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【読書】『蜜蜂と遠雷』 恩田陸 著 幻冬舎文庫 2018年

ツルツルと入っていくような食感の上巻からフルコースのフランス料理の下巻の途中で、気が付いた。
この小説自体が一つの音楽、それも第一楽章、第二楽章といった構成になるクラシックの協奏曲、交響曲なのだ。

最近、読書会に参加して、僕の年齢の半分以下の若者が、この本を薦めていた。
読書会は毎回テーマがあり、今回は「戦い」がテーマだった。
この小説はピアノのコンクールが内容であり、とてもいい小説だとは知っていたけど「戦い」にまでなるのか、と思い、今回読んでみることにした。

感想。「戦い」だった。

そもそもクラシックのコンクールが、どのように運営されているか知らなかったので、舞台裏からコンテスタント(この言葉も初めて知った)の内面に至るまで簡潔に、そして丁寧に書かれている。

冒頭に上巻、下巻と書いたが、単行本だと上下組500ページで読むのが大変だったと聞いていたのであえて文庫版にした。
持ち運んで、例えば電車の中でも読むためだった。
最初はツルツル感じたけど、途中の盛り上がりから読む手が止まらない。
戦いの場面は次から次へと進んで行く。
戦いは常に熱いものだけでなく、陰ながら進んだり、戦いの合間で育まれ友情があったり。

譜面では次第に大きな音にしていくことをクレッシェンド、逆をディクレッシェンドという。明るい響の音階は、長調、暗い響の音階は短調。こういった音楽の約束事が効果的に使われている。
何より、クラシックの名曲を譜面を使わずに表現している。
目がまわるような修飾もなく、伝えている。

この大部の小説をたった二日で読み終えてしまった。
盛り上がり出したら止まれない。
そして、遠雷はどこに。

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