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短編小説集

46
今まで書いた短編小説のまとめです。
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#ファンタジー小説

【小説】あなたの心を星にして

 百貨店のイベントスペースで開催されている古本市。大学の帰りに、私はふらりとそこに立ち寄…

雪乃
2か月前
17

【小説】染まる

「ごめんね、私たち、やっぱり合わないと思うんだ」 アイスティーの入ったグラスを置いて一言…

雪乃
2年前
14

【小説】花園に見る夢

※下に引用した話と世界観や設定がつながっていますが、この小説単体でも読めます。  僕が庭…

雪乃
2年前
11

【小説】この道を行きましょう

 結納も祝言もつつがなく終わり、わたくしは晴れて榊慎一郎様の妻となりました。子爵家の御子…

雪乃
2年前
6

【小説】君は夜の使者

 長く伸ばした髪の先から雫が滴り落ちた。なんだか今日は髪をドライヤーで丁寧に乾かす気にも…

雪乃
2年前
6

【小説】開かれる

 私が通う高校のクラスメイトである永宮翡翠は、一冊の本を持ち歩いていた。ファンタジー小説…

雪乃
3年前
15

【小説】宙色をあなたに

 彼女のプラチナブロンドの髪に、大輪の花を象った髪飾りをつけてやった。白く透明なそれは、時折内側から燃えているような光が煌めくことがある。 「ね、回ってみてよ」 僕がそう言えば、彼女は「わかったわ」と言って、一周その場でくるりと回った。スカートの裾が広がって、それは柔らかな円を描く。真っ白なドレスは僕の自信作で、胸元もスカートも細かい光の粒を散らした。光沢のある生地そのものに細かい光を織り込むのには苦労したが、彼女の笑顔が観られるなら安いものだ。 「今日も素敵なドレス。ありが

【小説】愛しのロング・テイル

「よーちゃん、結婚しようよ」 雨の音と、洗濯物を乾かすためにつけていたエアコンの音だけが…

雪乃
3年前
10

【小説】星貸します

 星貸します、と書かれた貼り紙を見つけた。路地裏の、人目につかないところに、ひっそりと。…

雪乃
3年前
15

【小説】うつろわぬ花

 陽の光が差し込む温室の、その中央に置かれたテーブルと椅子。そこで椅子に座って花を愛でる…

雪乃
3年前
139

【小説】紙の蝶

 白い蝶が飛んでいる。その蝶は、子どもが紙を鋏で切って作ったような、形も歪な蝶であった。…

雪乃
3年前
36

【小説】花の色は

 桜の花は今日も、その透明な花弁に空の色を宿している。桜とは50年前に火星で発見された品種…

雪乃
4年前
5

【小説】月は綺麗ですね

 彼は、都市部の雑踏を好んでいる。誰も自分のことを知っている人がいない人ごみの中に紛れて…

雪乃
4年前
11

【小説】はばたいてめぐる

 はちみつ色の、肩くらいの長さの髪が、ふわふわと揺れる。背中に生えた、紫色の蝶の翅が、わずかに動いた。彼女は望遠鏡を覗き込んでいる。 「プシュケ。今日は、何匹見える?」 「三匹。少ないよ」 レンズに目をぴったりとくっつけたまま、プシュケが僕の問いかけに答えた。  ドーム型の屋根にぽっかりと空いた穴。望遠鏡がまっすぐ伸びる先には、紫色の空が広がっている。きらきらと頭上で輝いているのは、星ではなくて―― 「もうすぐここに降りてくるよ、みんなね」 プシュケがレンズから目を離して、