絶筆「裏紫」を想像する
一葉の絶筆「裏紫」は、未完のまま数ページで途絶えている。「上」とあるからには「上中下」あるいは「上下」の構成を取ろうとしたのだと推察される。お人好しの旦那に嘘をつき、浮気相手の男のもとへ冷ややかな薄笑いを浮かべながら駆けていく女の話で始まる。(僭越ながら)きっと一葉のこと、破滅に向かう女の抒情を書こうとしていたのではないかとも勝手に想像してしまうが、これは明治初中期の一般社会そのものでもあった。
眉山、風葉、鏡花、花袋、柳浪など自然主義文学をはじめ、当時は世を反映した悲惨小