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短編小説集

46
今まで書いた短編小説のまとめです。
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記事一覧

【小説】あなたの心を星にして

 百貨店のイベントスペースで開催されている古本市。大学の帰りに、私はふらりとそこに立ち寄…

雪乃
1か月前
17

長歌と短歌による物語詩「星の海へ漕ぎ出せば」

ひさかたの天すら越えて、人類は宇宙へ住処を変え、そして星を次々開拓し、銀河にひとつの国を…

雪乃
1年前
5

【小説】残光と巡礼

 真っ白な砂に足が沈まないように歩いた。深い藍色に染まった空を背負いながら、砂漠の真ん中…

雪乃
2年前
10

【小説】機械王の寵愛

 私は波の音で目を覚ました。見慣れない天井が目に入って、私はここが海沿いのホテルのある一…

雪乃
2年前
25

【小説】夏、一夜

 毎年変わらない、何の変哲もない夏休みの縁日だった。そう思っていた。今日この日までは。 …

雪乃
2年前
10

【小説】犬?

 高校を出てから駅に着くまで、よく犬の散歩をしている人とすれ違うんですよね。あの人と、あ…

雪乃
2年前
22

【小説】夏をもう一度

 夏体験プラン、というものに申し込んでみた。私は夏というものを知らないからだ。  人格のデータ化技術を確立した人類が肉体を捨てデジタル空間に生活拠点を移すまで、そう時間はかからなかった。崩れゆく地球の環境、魂の器としては脆すぎるたんぱく質で出来た肉体、そして肉体を持つがゆえに起こる争い。その争いの果てに生き残った人類が選んだ道、それが人格、そして意識そのもののデータ化だったのだ。そしてデータとなった人類は、まるでノアの箱舟に乗って生き残った動物たちのように、デジタル空間に築

【小説】染まる

「ごめんね、私たち、やっぱり合わないと思うんだ」 アイスティーの入ったグラスを置いて一言…

雪乃
2年前
14

【小説】即席創造主

 私の研究の集大成が完成したよ。ぜひ取材に来てくれないか。そう博士に呼ばれて、私は博士が…

雪乃
2年前
16

【小説】虫かごの中

 小学二年生の時の、夏休みだったかな。友達と集まって、近所の雑木林で虫捕りしよう、みたい…

雪乃
2年前
5

【小説】幻(かもしれなかった)、もしくは

 妖怪のミイラってあるじゃないですか。河童とか、鬼とか、人魚とか。あんなの作り物だろって…

雪乃
2年前
9

【小説】夜の川

 中学三年生の頃、高校受験のために、学習塾に通っていたんですよ。ちょうどその日は夏休みの…

雪乃
2年前
7

【小説】ひもとく

※下にリンクを貼った2作と世界観や設定が一応繋がっていますが、この話単体でも読めます。 …

雪乃
2年前
5

【小説】水槽の中、あるいは存在証明

「ほら、見てごらん」 私がこの研究所に先生の助手としてやってきたその日。先生は、巨大な水槽を前にしてそう言った。芸術家が自信作を前にするような、満足げな表情だった。くたびれた白衣に、乱れた黒髪。目の下には濃い隈ができているが、先生はやけに元気そうだった。  その部屋の照明はやや暗めに抑えられ、水槽から放たれる柔らかな水の青は鮮やかだ。ここだけ見れば、水族館のようだと思う。水槽の中にいる生き物が、見たこともないような異形でなければ。 「よくこんなに作りましたね」 「苦労したよ、