すいこがくせん

昔、ボート漕ぎ。 超体育会(体育会を超える)と思っているけれど、実は元活字中毒者。 活字で強くなったと思っています。 最近は動画ばかり眺めていたので、いかん、と思い、読書と活字リハビリ中。 「すいこがくせん」は「推古岳仙」と書き、亡くなられた書の先生からいただいた名です。

すいこがくせん

昔、ボート漕ぎ。 超体育会(体育会を超える)と思っているけれど、実は元活字中毒者。 活字で強くなったと思っています。 最近は動画ばかり眺めていたので、いかん、と思い、読書と活字リハビリ中。 「すいこがくせん」は「推古岳仙」と書き、亡くなられた書の先生からいただいた名です。

最近の記事

【読書】『老子』 金谷 治 著 講談社学術文庫 1997年

『老子』をちゃんと読んでみようと思った。漢文は荷が重いので、読み下し文と現代語訳で読む。以前から持っていた本書で読むことにした。 著者が解説で本書について書いている。解説の冒頭は以下のとおり。 『老子』は、『論語』と並ぶ中国の代表的な古典である。孔子の『論語』が『孟子』とともに、儒教のはじまりの姿を伝えるのと同じように、『老子』は『荘子』とともに、老荘とか道家とよばれる一家を形作っている。そして、中国の長い歴史を通じて、孔孟の儒教が表向きの正統的な思想であったのに対して、老

    • 【読書】『意識と本質』 井筒俊彦 著 岩波文庫 1991年

      井筒俊彦先生(なぜ先生をつけるかは『意味の深み』に書いた)の本書は何度か読んだけど、今回やっと全貌が分かってきた。20年ずっと研究していたわけではなく、先日先生の著書である『意味の深み』を読み、若松英輔『井筒俊彦 叡智の哲学』(以下『井筒俊彦』)を読んだうえでのことだ。本書の内容について書くことは、僕では力不足なので「後書」からいくつか気になるところを拾って自分の感想を書きたい。 書き出しは次のとおりだ。 「ここ十年ばから、しきりに東洋思想とか東洋哲学とかいうことを考えるよ

      • 【読書】『井筒俊彦 叡智の哲学』 若松英輔 著 慶應義塾大学出版会 2011年

        以前『意味の深みへ』について書いた時に井筒俊彦先生(なぜ先生をつけるかは『意味の深み』に書いた)のことを知るために気になっていた本書を手にとった。 およそ20年前に井筒先生の『意識と本質』という本を読んだがほとんど理解できず、『意味の深みへ』を読み、やっと入り口にとたどり着いた感じがした。僕のマイブームは井筒先生なのである。井筒先生の経歴はWikipediaなどでわかるが、どのような人であったかを知りたかった。自伝があれば読めばいいのだろうけど、他人が書いた評伝の方がわかりや

        • 【読書】『百年の孤独』 G・ガルシア=マルケス 著 鼓直 訳 2024年(文庫版)

          死ぬまでに読めればいい、と思っていた本をフラッと寄った書店で文庫版が平積みされているのをみて、一度は通り過ぎようとしたものの帯に「解説 筒井康隆」と書いてあるのが目に入り、買ってしまった。帯にも「この世が滅びる前にー」と書いてある。 この本が売れるのは、出版社のマーケティングなどのおかげだと(前述の「この世が滅びる前にー」というのは文庫化するとこの世が滅びると言われていたとか)思うのだけど、この本を買った書店の週間ベストセラー順位では2位であったりして、難解な本だと思い込ん

          【読書】『人間ざかりは百五歳』 大西良慶・平櫛田中 著 佼成出版社 2023年

          本書は清水寺貫主であった僧侶の大西良慶が百五歳、彫刻家の平櫛田中が百八歳になった際にそれぞれが思うことを書いている。元々1979年に出版された本の復刻版であり、45年前の本であるが書かれたことについて古いと思うことは見当たらない。 当時百五歳となると明治時代生まれであり、いわゆる明治、大正、昭和の三代に生きた、と言われる人たちである。ふと、我が身を考えると昭和、平静、令和と三代を生きていることに気づくが、百五歳からすると相当に若輩であり、かつ名を残すようなことはおそらくない

          【読書】『人間ざかりは百五歳』 大西良慶・平櫛田中 著 佼成出版社 2023年

          【読書】『文学講和Ⅳ』 白川静 著 平凡社ライブラリー 2017年

          白川静先生は古代漢字学の第一人者として知られており、「字統」、「字訓」、「字通」として知られる字書三部作をはじめ膨大な著作を残された。 「文学講和」は1999年3月から2004年1月までの間に年4回のペースで計20回行われた講演をまとめたもので、第16回から20回までがまとめられている。Ⅰの第1回から読んでいくと白川先生の漢文、漢字に関する知識と見識に圧倒される。 今回、ここであえてⅣについて書くのは、第20回「漢字の将来」の中で、なぜ東洋学を志すに至ったか、漢字の研究に

          【読書】『文学講和Ⅳ』 白川静 著 平凡社ライブラリー 2017年

          【読書】『史記 本紀』 司馬遷 著 小竹文夫 小竹武夫 訳 筑摩書房 1995年

          史記は解説(礪波 護)にあるとおり、父の司馬談の「その切々たる遺命うけて太子令の職をついだ司馬遷(紀元前135頃-93年頃)は、紀元前一世紀の初頭に『史記』130巻を完成させた」。解説には続いて「本紀」について、「最初におかれた「本紀」は、黄帝をはじめとする五帝から、夏、殷、周の三代をへて、当時の漢の武帝にいたるまでの帝王の記録で、主権者の興亡交代の跡を年代順に記している王朝の編年史」である、と書かれている。 史記は記録であるので、「五帝本紀第一」から始まり、どの帝が何々を

          【読書】『史記 本紀』 司馬遷 著 小竹文夫 小竹武夫 訳 筑摩書房 1995年

          【読書】『中国人のトポス』洞窟・風水・壺中天 三浦國雄 著 平凡社選書 1988年

          松岡正剛さんが亡くなられて、ずっとWeb上で続いてきた『千夜千冊』が1850夜で一旦途切れた。そこで最後に紹介されていた本が本書で、タイトルにも惹かれるところがあり、早速読んだ。 これがまた、中国古典が11のテーマに合わせて縦横無尽に練り込まれている。『易経』『荘子』『老子』などの古典中の古典から現代までに至る書籍がどんどん出てくる。本当は一つ一つ調べながら読むべきなんだろうけど、分からないところは分からないまま前後の文脈で読んでいく。 途中から参考文献、注が入ってくる。

          【読書】『中国人のトポス』洞窟・風水・壺中天 三浦國雄 著 平凡社選書 1988年

          【読書】『蜜蜂と遠雷』 恩田陸 著 幻冬舎文庫 2018年

          ツルツルと入っていくような食感の上巻からフルコースのフランス料理の下巻の途中で、気が付いた。 この小説自体が一つの音楽、それも第一楽章、第二楽章といった構成になるクラシックの協奏曲、交響曲なのだ。 最近、読書会に参加して、僕の年齢の半分以下の若者が、この本を薦めていた。 読書会は毎回テーマがあり、今回は「戦い」がテーマだった。 この小説はピアノのコンクールが内容であり、とてもいい小説だとは知っていたけど「戦い」にまでなるのか、と思い、今回読んでみることにした。 感想。「戦

          【読書】『蜜蜂と遠雷』 恩田陸 著 幻冬舎文庫 2018年

          【R.I.P】松岡正剛さんを偲んで

          松岡正剛さんが亡くなられた。 松岡さんが携わった「編集工学」に関する本(たぶん「知の編集工学」だと思う)を読んだ際には、世の中すべてのものを編集し尽くしてしまうぞ、という迫力があった。 その昔、イシス編集学校というところ(松岡さんの編集術を学ぶ学校)の無料学校説明会に行った。おそらく、前述の本を読んで感化されやすい僕はフラフラとでかけて行ったはずだ。 師範代と呼ばれる方が学校のことを説明してくれた(はずだ)。何かのことで皆の前で話をするのか、自分の考えを言うことがあって、何

          【R.I.P】松岡正剛さんを偲んで

          【読書】『藤森照信の現代建築考』 藤森照信 文 下村純一 撮影 鹿島出版会 2023年

          週刊朝日に連載されていた藤森照信の「建築探偵考」は「近代建築」ということばを日本語に持ち込んだそうだ。連載開始は1987年。僕が大学を卒業する前年のことだ。そのころ大学の体育会で年間三百日合宿を敢行していた自分にとって、たまに帰る実家に父親の買ってきた週刊朝日で「現代建築考」を読むのが楽しみだったと覚えている。  藤森は建築史家であり(約四十年前、そういう学問があることすら知らなかった)、現在は四十五才から始めた設計でも大きな評価を受けている。藤森が、「日本のモダニズムに関

          【読書】『藤森照信の現代建築考』 藤森照信 文 下村純一 撮影 鹿島出版会 2023年

          【読書】『意味の深みへ』 井筒俊彦 著 岩波文庫 2019年

          ずいぶん前、というより二十年以上前に井筒俊彦先生(なぜ先生なのかは最後で)「意識の本質」を読んだ。当時構造主義ってなんだろう、というところからスタートしてソシュールの言語学でこけて、「意識の本質」にたどり着いた。何度か読んで思ったことは。構造主義や言語学のことではなく、東洋思想(哲学)の諸論を縦横無尽に、かつ、押し寄せる波のようにこれでもか、これでもか、と迫り来る迫力であった。  今回読んだ「意味の深み」は本書の「あとがき」で先生が書かれている通り、「意識の本質」と同じテー

          【読書】『意味の深みへ』 井筒俊彦 著 岩波文庫 2019年

          【読書】『掌の中の無限』 マチウ・リカール&チン・スアン・トゥアン 著 菊池昌実 訳 新評論 2003年

          この本は副題が「チベット仏教と現代科学が出会う時」となっていて、パストゥール研究所で分子生物学の国家博士号を取ったあと、チベット仏教の僧侶となったマチウ・リカールとヴェトナムで教育を受けた後フランス留学を希望したが、当時の政治情勢のためアメリカに渡り天体物理学を学び、ヴァージニア大学で天体物理学の教授であるチン・スアン・トゥアンとの対話である。  現代物理学とチベット仏教というより、科学と仏教の対話とした方がいい(本書P30に「なぜ科学と仏教の対話か」)。  結論から書くと

          【読書】『掌の中の無限』 マチウ・リカール&チン・スアン・トゥアン 著 菊池昌実 訳 新評論 2003年

          【読書】『失踪願望。コロナふらふら格闘編』『続 失踪願望。さらば友よ編』 椎名 誠 著 集英社 2022年 2024年

          椎名誠は元気なんだろうか。 何十年ぶりかで椎名誠の本を読む気になった。 おそらく大学生の時に椎名誠の本を結構読んだと思う。 いっとき、僕は「活字中毒者」であると自認していたが、これは彼の椎名誠の本のそのままだし、何より、いま、これを書いている文体も大きく影響を受けていると言っていい。 大学を卒業してからは、小難しい本を読むようになって、読まなくなって長い月日がたつがが、冒頭のことが気になって最新作を読むことにした。 まず驚いたのは椎名誠が今年80歳だということ。 20年以

          【読書】『失踪願望。コロナふらふら格闘編』『続 失踪願望。さらば友よ編』 椎名 誠 著 集英社 2022年 2024年

          【読書】『悲しき熱帯』 レヴィ=ストロース著 川田順三訳 中央公論社 1977年

          レヴィ=ストロースの著作は一度は読んでおかねばならない、と思いつつ30年以上経過していた。これまで読んできた高野秀行の本にも、石田ゆうすけの本にも名前が出ていた。 30年以上前にロウイングという競技に没頭していた際に、「構造主義」という言葉に触れた。正しい「構造主義」であったとは思えないが、ロウイングという競技に限らず、様々な競技について整理したことがあり、これを構造化と思っていた。レヴィ=ストロースが構造主義の祖であることは知っていたが、著作を読んだことはなかった。 レ

          【読書】『悲しき熱帯』 レヴィ=ストロース著 川田順三訳 中央公論社 1977年

          【読書】『行かずに死ねるか!』『いちばん危険なトイレといちばんの星空』『洗面器でヤギごはん』 石田ゆうすけ著

          一気に読んだ3冊の副題は「世界9万5000km自転車ひとり旅」とある。 副題のとおり、著者が7年半をかけて世界一周の旅をした軌跡と、その中のいいも悪いも合わせた一番をあげ、そして食べたものついて書いたものだ。 著者は帰国後、日本全国のラーメン店巡りをしたりして本にしている。 以前から読んでみたかった本ではあった。 先日、自転車の雑誌を立ち読みでながめていたら、著者が連載している文に気づいた。 そのまま斜め読みをした後に、彼の本を読んでみたくなった。 著者の正直な人柄が出てい

          【読書】『行かずに死ねるか!』『いちばん危険なトイレといちばんの星空』『洗面器でヤギごはん』 石田ゆうすけ著