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澄みきった日に 自分のアタマで考える

第27週 10月6日〜10月12日の記憶。 それを探る試みです。 
一年間のルドルフ・シュタイナー超訳に挑戦中です。

今週は、「もう、自分のアタマで考えられるようになってきた?」と、いきなり先生のハードルが高くなってきました…。知識や経験が積み重なってくると人に頼らず、自分の意志だけで進んで行ける!という気分にもなってきますよね。でも、あせらず、ここまでの道のりと、その先の地図をみなおすことも必要なのでしょうね。

では、読み解いてまいります。

  

 

A‘. SIEBENUNDZWANZIGSTE WOCHE (6. OCT. – 12. OCT. [1912])

27.
In meines Wesens Tiefen dringen
Erregt ein ahnungsvolles Sehnen
Das ich mich selbstbetrachtend finde
Als Sommersonnengabe die als Keim
In Herbstesstimmung wärmend lebt
Als meiner Seele Kräftetrieb.

Anthroposophischer Seelenkalender, Rudolf Steiners,1912



  わたしの深みへと降りてゆく
  予感と宿望に導かれて
  自分自身の思索がみえてくる
  夏の日に与えられたものをふりかえり
  澄みきった秋の調べの中で
  温かな心の引力として...。


 


予感と宿望




秋の頃、日が短くなってゆきます。
日が短くなることは、夜が長くなり、静かなる時を楽しむのには、このうえない季節へとうつろってきているのですね。

さて、ここ数週間、夏と冬の対比について考えさせられてきました。一年単位リズムと人生の長いリズムをシンクロしてとらえる感覚。さらに大いなるものの壮大な盛衰のリズムを感じなければいけないのだろうなぁ、と漠々と感じていただいているかと思います。

今回は、夏的な“予感”と冬的な“宿望”の関係を考察してゆきます。

わたしに出会えるかもしれないという予感と
宿望に導かれ本性の深みへと降りてゆく

何かを始める時に、この考え方は、非常に大切ではないでしょうか?気負いなくに愉快、心地良さ、刺激などを求めて始めたことから、あなたの本性に近づき、これこそが自分の表現、自分の生き方かもしれない!という直感的な出来事は人生の中で何度か必然的に訪れることかもしれませんね。

作品をつくりたいという衝動はまさにこのようなものですし、入試や就活などの人生の節目には必ず強制的に考えさせられます、恋愛のような偶発的な出合いがしらの出来事などもそうかもしれません。

でも、予感のままに行動をしていると、何故あの時はあれほど夢中になれたのだろう?とか、あの時のあの盛上がりは何だったのか?など熱が冷めた時に、燃え尽き症候群のようになってしまうことってありますよね?

それらは、暑い夏的な出来事なのだと、その先に何か素晴らしいものが隠れているかもしれないという予感から始まり。そして、冬に向けて秋頃には、あなたの本質が求めている宿望へと意識を広げてゆく必要があるのです。

ふと、しんとした冷静さを取り戻した時に、どのような理想や憧れ、期待などが隠されていたのか、どのようなの宿望に導かれていたのか?を探索し、心の引力として深めてゆかなければならないのです。


自分のアタマで考える



シュタイナーさんは、ここまでの“こよみ”の実践を通して、
もう、あなたは大いなる者の視点から考えられるようになっているハズ。
と、おっしゃられているように感じます…。

でも
ちょっと、まだ、わたしには無理そうなんですけど…
どのようにしたら、良いでしょうか?

そんなの知らん、自分のアタマで考えろ!



そのようなやりとりを想像してしまいました。ここで、与えられたものをふりかえり、あなたの思索や思惟、思議などいわゆる“自分のアタマで考える”ことのヒントを書いてゆきます。


なぜ、その必要があるのかというと、行動するのは“あなた”だからです。みんながとか、社会がとか、わたし達とかではなく、常に行動するのは一人称のあなたです。

情報を得て、仮説をたて、行動することで、これらは別々ではなく一連になってはじめて、あなたという存在意義がでてきますよね。あなた自身の行動指針をあなたの言葉で考え、表現し、活動してゆくと新しい手帳を買ったときのようなワクワク感をおぼえませんか?

他人の受け売りのどこが悪いという話ではなく、本を読んだり講演を聞いたりして新しい情報を集めることは、新しい世界に触れる機会となり、考えや行動の幅を広げられます。また、知識人の言説を糧にすれば、自分の糧として活用できるようになります。

でも、学んだことの意味を理解しないまま、そのまま表面的になぞっただけになっていないか?とか。それは、あなたの心が本質から信じられることか?とか。次から次に効率良く学ぶことに意味はあるのか?など、注意する必要があると感じられますよね。

大いなる者や誰かのチカラに依存するのではなく
よく学び、あなた自身のチカラで翔んでゆけることが必要なのです。


人間には、グライダー能力と飛行機能力とがある。受動的に知識を得るのが前者、自分でものごとを発明、発見するのが後者である。両者はひとりの人間の中に同居している。グライダー能力をまったく欠いては、基本的知識すら習得できない。何も知らないで、独力で飛ぼうとすれば、どんな事故になるかわからない。
 しかし、現実には、グライダー能力が圧倒的で、飛行機能力はまるでなし、という“優秀な”人間がたくさんいることもたしかで、しかも、そういう人も“翔べる”という評価を受けているのである。

『思考の整理学』外山滋比古 著


いわれたことに従って取り組む従順な人間のほうが、社会の中では都合がいいかもしれません。しかし、飛べたとしても、決して自力で地上から離れられないグライダー能力では、身につけて何の意味があるのでしょう。

本質的に人間は、自らの飛行機能力を身につけていくことが不可欠だと外山さんはいいます。自分のアタマで考え、向かうべきところを決めて、自律飛行を行うのが、本来の人間らしい姿なのです。

自分のアタマで考えろといわれても、そんなことできない。
そんな教育受けていないし、能力なんて持っていない…

そう思ってしまった人は、安心してください。この能力は、みんな必ず持っているものなのです。その力を発揮できる人と、発揮できない人がいるだけなのです。

では、できる人とできない人では、何が違うのでしょうか? 答えは簡単です。何故?という“問い”を持っていることと、考えられるレイヤーまで、ものごとを分解、分析、整理できているかどうかです。

すべてをいきなり、あなたのアタマから引っ張りだせると思ってはいけません。無から有を生ずるような思考などめったに起こるわけではなく、すでに認識しているものを結びつけることによって、行動に移れるのです。

そのためには、自分の言葉で、分解、分析、整理をしておいて、問いに対して、“おそらく、こういうことかもしれない”という、あなたなり仮説を、観察眼を持った洞察によって結びつけてゆくのです。

たとえば、これからのあなたの仕事について、個人的な想いだけではなく、時代的に考えてみるのはどうでしょう。

東日本大震災からコロナ禍まで、社会的にも大きな流れの中で、なかったことにしたい悲しい出来事も多かったですよね。
そこからも、あなた自身、個人的に与えられた、夏の日の贈りもののようなヒントがあったのではないでしょうか?
直観的な予感を多く与えられてきたのではないでしょうか?
自ら望んだものというより、知らぬ間に大切なものとして蓄積されてきているものがあるのはないでしょうか?

政治家や評論家、占い師を信じるのもいいですが、
自分のアタマで宿望を考えてみるのもいいかもしれませんよ。




2024年10月 チカラシバとウラナミシジミ



忘却




さて、今週の内容を掘り下げるために、『思考の整理学』を復習していると、“忘れる”ことの重要さについても書かれていました。小さい頃から、テストでも、何でも、忘れるなんてもってのほか。しっかりと覚えることを強要されてきたのですが…。いったい忘れたほうがいいとは、どういうことなのでしょうか?

より速く情報を入れて、不要なものはどんどん忘れる。その上で必要なものを残す。そうすることで新しい発想が生まれる。知的メタボリックにならないためには何より”忘れる”こと。不要なものが一掃され頭の中が整理されると、新しい有用な情報が入りやすい。逆に、もともとあった情報までも引き出され、これが新しい発見に繋がる。

『思考の整理学』外山滋比古 著


忘れる時は、あなたの価値観にもとづいて忘れてください!と(なかなか難しそうですね…先生!)、おもしろいと感じたものは些細なことでも忘れられなくなります。価値観の軸が築かれていないと、必要なものを忘れて、どうでもいいことばかりを覚えていることになってしまいますよね。大切なことや興味深いことを敏感に感じられる触覚をいかにアップデートさせるかなのです。

そして価値観は、人それぞれ千差万別あるわけで、あなたがどのような価値観を持っているのかが問われるのですね。




このシュタイナーさんの“こよみ”が、そのことを助ける地図かもしれない、という予感が当たっているかどうか?



それは、あなた次第です。



といってしまうと元も子もないわけですが、先人達の冒険の末に記された地図は、時代を越えて道筋を示してくれている。
と感じてもらえると嬉しいです。 



そして、大いなる者からの心の引力が
あなたに届くよう…。






シュタイナーさん
ありがとう

では、また







Yuki KATANO(ユキ・カタノ)
2024/10/06



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