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漆のこと

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伝統文化の未来を憂う啓蒙家パティシエ Nさんのこと

伝統文化の未来を憂う啓蒙家パティシエ Nさんのこと

題名だけ読むと一体何者だろう…という感じですが、Nさんは佐賀県鳥栖市で洋菓子店を営まれるパティシエです。

地元の文化財が朽ちるのを憂い、私財を投げ打って佐賀市都市景観重要建築物「旧M邸」を買取られました。

古民家をカフェにするという話は珍しいことではないかもしれませんが、Nさんの夢は壮大です。
なるべく創建当時の状態に戻したいという想いがお有りで、建物や当時の職人たち技術者への敬意を感じます。

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地に足をつけ根を張る ‐みんなで育てるウルシ‐

地に足をつけ根を張る ‐みんなで育てるウルシ‐

佐賀県鳥栖市で17名の仲間とウルシの木を育てています。
まだ始まったばかりのチームで色々手探りですが、鳥栖漆会の活動趣旨はとてもシンプルです。

試行錯誤をしながらも、ここは当初から変わらない想いです。

会長の渡邉さんが20年前に植樹した漆の木が30本ほど、鳥栖市の山中に生えていました(今はありません、詳細はこちら→『人を呼ぶ木』)。
漆掻き見学で初めてお会いした日、80歳の渡邉さんが一人でされ

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ウルシ染めに挑戦

ウルシ染めに挑戦

以前、日本産漆のサポート活動をされている「ウルシピクニック」さんのクラウドファンディングに参加した際のウルシ染めキット。
半年も眠らせてしまいましたが…やっとやっと染めました!

木部が黄色い木は「ウルシ(漆)」と「ハゼ(櫨)」と「キハダ(黄檗)」だけなのだそうです。

藍染はかつて「ジャパン・ブルー」と呼ばれたそうですが、こちらは「ジャパン・イエロー」といったところでしょうか。

乾くと少し薄く

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卵殻蒔絵(らんかくまきえ)

卵殻蒔絵(らんかくまきえ)

卵の殻を粉末にして金銀粉同様に蒔絵を描く技術があります。
トップ画像は卵殻粉を漆で塗り固めた状態(左)と、それを木炭で研ぎ出した状態(右)です。

長い工程なので最初のほんの数秒だけ動画にしました。

よく見ると、白い卵殻粉が少しずつ黒漆の下から出てくるのが分かります。
とても時間の掛かる研ぎの作業です。

卵殻は江戸・明治期以降に漆藝材料として用いられるようになったとされる比較的新しい素材です。

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人を呼ぶ木 -伐られたウルシ-

人を呼ぶ木 -伐られたウルシ-

先月、鳥栖漆の木が伐採されました。
記録としてここにひっそり(?)記します。

正確に言うと、
切り株になったもの、上半分が無くなっているもの、無傷が3本(うち2本は日陰で細身)です。

様々な事情で伐採されるかもしれない話は聞いていましたが、突然のことで呆然としました。
2月23日、数名で分根の準備に行き、木が伐られていることを知りました。

3月7日の分根には20名弱のお申込みを頂いており、そ

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思い出のお椀

思い出のお椀

お椀五客の塗替えです。
乾燥で内側がひび割れ塗りが浮き上がっていました。口縁部は木地から割れています。

亡きご両親の金婚式の引出物だそうで、思い出の品なのでいつか塗替えをと思いながら、長年しまわれていたそうです。

桐箱に秋田の「川連漆器」の文字がありました。

漆は目的の色を作ることがとても難しい為、修繕の際に同じ色を再現するのに時間を要します。

「共漆(ともうるし)」と言って、制作者は制作

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修繕の気付き -彫漆香炉台の話-

修繕の気付き -彫漆香炉台の話-

大陸調の香炉台で、四方には緻密な天人と龍があしらわれています。

最初は彫漆(堆朱や堆黒などの様に漆を塗り重ねた層を削る技法)かなと思っていましたが、よく見ると彫漆の部分と「木彫に漆を塗った部分」がありました。

部分的に金箔が見え隠れしており、寺院特有の油煙汚れではないかと伺っていましたが、こちらは理由は定かではありませんが、汚れではなく箔の上から「意図的に漆が塗られた」ものでした。

お直しを

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建国記念日によせて -義務教育で教わらない日本の伝統文化-

建国記念日によせて -義務教育で教わらない日本の伝統文化-

「良いものじゃないんだけど思い入れがあるし、漆で綺麗になりますか?」

とのことで、尺八奏者の方から1尺3寸管をお預かりしていました。

トップ画像は
漆塗り前(下)、漆塗り後(上)です。

濃いめの朱を下塗りし、溜塗り仕上げにしました。

益々良い音がなることでしょう!(笑)

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建国記念日が何の日なのか、疑問を抱いたのは大人

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