じく道内全ての図書館179館にも同じアンケートを送付したものが中心となった。
(こりゃすごい。
そして選書の中身が気になる。見たい。)
こうして集まった選定リストは1000冊。それを人の力で500冊に絞り込む。
本屋の親父たちの独りよがりを防ぐ為に公立図書館司書、大学図書館、図書クラブ所属の大学生、他店書店員、と構成したメンバーで選書作業が行われた。
こうして”高校生はこれを読め”書店フェアが開催。
スタンダードな推薦リストではなく、今本に関わっている人たちが単純に、高校生に読んで欲しいと願っている本のリストになった。
本にはすべて簡単な内容紹介をつけ、初級〜上級まで3段階で難易度の番号を付け選びやすくした。
書店フェアのタイトル:「本を愛する大人たちのおせっかい 高校生はこれを読め!」
多くの高校生が書店に足を運んだ。
チラシやポスターにこのフェアに込めた想い”本にはすべての答えがある”と書き込んだフレーズも響いたらしい。
つらいとき 迷ったとき うれしいとき いつもそばに本のある人生を歩んでもらいたい
店主はいつもそう言っている。
===札幌市は学校図書館を地域に開放する開放図書館という素晴らしい事業に取り組んでいる。
学校の本業の図書館とは別に、開放用の図書館を新たにつくり、週3日。地域の人々が誰でも利用できることになっており運営は基本的にお母さん方が担っている。
このお母さん方は基本的にボランティアで長年、開放司書の役割を担っている方が多い。現在(2010年)半数以上の100校をこえる学校が開放しており、ボランティアのお母さん方の数も多くなっている。
”中学生はこれを読め!”高校生はこれを読め!”の企画を成功させ、もはや残すところの”小学生はこれを読め!”をやらないわけにいかなかった。
この開放司書のお母さん方と一緒に”小学生はこれを読め!」をやるのはどうだろうか?
彼女たちは日々、最前線で子供たちと向き合い本に関わっている指折りの児童書通の方々ばかりなのだ。
店主は早速、”開放協議会(こんなのあるの!すごい)”に相談し、20名の開放司書の方々に協力をお願いした。更に賛同する小学校の図書館に長年携わっている先生方と公立図書館司書の方々、そして各書店の児童書担当の方々が集まり”編集委員会”をつくった。
(毎回おもう。なぜこんなにもすぐにOK!と賛同者が集まるのか?これはもう決まっている。店主:くすみさんの熱意だ。
本に対する熱意と人に対する熱意。本を通じて人を応援する。本は人の背中を押してくるれる人生のアイテムだと知っているから伝わる。)
今回の選書は市の全ての小学校と道内の図書館におすすめ本を選んでもらう。集まった1200冊の中から”編集委員会”が645冊を選書。
そしてこの時の選書作業が、今までにない真剣勝負、キリキリと意見がぶつかり合うまでになった。
学び優先の先生たち、
楽しく読書させたいお母さん方、
時間を忘れるほどに意見はぶつかっては盛り上がり選書作業を挟んで楽しい話し合いになったという。
そしてとうとう”小学生はこれを読め!”実現。
今回のタイトルは:「本屋のオヤジのおせっかい 小学生はこれを読め!」
これで”中学生 高校生 小学生”と、一連の企画が成功した。
と、まあ。ここまではいい話。
順調に集客を継続している”くすみ書房”
しかし、時代は書店には厳しい時代になっていく。
厳しい時代に対してひとつのアイディアを打ち出す。
インターネットを使った会員制の導入だ。
”くすみ書房友の会”へ入会すると年4回、情報誌「くすくす」と、くすみ書房が厳選した本が送られてくるというもの。
年会費10,000円、届くタイミングは入会時、誕生日、クリスマス、1年間の収穫本、となる。
そしてこのアイディアも上手く行く。
人は人に助けられ、支えられ生きている
ひとつの商売、ひとつのアイディアだってそうだ。イチ個人だけじゃどうにもできない。手を取り合う仲間がいてはじめてカタチになる。
”マンパワー”。
”人(ひと)”という字のとおり、自分自身よりも下で支えてくれる人の方が重要なのかも知れない。
実際この”くすみ書房”には運営危機が何度も訪れる。
そしてそれを救う救世主も”マンパワー”なのだ。
ハートはハートを繋ぐ。
それはいままでの店主:くすみさんのハートに助けられた熱意と誠意なのだ。
人を動かすのもまた、人。もしや世界の本当の原動力はお金や産業ではなく”マンパワー”が根本的にあるのかも知れない。
店主:くすみさん。そして”くすみ書房”を通じてそう思わざる得ない。
本書は終盤に差し掛かるが、まだ終わらない。
ここまで読んだだけでも相当エネルギーをいただいている。
本を読んでいるだけなのに、人からエネルギーをもらっている。
そんなこんなでスイッチオフ
不意に停電になり真っ暗な部屋の中に居るように”くすみ書房”の店主はこの世からいなくなってしまった。
姿ある者はいつか姿を消す。
それがいつになるのか、今生きている僕たちにもわからない。
”くすみ書房”の店主は言う
『本には人生を変え、奇跡を起こす力があります。今、夢も希望も持たず、人生に何も期待しない子供たちが増えています。
そんな彼らに人生の一冊を見つけて欲しいと願っています。』と。
反抗的な企画をやってきたのに、入り口近くにはちゃんと、「文藝春秋」や「小学1年生」が平積みされている。
それはどこの書店にもある安心感である。その安心感は必要。
書店たるベーシックな部分はそのままに、根本にある人命救助的な大事な部分を”くすみ節”で伝わるように変えていく。
くすみさんは”いじめ問題”にも本を通して向き合っている。
2006年に「本屋のオヤジのおせっかい 君たちを守りたい」を開催。
本で命を救えることを提言。「苦しくて、袋小路に入り込んだとき、本を読むことで心の間口が広がったことが、人生には何度もあった。
大きな海に出るような本との出会いを、一人の大人として何とか応援したい」
この時そう言っている。
”くすみ書房”のフェアは、苦境に立つ人間に、常に寄り添っていた。しかし、久住さんは正義をふりかざさなかった。
常に笑顔で、優しく、ちょっとした”おせっかい”を続けた。だから”くすみ書房”は庶民に広く愛された。
この本を読むことで再認識したことがある。
それは、本は読むことで色んな意味で”健康体”になれる。ということ。
東京大学の言語脳科学者”酒井邦嘉”さんも本に書いている。
脳を創る”書店”
脳を創る”読書”
それは脳と本との良い関係性を謳っていいる。
酒井教授は紙の本は電子書籍よりもはるかにハイスペックだと言います。
例えば、本の中をあちこち行き来しながら読むこと、とか自由に書き込みができること。
折ぐせも後で見返した時に大事な情報になると言います。
さらに、表紙やカバー、文字の種類や大きさといった本の個性も我々の理解や記憶を助けてくれるし、実は検索性という意味でも紙のほうが優れているそうです。
僕の住む町 青森県八戸市は”本のまち”です。
八戸ブックセンターは公営書店。つまり八戸市で運営している本屋です。
調べると”全国初!”とある。
ほんと素晴らしいです。
”くすみ書房”のくすみさんの本に対する愛情に加え、書籍の中では運営に関する苦しさも伝わりました。確かに書店に対する売り上げは、人件費や光熱費等を含めるとほぼゼロに等しい。
このような現状で今も運営している書店も”くすみ書房”さんのように運営の苦しさは変わらないはず。
2014年〜2024年にかけての10年で4600店もの書店が全国から消えてしまった。
全国の書店が無い市町村は27.7%にのぼる。これは緊急事態であるが、解決策は見当たらない。
その点、僕らのまち”八戸ブックセンター”は七福神の8人目(八戸の”8”)の神様のように、住んでいる僕たちには神々しく明るい未来を照らしてくれている。
こんなドラマチックなことってない。
本屋が君のまちにもし、無くなったら来ればいいよ。本のまち八戸へ。
色々凄いことになってます。全国からの視察も多いみたいです。
このblogを参考に言わせれば、”くすみ書房”さんも八戸ブックセンターも同じ。
”本”で人をつくる。が、→”本”が人をつくる。
になっていくんです!
書店が原点になり、その箱に人が入る。
そして箱から出てきた時点で生まれ変わっているんですね。服屋で服を着替えたように。
今までは書店が”本のまち”をつくっていた。それは”人つくり”でもあった。
書店がなくなる。それは”まち”が無くなる。人がいなくなる。と一緒なのだ。
〈風が吹けば桶屋が儲かる〉の逆なのだ。本屋がなくなれば人がいなくなる。のだ。
本は無くせばダメ。
本屋も一緒。
経済産業省が動く。それは当然かも知れない。
くすみさんが亡くなる8ヶ月前に、八戸ブックセンターが開館。
くすみさんがもし生きていたら喜んでくれただろう。
一筋の”本”が存続する希望の光として。
(2冊目の紹介は次の回へすすむ…)