【小説】水槽の中、あるいは存在証明
「ほら、見てごらん」
私がこの研究所に先生の助手としてやってきたその日。先生は、巨大な水槽を前にしてそう言った。芸術家が自信作を前にするような、満足げな表情だった。くたびれた白衣に、乱れた黒髪。目の下には濃い隈ができているが、先生はやけに元気そうだった。
その部屋の照明はやや暗めに抑えられ、水槽から放たれる柔らかな水の青は鮮やかだ。ここだけ見れば、水族館のようだと思う。水槽の中にいる生き物が、見たこともないような異形でなければ。
「よくこんなに作りましたね」
「苦労したよ、