指先に触れるもの 22
言い切り、幸恵はそっと泰之の涙で濡れる頬に触れる。不意のように溢れ出した涙は際限なく頬を伝って泰之の膝を濡らした。僅かに首を傾げ、幸恵が笑みを深くする。
「泣かないでください。私は孝造さんにあの人の最期を教えていただいて、助けられました。そして貴方にもここまで連れてきていただいた。………本当は、生きている間に来たかった。でも、意気地がなくてどうしても一人で来る事ができなかったんです。駄目な妻ですね、私は………」
自責の色を微笑みに混ぜ、幸恵は泰之の頬を伝う涙を指先で掬う。