シェア
弓削保
2015年4月18日 23:53
つい、と窓を滑り落ちた雨の雫に、安形美雪は意識を引かれた。 なんということもない見慣れた窓は、彼女の好きな柔らかい水色のカーテンが両脇に束ねられている。今、閉め切った窓を挟んで外界と彼女のいる部屋を仕切っているのはレースのカーテンだけ。シャボン玉のような模様を幾重にも描くそれは、ただ静かにそこにある。「閉めたつもりだったけど………」 不意のように彼女の唇を伝い落ちた言葉は、彼女の視線の先、
2015年4月18日 23:48
照明の絞られた幾分煙たい気配を覗かせたバーのカウンターで、境信彦と春間美月は言葉少なにグラスを傾けていた。 夜中に呼び出しておいてッ! カウンターに着くなり信彦を詰った美月はそれから、ぽつりぽつりと聞きたくもない話を信彦から聞かされていた。 時折信彦のグラスの中で氷が踊り透明な音を響かせる。そのグラスを手に取り信彦は、機嫌のよろしくないらしい美月を視線のみで振り返った。「まさか、あいつが