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【読書】『百年の孤独』 G・ガルシア=マルケス 著 鼓直 訳 2024年(文庫版)

死ぬまでに読めればいい、と思っていた本をフラッと寄った書店で文庫版が平積みされているのをみて、一度は通り過ぎようとしたものの帯に「解説 筒井康隆」と書いてあるのが目に入り、買ってしまった。帯にも「この世が滅びる前にー」と書いてある。

この本が売れるのは、出版社のマーケティングなどのおかげだと(前述の「この世が滅びる前にー」というのは文庫化するとこの世が滅びると言われていたとか)思うのだけど、この本を買った書店の週間ベストセラー順位では2位であったりして、難解な本だと思い込んでいる身からすると「本当に買った人は読んでいるの?」など思ったりする。

結局読み始めて文庫600ページを4日ほどで読み切った。難解な本と勝手に思い込んでいただけで、スルスルと読める。同じ名前が出てくるので、たまに目次裏にある家系図で父母兄弟子供子孫を確認し、思い出せない内容があれば前に返って思い出す、という読み方でもこのペースだった。40年前近く前に愛読していた筒井康隆の小説のおかげだろうか。それとも早くあとがきに辿り着きたかったからだろうか。

あとがきは先に読もうか後で読もうか一瞬迷ったけど、冒頭から読み始めてしまったので最後の楽しみにとっておいた。読み終わってあとがきを読むと案の定、「この解説は多くの読書がそうであるように本文を読む前に解説を読むといった人を対象とする、前宣伝に近いものであることをまずお断りしておく。」で始まっていた。
これから読む方はあとがきに目を通された方がいいとは思わない。好みの問題ではあるが、僕は本の水先案内は必要ないと思っている。人生に迷うことは大変だけど、読んでいる際の迷いは苦しんだとしても閉じれば中断するし、読みたくなければそのまま積読の一冊とすればいいのだ。

訳者も筒井康隆も、ラテンアメリカ文学の流行があったという。
僕はおそらく初めてだと思う。
英米の文学を多く読んだわけではないが、スラスラ読めるのは筒井康隆の小説で不条理、虚構に慣れているからだけではないと思う。本書では、愛と孤独について書かれている。親子の愛、兄弟の愛、夫婦の愛、恋愛の愛。一方で親子の孤独、兄弟の孤独、夫婦の孤独、恋愛の孤独。
これらの感じ方が、英米の小説の書き方と違う気がする。日本の小説とも違うと感じる。スペイン語は理解できないが、スペイン語だから違うのではない。これは、ラテンアメリカの感性だと思う。
ストレートな愛と屈折した愛があり、ストレートな孤独と屈折した孤独がある。
おそらく訳者の力量もあり、スペイン語から翻訳した、という以上にラテンアメリカを感じさせてくれるのだと思う。

この本は売れている。
今回は読み切らなくとも積読の一冊にしてもいい。
手元に置いておけば、開くときがくる。
僕はこのタイミングで読んで、とてもいい本だと思ったけど、ちょっと遅かったかな。

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