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【読書】『中国人のトポス』洞窟・風水・壺中天 三浦國雄 著 平凡社選書 1988年

松岡正剛さんが亡くなられて、ずっとWeb上で続いてきた『千夜千冊』が1850夜で一旦途切れた。そこで最後に紹介されていた本が本書で、タイトルにも惹かれるところがあり、早速読んだ。

これがまた、中国古典が11のテーマに合わせて縦横無尽に練り込まれている。『易経』『荘子』『老子』などの古典中の古典から現代までに至る書籍がどんどん出てくる。本当は一つ一つ調べながら読むべきなんだろうけど、分からないところは分からないまま前後の文脈で読んでいく。
途中から参考文献、注が入ってくる。

『千夜千冊』にも書いてあったけど、「瓢箪(ひょうたん、ひさご」に関する本かとおもっていたら、「卒業論文を一般向けに書き直したもの」から始まり、あとがきにも書かれているとおり「関心は専ら、中国人が洞窟・風水・墓・壺・楽園といったものをどう表象したか、に向けられている」。
瓢箪は、中国の古典の中で「壺中天」の話とつながる。瓢箪の中に「一個の宇宙」を呑みこんでおり、古来瓢箪・壺の中に入って、その中の世界で暮らし、外に出てみると何十年も経っている、または一瞬のことであったという話がたくさんある。それは「この内から外へ、極小から極大への反転」である。洞窟も同じ世界を展開する。

この本は仙人の本ともいえる。
仙人は洞窟を求め、内の世界と外の世界とを自由に行き来できる。
僕は亡くなられた書の先生に「すいこがくせん」という名前をもらった。
「推古岳仙」と書く。古きを思い、山にいる仙人」という意味だ。
仙人の本というだけで、理解できなくてもうれしくなってしまう。

この本の中で一番読んでみたかったところは、松岡さんも案内されているけど三浦と建築家の毛綱毅曠さんとの対談だ。毛綱さんの建築のことは『千夜千冊』で初めて知った。
それも風水を活かした建築であるという。
この対談は「いわばカードの出し比べといった趣があり、私はしばしばカードがなくなって窮地に立たされた。」とあとがきにある。
カードの出し合いの勝負が楽しい。

瓢箪、仙人、風水。
どれかにピンときたら、ぜひ手にとってください。


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