日本の美容室が、環境問題に向き合いながらも売り上げを出す経営戦略
※この論文は、私が大学2年生の前期に作成したものになります。
1. はじめに
私は大学一年生の頃に、今まで無頓着であった外見的な面を変えようと考えた。そこで、まずはヘアスタイルから拘ろうと思い原宿の美容室に初めて行ってみた。その美容室で自分の予想を遥かに超えるヘアスタイルにしていただき、外見が良くなるだけでなく、内面的にも前向きになったことに驚いた。
私はその時、「ヘアスタイルの持つ力」というものを強く実感したのである。
そこで、「将来は美容室に関わる仕事をしたい」という思いが芽生え、今では美容室専売品メーカーへの就職を目指して日々を過ごしている。
大学一年生の後期から環境問題について研究するゼミに入り、主に水質汚染について研究した。その際、我々人間が水を汚してしまうと、海の生物が被害を被るだけではなく、その汚染された海や川で育った魚などを私たちが口にすることによって、結局海を汚した私たちに被害が回ってくることを知った。その際たる例が、四大公害病の一つである水俣病であることも知った。水質汚染について勉強する中で、私はあることに疑問を持った。「美容室は、環境問題への対策をしているのだろうか」と。水質汚染について研究して理解したのだが、海や川に汚染水が流れるきっかけは、当たり前かもしれないが
人間が使用して発生した工場排水や生活排水をそのまま流してしまうことによって発生する。では、水を大量に使用する美容室も、しっかりと環境対策をしなければいけないのではないか。そう考えたのである。
そこで私は最初、今回の研究テーマを「美容室は環境問題にどう向き合うか」というテーマにした。しかし、そのテーマだと100パーセントではない気がした。というのも、美容室の1番の目標は、「売り上げをアップさせること」である。それは日本の美容室にとどまらず、世界中の美容師の至上命題だ。そのため、環境だけに配慮して営業をするなんてことは絶対にあり得ない。さらに、美容室はサービス業。目の前の顧客に対して最大限のサービスをしなくてはならない。そんな中で、環境問題への配慮のみに拘って営業をするなどということことは不可能だろう。
そこで私は、研究テーマを改め、「日本の美容室が、環境問題に配慮しながらも売り上げを出すための経営戦略」というテーマに決めた。
ここでいう経営戦略とは、一般的に使われる「売り上げをアップさせるための戦略」ではなく、「環境問題に配慮することで、最終的に顧客の満足度に帰着する」という意味での経営戦略である。
日本の美容室が、環境に配慮しながらも、売り上げを出すことは果たして可能なのか。それを以下の文書で考察していきたい。
2. 日本の美容室の「環境問題への意識」の現状
先ほども述べたように、美容室の1番の目標は「売り上げをアップすること」である。それはこの先も変わらない。したがって、日本の美容室のほとんどが環境への配慮をしていない。しかし、一部の美容室では、環境に配慮した営業スタイルを取っているようだ。その営業スタイルというのは後ほど述べていくが、その事実から分かることとして、売り上げを出すためには、環境に配慮してる余裕はないと思いきや、方法によっては私がテーマとしている「環境問題に配慮しながらも売り上げを出す」ことが可能であると言えるだろう。
3. 日本の美容室の問題点
ここでは、美容室が顧客へのサービスを行う際に必ず使うであろう「シャンプー」について考えたい。消費者目線で見てみると、シャンプーというのは何も美容室に行った時だけではなく、自宅での毎回の入浴時に必ず使うものではないだろうか。
現在日本の市場に出回っているシャンプーは、大きく分けると2種類に分別される。①合成洗剤を使用したシャンプーと②オーガニックシャンプーである。
ここからは、その「合成洗剤を使用したシャンプー」を使用することによる「人体への被害」と、その合成洗剤を流すことによる「環境への被害」を見ていきたい。
初めに、「合成洗剤を使用したシャンプーとは何なのか」ということを簡潔に説明していく。合成洗剤には、石油から合成された「石油系化学原料」が使われており、これが人体にも、環境にも悪影響を及ぼす。石油系科学原理のわかりやすい例としては、ショックな話かもしれないが、おそらく殆どの方が使用しているであろう「市販のシャンプー」は、大半が合成洗剤を使用したシャンプーだ。それも、市販で出回っているシャンプーはどれも「強い」合成洗剤が使われている。私の通っている美容室のスタイリストは以前、「市販のシャンプーには、普通の洗剤と同じくらい高い洗浄力がある」と言っていたくらいだ。
4. 合成洗剤が人体に及ぼす悪影響
先ほど、合成洗剤のなかに石油系化学原料が配合されていると述べた。石油系化学原料というのを簡潔に言い換えると、「化学物質」である。以下の文章では、化学物質と統一して記載していく。
化学物質というと、なんだか特別なもののように聞こえるが、実は化学物質は私たちの生活に溢れている。わかりやすい例として、医薬品や化粧品などのスキンケア商品である。そして、この化学物質は、人体に大きな悪影響を及ぼす。少し考えると分かるのだが、化学物質は洗濯で使用する洗剤や食器洗い用の洗剤に大量に含まれている。そんなものを髪の毛や肌につけてしまえば、当然良くはないだろう。しかし、そんなものを世の中の大半の人が知らず知らずに使ってしまっているのが現状なのである。
そして、この化学物質の厄介なところは、「皮膚から入り込む」ということである。「経皮呼吸」というやつだ。人体に有害物質が入り込む経路として、①経口吸収②呼吸③経皮呼吸があるが、有害物質だと分かってて食べたり、吸ったりする人はいないだろう。しかし、知らず知らずのうちに経皮呼吸として皮膚から吸収してしまうというのは、実は一番厄介なのである。さらに、化学物質の中に入っている「界面活性剤」という有害物質は、肌に非常に浸透しやすいのだ。
これらの理由から、合成洗剤を使用するシャンプーを使用することがいかに髪の毛や頭皮、そして身体全体に悪影響なのかが理解してもらえるだろう。
5. 合成洗剤が環境に及ぼす悪影響
先ほどは合成洗剤が人体に及ぼす影響を見てきたが、続いては環境に及ぼす影響を考察していきたい。
環境問題の中でも、私は「水質汚染」に絞って考察していく。なぜ水質汚染なのかというと、美容室と大変密接な関係があるからだ。なぜなら、美容室というのは当然ながら顧客へのサービスとして、先ほど述べた「合成洗剤を使用したシャンプー」を使用する。シャンプーをするということはそれを洗い流すということであり、それは合成洗剤が環境への被害を与えるということを意味する。
ここで、日本の美容室が年間で使用するシャンプーの量を調べたい。
美容室が1人の顧客に対してサービスするシャンプーの使用量は女性のセミロングの方だと約15mlと言われている。
それから、厚生労働省の調査によると、2019年時点の日本の美容室の店舗数は3562店。1日の平均来客数は10人。1週間の平均営業日数は6日。という統計が出ている。
これらのデータから、日本の美容室全体が、年間で使用するシャンプーの量を計算すると、1人につき15ml×1日の平均顧客10人×週に6営業のため1ヶ月で24日×12ヶ月×全体の店舗数の3562=2億517万1200ml。
ℓに直すと20万5171ℓという計算である。
これだけの量の合成洗剤が流されてしまっては、当然水質汚染に直結してしまう。
続いて、本題である合成洗剤が及ぼす水質汚染について考察する。
シャンプーの中に含まれる成分の中の界面活性剤という化学物質が特に環境に悪影響を与える。まず一つ目は海の成分への悪影響だ。殆どの界面活性剤は下水に流され、最終的には水の生態環境へと達することになる。さらに界面活性剤のたちの悪いところは、分解に時間がかかることである。そして分解される前の界面活性剤を魚たちが飲み込んでしまうことで、その魚を食べた人間に当然被害が来るだろう。被害を受けるのは海や川の生物だけでなく、そこに生育している植物にも悪影響を及ぼすだろう。
これらの理由から、美容室が合成洗剤を使用したシャンプーを使い続ける限り、人体のみならず環境へも被害を与え続けると言える。
6. 代替案「オーガニックシャンプー」
ここまで、「合成洗剤を使用したシャンプー」が人体と環境に及ぼす悪影響について考察し、そのようなシャンプーが人体に有害であることを知らずに私たち消費者が当たり前のように使用している事実を述べてきた。さらに、消費者が市販のシャンプーを購入して、被害を被っているだけでなく、本来顧客の髪の毛を綺麗にするために存在している美容室が、合成洗剤が使用されてるシャンプーを使ってしまっていることは非常に残念なことである。
そこで私は、現在美容市場に出回っている合成洗剤が使用されているシャンプーに代替する物として、「オーガニックシャンプー」という提案をしたい。
まず初めに、オーガニックシャンプーの定義を述べていく。
そもそもオーガニックとは、「有機」という意味で、有機栽培のことである。有機栽培とはすなわち、化学肥料や農薬を全く使用しない農作物を育てる農法のことである。自然由来の成分を使用しているため、オーガニックシャンプーは先ほど述べた合成洗剤のシャンプーとは違って髪の毛や頭皮に優しいのだ。
7. オーガニックシャンプーのメリット・デメリット
続いて、オーガニックシャンプーを使用することのメリットとデメリットを説明していく
<メリット>
・着色料・香料・シリコンなどの添加物を使用していない
・化学的に作られた洗浄成分による頭皮や髪への刺激が少ない
・有機植物を中心に肌・環境にやさしい成分で作られている
・天然の植物の香りでリラックスできる
・アレルギーにも効果的である
このように、なぜ今すぐオーガニックシャンプーを導入しないのかと言いたくなるようなメリットの数々が挙げられるわけである。やはり、化学物質が使用されていないことにより髪の毛や頭皮への優しさは絶大なようだ。特に、もともと髪質や肌質が弱い人にとっては、特にありがたいシャンプーであると言えるだろう。
続いてデメリットを説明していく。
<デメリット>
・使用感が悪い
・髪の毛が傷んでる人には適さない
・消費期限が短い
・価格が高い
これらのデメリットが挙げられる。これを見ると、合成洗剤を使用したシャンプーとオーガニックシャンプーの光と影がよく現れていると言えるだろう。というのも、合成洗剤を使用したシャンプーは、髪の毛や頭皮への優しさよりも、「使用感を良くしてさらに価格を抑え、消費者にリピート購入してもらうこと」が目的だからだ。それに対してオーガニックシャンプーは、「いかに人の髪の毛や頭皮に優しいか」を追求した商品である。そのため、オーガニックシャンプーでは、合成洗剤シャンプーのような使用感の良さや低価格を実現することは難しいだろう。オーガニックシャンプーは髪の毛に優しいはずなのに、髪の毛に傷んでいる人には適さないというのは若干の疑問が生じるかもしれないが、これに関して説明すると、オーガニックシャンプーには、「シリコン」が入っていない。シリコンとは、髪の毛をコーティングしてくれる作用があるのだが、オーガニックだとそのシリコンを配合することは難しい。そのため、髪の毛をコーティングすることできないため、それが使用感の悪さや髪の毛が傷んでいる人には適さないというわけだ。さらに、オーガニックシャンプーは環境にも優しい。これは簡単な問題なのだが、天然由来の成分を使っているということは、そのまま洗い流してしまっても、合成洗剤シャンプーよりかは遥かに環境に優しいだろう。
これらの理由から、日本の美容室では、現在の合成洗剤を使用したシャンプーから、オーガニックシャンプーへの代替を推し進めたい。
8. オーガニックシャンプーを美容室に導入する上での問題点
続いて、オーガニックシャンプーを日本の美容室全体で導入していく際の問題点について考察していく。
単刀直入にいうと、それは「コスト面」での問題である。先ほども述べたように、オーガニックシャンプーは有機製法なため、当然合成洗剤シャンプーよりもコストが高い。それを美容室に導入しようとすると、コストの増加分は顧客に払ってもらうことになる。すなわち、美容室のもともとのメニュー料金が高くなるということだ。
このことからわかることは、オーガニックシャンプーを日本の美容室に導入するためには、顧客に対して「オーガニックシャンプーでのサービスによって顧客が得られる便益」を明らかにする必要があるのだ。顧客が「オーガニックシャンプーを導入したことによるコストの増加分を払おう」と思うだけの、先ほど述べたメリットを示さなくてはならない。これが、オーガニックシャンプーを日本の美容室に導入する際の1番の課題だと考える。その課題の解決方法を、下記で述べていく。
9. 日本の美容室が、環境問題に向き合いながら売り上げを出す経営戦略とは
先ほど、日本の美容室にオーガニックシャンプーを導入する際にかかるコストの増加分を、料金に上乗せして顧客に払ってもらうという方法を提案した。そして、顧客に対してその料金の上乗せ分を払う価値があると思わせられるように、オーガニックシャンプーが顧客の髪の毛や頭皮に与える好影響、さらには従来通り合成洗剤のシャンプーを使い続けることのデメリットを明確に提示していくことが重要だと述べた。
ここからは、美容室が環境問題にどう向き合うかという本論文のテーマとは異なり、完全なる経営戦略的な話になってしまうのだが、最後までお付き合い願いたい。
あくまで私個人の見解となってしまうのだが、例えば美容室のカット料金が5000円だとして、私はその5000円を、何に対して払っているのかを考えてみた。
当然、カット代として払っているのはわかっているのだが、私たち顧客が受けているサービスは、何もカットだけではない。美容室自体の景観だったり、美容室内部の清潔感、美容師の接客対応や、これまで述べてきたシャンプーなどの費用。そこにカットの要素が組み合わさって、5000円という価格を支払っているのだ。つまり、もしオーガニックシャンプーを導入した際に発生したコストが1人の顧客に対し300円だとすると、顧客が従来より300円多く払ってもいいと思えるような「美容室としての価値」を追加的に与えていかなくてはならない。
それは、先ほども述べたオーガニックシャンプーのメリットだったり、美容室の清潔感、美容師の接客対応の良さでその300円の増加分をカバーするというわけだ。
これが、私の考える「日本の美容室が環境問題に配慮しながらも売り上げを出す経営戦略」である
10. おわりに
ここまで、日本の美容室が、環境問題にどのように向き合っていくのかということを軸に、現在出回っている合成洗剤を使用したシャンプーが人体や環境に及ぼす被害や、それに代わるオーガニックシャンプーのメリットとデメリットを述べ、最終的にはオーガニックシャンプーを導入する際に発生したコストの増加分を顧客に払ってもらうための戦略を考察してきた。
最後に、私自身がこれから取り組んでいきたいことを述べてこの論文を終わりにしたいと思う。
冒頭でも述べたが、私は外見を変えるきっかけとして、原宿の美容室に行き、外見だけでなく、内面さえも前向きにする力を、ヘアスタイルは持っていると知った。そこで、私も将来美容室に関わる仕事をして、僕のように変わることの出来る人を増やせたらなと思う。
でも、その方法はとても簡単で、冒頭で述べたとおり、「環境問題に考慮せずに、売り上げだけを重視する営業スタイル」を貫けばいいだけなのだ。売り上げを上げるためには、顧客を最大限にカッコ良く、可愛くすればそれでいい。シャンプーなども、環境に配慮したものではなく、環境を壊してまでも髪の毛や頭皮に優しい商品を次々に開発していけばいいのだ。
私自身も、もともとはそういう考えだった。環境問題を気にするよりも、我々人間が良い思いができればそれで良いのだと。
しかし、そんな私の愚かな考えを覆したのは先ほども少し触れたが、大学一年生の後期に四大公害病の一つである「水俣病」について調べた経験だった。水俣病というのは、科学工場がメチル水銀化合物という有害物を海や河川に流してしまったことにより、それを魚介類が食べてしまい、それが食物連鎖を通じて人間がその汚染された魚介類を食べてしまい、メチル水銀中毒症になってしまうというものだった。私はこのことから、「人間が楽をするため、人間だけが良い思いをしようと思って行った行為は、すべて悪い形で人間に帰ってきてしまう」ということを学んだのだ。何もこれは水俣病だけの話ではないだろう。人間だけが楽でいい思いをすることを求めた結果、森や木が次々に伐採されて、自然だけでなくそこに住む動物が生活できなくなってしまったり、二酸化炭素を多く排出する車やバイクが当たり前のように道路を走ることにより、二酸化炭素による大気汚染が進んでいる。
しかし、今の時代に私がこのことを訴えても、ただの綺麗ごとになってしまう。なぜなら、私自身も、森の木を伐採して作られた家に住んでいるし、二酸化炭素を大量排出する車で移動したりするからだ。それは冒頭でも述べたとおり、「美容室が環境問題だけに配慮して営業を行うことは不可能だ」というのと同じだ。以前経済学の講義で、「トレードオフ」ということを学んだ。それは、「何かを得るとき、何かを失う」というものだった。まさに環境問題にぴったりな用語である。
しかし、環境問題におけるトレードオフとは、「人間が利益を得る代わりに、確かに自然を壊してしまうことになるが、その被害を最小限にしよう」という意味であり、「人間が好き勝手に利益を得て、自然への被害はいくら大きくても構わない」ということでは決してない。
今や日本の美容室の数は、全国のコンビニエンスストアの数より多いと言われている。具体的な数を出すと、先ほども記載したように、2019年時点で3562店舗である。そんな日本のすべての美容室のそれぞれが、環境問題への配慮を少しずつでもすることができたら、確実に環境問題の改善につながると考える。
そう思うからこそ、私は将来美容室と関わりのある職業に就き、「環境問題に配慮しながらも、売り上げを出す」という美容室における理想の経営戦略を実現したい。そのために、この先のゼミ活動でどんなテーマで考察するとしても、環境問題について深く学び、大学を卒業するまでには、今回のテーマである「日本の美容室が、環境問題に向き合いながらも売り上げを出す経営戦略」を完成させたいと思うわけである。
今回の記事はここまでです!
かなり長かったですが、ここまで読んでくれた方、本当にありがとうございます😊
もし良ければ過去の記事も読んでみてください😆