毎月一度。この指とまれ方式で、少人数の探求読書会を始めた経緯:語り継いでいきたい大切な叡智を、共感しあえる人とわかちあっていくために
私は読書が好きです。小説、絵本、漫画、専門書など、気になったものがあれば何でも手を出す雑食であり、本の虫と言えるかもしれません。
そして私は、生業として対話の場づくりやファシリテーションといった方法を用いて、人と人の集まる場を目的の実現に向けて協力しあっていけるようにするお手伝いをしています。
私自身は現在、『世代を超えて豊かに育っていく関係性、組織・社会の仕組みづくり』というものをめざして日々、これらの知見を個人、組織、コミュニティで紹介したり、実践を続けているのですが、その学びと探求の過程でさまざまな流派の知識体系、技術、哲学、事例に触れることとなりました。
そしてその中で、何年も語り継いでいきたい大切な知恵が詰まった本を、興味関心の合う仲間たちと時間をかけて丁寧に読み込み、対話することの重要性を感じるようになりました。
そんな経緯でこれまで、じっくり読み解く探求読書会といった仕立てで、少人数で実験的に読書会を開催してきました。
今回は、なぜ、そのような読書会を企画するに至ったのかについての背景や願いについて、改めてまとめていこうと思います。
これまでの学びと探求のあり方について
実践者・本の著者との直接の交流
私はこれまで、対話の場づくり、ファシリテーション、ティール組織(Reinventing Organizations)、ソース原理(Source Principle)といったテーマについて海外の実践者との交流や国内の現場での実践を通じて取り組んできました。
これら人間関係やマネジメント、集団でのコミュニケーションについて学ぶとき、多くの人はさまざまな動機から、それらのテーマについてまとめられた本を手に取ります。
私自身もまた、上記のようなテーマについて学ぶため、幼少期から現在に至るまで、何冊、何十冊の本を通じて、さまざまな知識・知見・智慧を得てきました。
そして、ここ十年ほどはこれらの知見を探求するために本で読むだけではなく、その本の著者に直接会い、交流することで探求を深めるといった機会も得てくることができました。
しかし、海外の実践者との直接の交流を持つことは、オンラインでのコミュニケーションが広がりつつある現在でも稀な経験です。
一人で読む読書だけでも、稀な経験である海外の実践者・本の著者との交流だけでも、私がめざしたい『語り継いでいきたい大切な知恵を、共感しあえる多くの人と分かち合う』ことにはうまく繋がりません。
クライアントワークとしての研修やプログラムの実施だけではなく、より気軽な形で本からの学びと交流・対話ができないものか?と考え続けてきました。
本からの学びや探求を、より開かれた形へ!
そして、最近ではアクティブ・ブック・ダイアローグ®︎(ABD)という読書会ワークショップ手法に出会い、実践を重ねることで仲間たちと対話を深めながら探求する場もつくってきました。
このアクティブ・ブック・ダイアローグ®︎(ABD)はオンラインでも実施することが可能であり、知識の一方的な伝達ではなく、ファシリテーターも含め参加者全員が双方向のコミュニケーションと疑問の投げかけ、対話を通じて学びを深め、探求をしていくことができるという画期的なアプローチでした。
私にとっては、読書体験のまったく違う可能性を感じることができた出会いでした。
しかし、どのような方法でも一長一短はあるものです。一般的な読書会とABDの比較については、友人による以下のような考察もあります。
そして私自身は、これまでの経験も踏まえ、よりじっくり対話を中心とする読書会の実施を思いついたのでした。
読書会企画の際に考えたこと
少人数でじっくり1冊のテーマについて語り合う場をつくろう
少人数で、じっくり対話することに重点を置いた読書会の開催は、SNSで呼びかけた以下のような投稿から始まりました。
これらの本は私の人生にとって大きく影響を与えた本であり、これらの本の叡智は読書会の参加、著者との対話、組織開発の現場での実践、日々の暮らしでの活用など、私の人生のさまざまな場面で実践・探求が行われてきました。
そして、これまで読書記録やABD読書会参加時の記録としても、これらの本を扱った際の学びはまとめられています。
しかし、SNSでの呼びかけた通り、これらの書籍のテーマについて理解を深め、私たちの日々の生活で体現していくには、継続的な学びと実践、そして同じテーマに取り組む友人や仲間との対話が不可欠であると感じていました。
とても、一読しただけではその本質を理解し、実践するというのが難しい、訓練や成熟を必要とするテーマであると感じられたのです。
そのため、まずは少人数から始まる形でじっくり語り合える場を開くことを決め、呼びかけを行いました。
本からの学びを、日々の実践につなげるための仕組みをつくろう
先述の通り、初めに挙げた4冊の書籍にまとめられた知見は、日々の実践の中で体得されえるものです。
そのためただ読書会を開きたいのではなく、今回の場での学びが、参加されたみなさんそれぞれの現場や暮らしのなかで活かされうるような、そのような仕組みづくりも行っていきたいと考えていました。
もちろん、読書会参加の動機はみなさんそれぞれのものであり、一人ひとりの関わり方や参加の仕方はご本人に委ねられるものです。
ただ、そんな中でも初めのきっかけをつくった主催者としては、今回選書した本の読書会での学びが、みなさんそれぞれの生活の中で活かされ、より良い人間関係の構築や人生の旅路の歩みに貢献したい、という願いがありました。
こういった点から、今回の読書会は特別なプログラムのようなものは極力削ぎ落とし、シンプルな構成と互いの話を聴き合うことに重点を置いたものにしたいと考えていました。
ゆるくしなやかな、種が芽吹いて育っていくような関係性を築いていこう
もうひとつ、こうなったら良いなと感じていた点としては、今回の読書会が参加される方にとっての一つの節目のように機能すれば良いな、というものでした。
今回選書している(そしておそらくこれから選書するであろう別の)書籍は、一朝一夕の学びで実践したり、理解したり、体得できるものではありません。
長ければ何年も時間がかかる場合もあるかもしれません。
それでも、何かお互いのタイミングや興味関心が重なり、場をご一緒できるのであれば、その瞬間を大事にすることと、その後の時間がお互いにとって豊かなものになれば良いな、という願いがありました。
また、一度読書会に参加したらそれっきり、ではなく、一度結ばれたご縁を大切にしつつ、折に触れて同じ本での読書会で再会し、お互いの変化を確認し合えるような、そんな節目のような機会とできれば良いな……そんな風に考えていました。
主催する私個人としては、今回選書している(そしておそらくこれから選書するであろう別の)書籍は、次の世代に伝えたい大切な考え方や知見として、自分の子どもや孫世代まで伝わっていくような、そんな気の長い関わり方をできればと考えています。
そのため、今回の読書会をきっかけに豊かな関係性の種を蒔き、育てていくイメージを、次世代の森を育てていくようなビジョンとして妄想しています。
もちろん、一度結ばれたご縁によって今回の読書会以外の場でも何かご一緒するきっかけが生まれることもあるかもしれません。
そのような未来につながる種まきの場にもなってくれればな、というのが理想です。
読書会の運営方法
読書会の実施については、その時々の私自身の興味関心と、参加者の皆さんのタイミング、流れに完全に依存しています。
私は毎月一度、今、読み進めて深めたい本を4冊選び、定期的に参加したい人を呼びかけます。
そして、応じてくれた方々と日程を調整し、実施します。
極力、プログラム的な要素は削ぎ落としつつ、シンプルに対話を重視した構成を行おう、という方針を意識しつつ運営方法を考え、まず、以下のようなオンライン上のシートをJamboardで準備しました。
読書会を始める前の準備として、初めの一言を1人ずつ話した後、上記のピンク、オレンジ、黄緑のテーマについて再び1人ずつ話してもらいます。
その後、水色の付箋の書き出しの時間を設けた後は、その水色の付箋について対話・探求を進めていくことにしました。
読書会の最後は、沈黙の時間を設けた後、1人ずつ今回の感想を話して終了という構成です。
開催時間は90分〜120分。60分では短すぎるというところと、150分以上は長すぎる、という間を狙った時間配分で考えています。
次回以降の開催について
基本的に、呼びかけは私のSNS(Twitter、facebook)で行っています。
ここまでこの記事を読んでいただく中で、もし興味を持っていただけた方がいらっしゃれば、フォローしていただけると幸いです。
一人の読書好きが始めたささやかなチャレンジですが、ご一緒できる方がお一人でも増えてくれることを願いつつ、毎月毎月を丁寧に積み重ねながら、開催していければと思います。