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樋口一葉

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十三夜

かつて google にあった一葉の傑作「十三夜」 のイラスト。当時の上野広小路の森に挑ぐ満月の…

ゆき丸
3か月前
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うつせみ

東京都心、街道沿いの小道を歩き、そういえば今年は蝉の声を一度も聞かなかったとハッとして、…

ゆき丸
2か月前

美人な一葉さん

明治期には今にもまして写真が修正されていたそうだが、お札の一葉もかなり修正されていると聞…

ゆき丸
2か月前
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庭前の一葉

一葉は日記のなかで、通った歌塾「萩の舎」の師であった中島歌子からの教えを記している。 ..…

ゆき丸
2か月前

最後まで無念不幸だった一葉

ある一葉研究者は、「一葉は死ぬ前に文才が世間に知れたことを自覚して亡くなったという意味で…

ゆき丸
3か月前
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源氏物語崩し、筆に自由をみた早熟早世の一葉のこと

数年前、芥川賞や直木賞受賞者の低年齢化が議論されていた。これは小児性を売り物にしたアイド…

ゆき丸
3か月前
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絶筆「裏紫」を想像する

一葉の絶筆「裏紫」は、未完のまま数ページで途絶えている。「上」とあるからには「上中下」あるいは「上下」の構成を取ろうとしたのだと推察される。お人好しの旦那に嘘をつき、浮気相手の男のもとへ冷ややかな薄笑いを浮かべながら駆けていく女の話で始まる。(僭越ながら)きっと一葉のこと、破滅に向かう女の抒情を書こうとしていたのではないかとも勝手に想像してしまうが、これは明治初中期の一般社会そのものでもあった。 眉山、風葉、鏡花、花袋、柳浪など自然主義文学をはじめ、当時は世を反映した悲惨小

明治に沈んだある小説家

半井桃水は、東京朝日新聞の記者としてその紙面に通俗小説を連載したいわゆる新聞小説家だった…

ゆき丸
3か月前
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「わかれ道」

哀婉影さす男女の別れの物語、一葉の「わかれ道」、しかしその哀切はただの悲しさに終わらない…

ゆき丸
4か月前

一葉作品が残していくもの

一葉の死後に寄せた追想のなかで、幸田文は「一葉作品には、なんというか季節の感じを皮膚に覚…

ゆき丸
4か月前
2

ちひろ描く儚い横顔

画としての一葉といえば鏑木清方のイメージだったが、これはいわさきちひろ描く「たけくらべ」…

ゆき丸
10か月前
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「一葉のポルトレ」を読んで

生前親交のあった文学者、友人や家族らが捉えた一葉についてのポートレイト集「一葉のポルトレ…

ゆき丸
10か月前
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吉原見返り柳を振り返らず

廻れば大門の見返り柳いと長けれど、お歯ぐろ溝に燈火うつる三階の騒ぎも手に取るごとく 「た…

ゆき丸
1年前

別れの「暁月夜」

その別れは春の暁の月だけが見ていた。 華族名家のうら若き令嬢、その容顔美麗に惹かれた青年文士は学業も何も捨て、名を変えては一転庭男と身をなりすまし、令嬢の邸に忍び込む。一方は高嶺の花、これは麓の塵、しかし嵐は平等に吹くというもの。一葉女史はそうして恋の行方を物語る。 令嬢を慕ういとけなき弟君を仲介して、男は艶書恋文を送り続けるが、しかし一向に返事はない。身分違わば恋の襷も掛け違うのか、優婉麗筆な一葉の筆は連綿体の草書のように男の恋を書き走る。 ある夜、音沙汰なきまま令嬢