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大内義隆は最期の時を迎えようとしていた。 もはや、迷いはなかった。 ここで死ぬ。 それが…
號! 隆豊の両刀が音を立てて唸りを上げる。 眼前の槍を叩き斬ると、目も止まらぬ速さで、そ…
「冷泉殿。」 一同は静まり返って、刀を杖に身体を支え大きく肩で呼吸をする男。冷泉隆豊を見…
まさに阿修羅であった。 隆豊ひとりに寄せ手は大混乱となった。 隆豊の大刀が煌めく度に血飛…
開け放たれた門から現れたのは、冷泉隆豊であった。 大刀を二刀、両手に握りしめ、鎧兜はつけ…
隆房は馬上で待っていた。 自分自身と父、興房がつくりあげた大内家が自らの意志で滅びゆく刻…
隆豊を見上げていたのは、骸骨であった。 長い黒髪をたなびかせて、小さな頭蓋骨が隆豊を見上げている。真っ黒い眼窩がこの頭蓋の古さを表していた。 そして、 鮮やかな着物の袖口からは、バラバラになった骨が散らばっている。 その骨はか細く、女のものであることがわかるが、同時に肉片ひとつ付着していない綺麗な骨であった。そこからもこの骸が年月を経たものであることがわかる。 「どういうことだ。。」 隆豊は絞り出すように声をあげた。 あやめはいつの間にか、骸骨を身代わりに逃げた
「あの女は斬る。」 隆豊はそう呟いた。 あの女とは、大三島の惣領である大祝安舎の妻であ…
「そうではない?」 冷泉隆豊は眉を顰めた。 この後に及んで死ぬのが怖くなったのか。 もは…
外の喚声が静まった。 炎で寺の柱の爆ぜる音だけが義隆の耳朶を打った。 「自害せよというわ…
「わしが隆房に殺されることは運命であったのかもしれぬ・・。」 義隆は呟いた。 炎が一段…
戦国の世というものは喰うか喰われるか。それは主従の間でも起こる。問題はそこに「正当性」…
義興は弘興の死に衝撃を受けた。 もちろんその死が弘興の自害などではなく、義隆の手による…
そんなある夜。 弘興が義隆を心配して面会を申し出てきた。 いつもならば断る義隆であったが、この夜はそれを受け入れた。それは義隆のある決意の現れであった。 ちょうど。 義隆が炎に包まれているこの夜と同じく八月の蒸し暑い夜であった。 義隆は部屋に入ってきた弘興をいきなり事前に用意した手槍で突いた。そのときの弘興の驚愕の表情は義隆を長く苦しめた。 その表情で義隆は悟った。 弘興が自分を裏切るような弟ではなかったことを。 弘興は義隆の手槍で腹を貫かれそのままうずくま