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【読書】『人間ざかりは百五歳』 大西良慶・平櫛田中 著 佼成出版社 2023年
本書は清水寺貫主であった僧侶の大西良慶が百五歳、彫刻家の平櫛田中が百八歳になった際にそれぞれが思うことを書いている。元々1979年に出版された本の復刻版であり、45年前の本であるが書かれたことについて古いと思うことは見当たらない。
当時百五歳となると明治時代生まれであり、いわゆる明治、大正、昭和の三代に生きた、と言われる人たちである。ふと、我が身を考えると昭和、平静、令和と三代を生きていることに気づくが、百五歳からすると相当に若輩であり、かつ名を残すようなことはおそらくない。
百五歳の二人に共通することは、百五歳でそれぞれの世界で現役であることだ。それぞれ80年以上の一つごとに取り組んできている。今の私の年齢よりはるかに長い時間取り組んでいる。この時間の長さが重さとして表現されるかと思いきや、二人の筆致は軽い。しかも軽やかである。特に大西良慶は清水寺で多くの説法を行なっているので軽やかさが際立っている。
二人ともかなりの苦労をしている。若い頃だけでなく、苦労はかなりの年齢を重ねたところまで続いていたかも知れない。百歳を越えて遠くから振り返るとその苦労も色が違ってみえるのだろう。
こういう生き方をしたい、と思っても生き方を今更何か変えようとすることは難しい。すぐに変えられることは、考え方、ものの見方であると思う。
変えるため、変わるためのきっかけになることが見つかる。
本書は東京都江戸川区にある「読書のすすめ」という書店の清水克衛店長が企画・協力している「ドクスメレーベル」の一冊である。後にある「ドクスメレーベルの発刊に寄せて」の冒頭に「本は心の栄養」と書かれている。本書はまさしく栄養になる一冊。