1を聞いて10を知る人の頭の中とは?アイデアを生む頭の使い方
「Aが◯◯ということは、Bは▢▢になりますね。」
こういう話し方をする人と出会うと、気持ちよく会話が流れて行きます。一つの情報に他の情報を関連付けながら、話が展開されるので、スムーズかつ広がりを持って議論を膨らませる事ができます。
ただ、全員ができるわけではありません。できる人とそうでない人はどこに違いがあるのでしょうか?
豊かなアイデアを持ちながら、クリエイティブに話をする技術について考えてみます。
脳のメカニズム「アナロジー」の活用
ある経験をした時、過去の異なる経験から類推して考える事があります。「それはつまり、こうなるのではないか?」と過去の経験をベースに考えるケース。いわゆる「仮説を立てる」ということ。
人は学習する際、脳の中では真っ白なホワイトボードに知識を書き込んでいくのではなく、既に書き込んであるホワイトボードに情報を追加していくイメージで知識を上書きしていきます。
こうした、既に知っている知識を積極的に利用することを「アナロジー」といいます。言い換えると「類推」です。これができる人は、複数の情報を組み合わせて理解を深める事ができます。
ビジネスにおいて、重要なスキルに「ロジカルシンキング」がありますが、この垂直思考のロジカルシンキングに、対を成す考え方として最近注目されているのが水平思考の「ラテラルシンキング」。これは正に「アナロジー」の頭の使い方です。
アナロジーとは「これまでの情報や経験から得た学びを法則化し、異なる分野に応用する思考法」とも言えます。ここの「法則化」がポイントです。法則化するにはある現象を見た時に、それが起こっているメカニズムを構造的に理解しなければなりません。
例えば、F1のピットインをイメージしてみてください。ほんの数秒でタイヤ交換と給油を神がかったスピードで処理します。彼らはコンマ数秒の世界で生きています。失敗は許されないため、交換作業がもしうまくいかなかった時の為に予備の工具を全員がすぐに使えるように準備していると聞きます。
このF1のピットインのケースで法則化できる要素としては「限られた時間」という差し迫った環境で「精度高く」動くために「必要な道具を準備する」ということです。ここにアナロジーを使うと、例えば医療現場に応用が可能です。手術という「限られた時間」の中で、医療ミスがないように医者が「精度高く」動くために医療器具を「必要な時にすぐに使える」ように配置する。構造をトレースすることで、ピットインと手術室は「同様の環境」と類推できます。F1の気づきを手術室へ応用することで、医療器具の配置の仕方、渡し方のアイデアを膨らませることができます。
このように、「構造化」し、鍵を握る要素を「法則化」して抜き出せば、他のカテゴリーに移植した時に、新たなアイデアに生まれ変わります。思考法としてアナロジーはとても優れた技法です。
冒頭のような言葉が口から出てくる人はこのアナロジーが得意な人です。情報を繋げるチカラがあります。このようなチカラはどうすれば身につくのでしょうか。
「アイデアのつくり方」から考えてみる
アイデアに日々悩まされている人は多いです。どんな仕事でも、大なり小なり新しいアイデアは求められます。「アイデアはセンスだ」という人もいますが、私は「スキル」だと思っています。つまり、出し方を身に付ければ誰でも生み出せるものだということ。
アイデアとはゼロから1を生む事だと理解している人もいますが、それは間違いです。それはアイデアの作り方としてバイブルともいうべき一冊『アイデアのつくり方(ジェームス W.ヤング著)』が教えてくれています。
1940年に初版が発売されて、今もなお読まれ続けている原理原則を教えてくれる偉大な本です。買って手に持つと誰もが同じ感想を持つでしょう。「何これ?薄ッ!」と…。でも、この本侮れません。一生役立つ気づきを得る事ができます。アイデアと向き合うお仕事をされている方は1度は読んでおいて損はないと思います。
この本が語るアイデアの本質はこれです。
アイディアとは既存の要素の新しい組み合わせ。
言われると「あたりまえでしょ」と思いますが、このシンプルな原則を忘れがちです。つまり、アイデアは足し算で生まれるものなので、「2つ以上の足される素材を持っている」ことが前提になります。クリエイティブな発想とは、無の状態から神がかったアイデアから天から降りてくるイメージをしがちですが、「A + B = X」というシンプルな構造なのです。
そして、この本のもう少し深いところを説明すると、「一般的知識」と「特殊知識」を組み合わせることでアイディアは生まれると説きます。特殊知識とはその業界やカテゴリーの専門的な情報。一般的知識とはつまり、専門的な情報からかけ離れた知識、言い換えれば「関係の無い情報」です。これらを融合した時に、アイデアが生まれます。
関連づけるには「素材」がいる
「新しい組み合わせ」がアイデアを生む源泉であることが分かったところで、では必要なものは何か。それは「組み合わせる素材」です。この素材を持ち合わせているかどうかにかかっていると言えます。
『アイデアのつくり方』に登場するアイデアを出すステップはこちら。
①情報収集→②解釈→③組み合わせ→④生まれる→⑤適用
見ての通り、初めのステップは「①情報収集」なのです。これは正に料理で言うところの「食材集め」です。アイデアを出したいテーマに対する専門的な「特殊知識」を集めます。例えば「日本料理」というテーマでアイデア出す場合、和食のルーツ、日本の魅力、職人の技術、和食材などの特殊知識をインプットします。次に、それらとは関係のない「一般的知識」に触れます。若者が集まる街で人気のスイーツや台湾発のCafeなど、日本料理とは離れた視点でインプットします。これらを融合することで「なめらか食感の冷たいスイーツ」✖「日本の職人の技術」=「抹茶アイスの天ぷら」という異質なアイデアが生まれたりします。
アイデアを出したり、クリエイティブに話を展開するには、そもそも頭の中に2種類の素材を持ち合わせていることが必要なのです。
まとめ
情報を組み合わせながらクリエイティブに話をするためには、持ち合わせている情報に新しい情報とつなげ、「類推」して話を構築していく必要があります。類推=アナロジーは情報を構造的に理解し、その中から「法則」を抜き出す視点が必要です。
そのためにも「要するに・・・」「それはつまり・・・」といった言葉を常日頃から使うことで、情報をシンプルに要約する力がつきます。
そして、アイデアとは「既存の要素の新しい組み合わせ」です。「特殊知識」に「一般的知識」を組み合わせる必要があります。これらの知識を常に拾えるように意識し、インプットのストックを増やしましょう。
アイデアマンと言われる人や、話が面白い人は、インプットのストックの準備ができている人です。
「特殊」と「一般」と書いた二つのボックスを頭の中に置いて、日々見聞きする情報をそのボックスに入れて行きましょう。そしてアイデアが必要な時に、右手と左手でそのボックスから情報を掴み出し、強制結合する。そんなイメージで考えると、アイデアを考える作業はとても楽しい時間になります。
アイデアはセンスではなくスキルで生み出す。
そう信じて、ポジティブにアイデアと向き合い、クリエイティブな毎日を送れたらいいですね。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。